第四十五話 対峙
魔獣との戦闘が終わり、次のフロアへと進んでいく六真にと穂野江。
四階につくとそこには西洋風のフードを目元まで被っている人が居た。
そのフロアには蝋燭が薄明るく照らしていた。
「おやおや、もう着いたのですか。あの獣と精神を破壊する幻覚を乗り越えるとはさすがですねぇ」
「あなたが……志麻妥哀奇さんですか?」
「おや?キミは見たことがありませんが……どっちにしてもいいでしょう」
ボロボロのソファに座り、退屈しのぎをしていたのか本を読みながら話す。
哀奇は六真をみるが、そんなものはどうでもいいとすぐに興味をなくす。
「えぇ、そうですよ。私がアンジカトスの幹部であり、魔界の門を開こうとする者ですよ」
そう言いながら哀奇は自身が行おうとしている事をペラペラと話す。
「志麻妥哀奇!大人しく降伏し、儀式を止めなさい!!」
穂野江は今にもレイピアを引き抜こうとして殺気を醸し出していたが哀奇はそれを涼しい顔で受け流す。
「ホゥその眼、イイですねぇ……こちらをゾクゾクさせますが止める訳にはいかないのですよ」
そうして本を閉じ、ソファから立ち上がる。
不敵な笑みを零し、カツンーーカツンーーと歩き出す。
「志麻妥さん、どうしてこんな事を?」
単純な理由を聞く六真に対して哀奇は目を変える。
「どうしてーーですか?それはですねぇ、この【世界を変える】ためですよ」
「世界を変えるだって……?」
「そうですよ、だからこそ悪魔の力を借り、この世を強者のみが統べるようにするためですよ」
「だからって悪魔を従えさせ、罪の無い人間を殺す理由にならないはずよ!!」
「貴様に何が分かる!!」
穂野江の言葉を遮り、怒号を上げる。
「私はねぇ……元々、強者としての力が有りましたがそれを妬み、利用する者の食い物にされましたよ」
『クックッ本当に……無力でしたよ』と嗤っていたがそれは燃え盛る怒りの炎が目の前に灯っていた。
「なら、誰かに助けを求めなかったんですか!」
「そんな物は弱者の馴れ合いであり、不必要なものにしか過ぎません」
「それでもーー」
『あなたの周りには居たはずだ』と口にしようとするがその行為を見下していた。
「アナタは味わった事がないでしょう?あの耐え難い屈辱ヲォォ」
哀奇は拳を握り締め、血を垂らす。
それは僕が想像するよりもの苦しみを味わい、経験したのが目に浮かぼうとする。
「しかし、私はあの"御方"に出逢い、生まれ変わったのですよ」
「あの御方……?まさかアンジカトスのーー」
穂野江さんが何かを言おうとするがその御方を歓喜極まるように、盲信的に言う。
「えぇそうですよ!!あの御方に救済され、私は本当の力を手に入れ、アイツラに復讐しましたよ」
復讐だって……!?
「その人達は……どうなったんですか」
聞きたくはない。結果は目に見えてるがそれでも哀奇の残った良心を期待したがそれでも現実は非情だ。
「聞かなくとも分かるでしょう。悪魔のエサにしましたよ、『助けてくれ』と無様に泣き喚きながら魂も肉体を貪り喰われながら、ジックリと見学しましたよ」
その顔は復讐を終えた一人の人間ではなく、まだそれでも終えることのない復讐鬼として滲ませていた。
「そ、そんな……」
「なんていう事を!」
光悦とした表情でその現状を思い出しているのだろう。
僕は……恐ろしかった。ここまで人は変貌し、残虐な本性をさらけだすのかと。
「だからこそ私はあの御方に忠誠を誓ったのです」
「やはり貴方を生かしておくわけにはいかないわ」
穂野江は冷たい言葉を発し一瞬の内に近づき、哀奇をレイピアで突き刺そうとするが。
「お話は最後まで聞きましょう。我等の邪魔をするDDOよ」
懐から短剣を取り出し、レイピアを弾こうともせずカチーーカチカチと金属が摩擦する。
「そういえば、あの木偶の坊を操り、貴方達を殺そうとしたのですが殺したのですか?」
「"殺して"はいないわ。貴様の悪辣な洗脳を解いたのよ!」
「フム、そうですかーーそれは残念」
あの木偶の坊が……と嘲るように呟く。
今だったら……
六真は今なら穂野江さんが哀奇の注意を引いている内にといかにも怪しい祭壇に近づき、破壊しようと試みるが。
「な、なんだこれ!?」
祭壇には、複数の死体であろう物が無造作に積み重ねており、所々に食い散らかした跡。
切り取られた小さく生々しい紅く染まっていただろう六つの心臓はピクピクと動いていた。
その下には血で汚れていたが魔法陣らしき物が描かれていて薄っすらと見えた。
よく視るとその隙間から黒いモヤが漏れ出していた。
「…………!!!!」
僕は何かこの目で視てはいけない【モノ】に恐怖した。
そのモノは大きい瞳をギョロギョロと動かし、こっちと視線が合うと目を細めてニタニタとワラッテいた。
背筋が凍り、心臓を鷲掴みにされ、サラサラと指から手の平へと触られているーーそんな気がした。
「良く出来た代物でしょう……その儀式にどれくらい物、労力をかけたと思いますか」
「なっ!?」
穂野江さんと相対していた哀奇は六真が祭壇に近づいてのに気づいていた。
それよりも元々、気づいていて自分のさがやっている行いを見せしめかも知れない。
「本来ならば数百、数千万年も時間がかかるはずでしたが私のように忠誠を誓った者が命を捧げ、時間を短くしてくれたのですよ」
『あぁ〜素晴らしい』とその命を落とした者に視線を向け、喜びに満ちていた。
「あなたは悲しくないんですか!仲間だったんでしょう!その死を痛まないんですか!!」
「『痛み』?それはあの者等が進んでやったことですよ。フフッその死は敬意を評しますよ。」
その言動はそれが正しいのだと言っているように感じた。
「さて、お喋りは此処までにして、目障りである貴様等(DDO)を殺しましょう!」
そう言うと哀奇の後ろの影からゴポゴポと膨れ上がる。
「まずは目の前いる威勢の良い女は私が相手をしましょう。そしてお前にはコイツ等の贄となってもらおうか!!」
「六真君!私が哀奇の相手をする内に儀式を阻止して!!」
「やれるのか!?僕は」
その影から現れたのは人の顔が苦しみ・憎しみに満ち溢れた異形だった。
どうも〜作者の蒼井空です!
読者の皆さまがここまで読んで下さりありがとうございますm(__)m
作品の投稿は遅いですがそれでも気長に待って、暖かい目で見守って下さればありがたいです。
これからも程々に頑張っていくので応援をよろしくお願いします!!
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秋の寒暖差が激しいので読者の皆さまは体調を整えて風邪を引かないようにしましょう(*^^*)
それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/




