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第四十話 汝、死を乗り越えーーとなる者

 「六真君!今すぐ治療するから!!」


 「ぁ、ァァーー」


 言葉に力が無く、瞳には光がなかった。


 穂野江は彼に近づき、回復魔法【キュアリア】で欠損した機能の一部である心臓を修復する。


 「穂野江様!私も助力します!」


 「いけない!これ以上、貴方が力を使えば生命に負荷がかかって最悪の場合、死ぬわ!!」


 天ちゃんは、ほとんどを邪気を振り払い、洗脳を解く札の両方に力を消耗していた。


 「良いのです。私の力で六真様を救えるのなら……」


 天使としての献身が心にある天ちゃんだが。


 「駄目よ、貴方が死んだら彼が悲しむ」


 「「……」」


 互いに一歩も譲らない気迫がぶつかり合うが天ちゃんの真っ直ぐとした覚悟が強かった。


 「分かった……私の補助を頼むわ。魔力を少しづつ送りなさい。無理はしないって約束して」


 「感謝します。穂野江様」


 天ちゃんは穂野江の背に手を添え、神経を右手に集中させていき、力を送る。


 六真様……死んではいけません。絶対にーー


 貴方を"護る"って誓ったのにーーいいえ、泣き言は後よ。ここで彼を死なせない!!


 「グッ頼むぞ、お前ら……?」

 

 ラバキは血を垂らしながらも見守っていた

 

 弱々しく光が六真を包み、回復魔法【キュアリア】が欠損した部分を直そうとするが。


 駄目……回復するのが間に合わない……


 欠損・損傷が多く、修復が遅くなっているのもあるが二人の魔力はもう底を尽いていた。


 二人の状態は枯れた果実の実から水を無理矢理に、一滴も残さず絞り出そうとしている。さらにはーー


 「穂野江様!?」


 「クゥーーウゥゥ、アァ!!」


 穂野江の手からチリチリと熱が帯び始め、まるで焼けるような痛みが襲ってくる。


 「いけません!?穂野江様、このままお力を使い続ければ身を滅ぼしかねません!!」


 そう言い、魔力を送るのをやめようとする天ちゃんだが。


 「だい、しょうぶ、それでも私はーー」


 【諦めきれない】


 魔力を上げようと穂野江はしたがやがて魔力枯渇マジックダウンを引き起こした。


 「も、もう一度、もう……一度だけ」


 フラフラとした手を六真に近づけると。


 「もう、だいじょうぶです……ほのえさん……」


 『ゴホゴホ』と血を吐き出ながらも、その手を握っていたのは血まみれで濁っていた六真の手が優しく触れていた。


 「てんちゃんも、あり、がとう……もう、へいきだ、から」


 眼が掠れて視えないはずなのに、しかし六真のは天ちゃんがいる方向に笑顔を向けていた。


 「ろ、六真様ぁぁ」


 天使の頬からスゥゥーーと雫が零れ落ちていく。


 「お願い死なないで……お願いだから……」


 顔を埋め、力強く握っていたがその願いは理不尽にも届かない。


 「六真……」


 「あぁ、ラバキ……ごめん。無茶しちゃ……た」


 「お前は自分の命を賭けてでもやり遂げた戦士だった」


 ラバキの目には涙を流してはいなかったがその声には敬意が込められていた。


 「み、んな……ありがーー」


 『とう』とか細い声を発し、六真は息をしなくなった。


 サイタイスが起動し、状態を機械音声が淡々と告げる。


 『六真正士のバイタルーー心拍、呼吸、血圧、体温の停止を確認しました。これより六真正士が関連したデータを制作します。残りの情報を保存ーー成功。近くにいるDDO隊員はサイタイスを回収して下さい』


 三人は押し黙ったまま、死体を見つめ、サイタイスの音声が耳に入らなかった。


 穂野江は近づき、六真の左手首に装着されたサイタイスを外し、専用のホルスターに入れる。


 「六真さまぁ……ウゥッ……」


 顔を両手で覆い、泣く天使。


 「……」


 現実を黙って見届ける鬼。


 「二人共、私のサイタイスに入って、このままじゃあ貴方達が存在が消えてしまう」


 「は、ハイ」


 「……ああ」


 二人は己が認めた主の側に居たいはずだが悪魔は自分の存在を媒体し、顕現する物・契約した者が消えるか無くなれば存在が消滅してしまう。


 そうしてラバキと天ちゃんは穂野江のサイタイスに一時的に入ろうとしたが。


 「ゴ……オォォォ」


 「な!そんなまだ洗脳が解けていなかったの!?」


 天使の力である聖と穂野江が全魔力を込めて造り上げた解呪の札だった。


 だがそれはダイダラボッチを洗脳する邪は浄化されていたが人の悪意が勝っていたのだ。


 「クッ彼がせっかく解呪を命懸けで成功させたのにやるしかないのね」


 敵が仕掛けた結界を解く時間も無く邪封も効果はとっくに切れている。


 「アァォォォォ」


 ダイダラボッチの周りから邪気が漏れ出し、やがて瘴気が充満していく。


 『ビィー!ビィー!危険、危険、邪気の規定を超えました。今すぐ撤退してください』


 サイタイスのアラームが鳴るが逃げる事は出来ない。


 「穂野江!俺が時間を稼ぐ内にとっとと体勢を立て直せ!!」


 「ラバキ!?でも貴方の体はもうーー」


 そう、ラバキの体は限界をとっくに迎えていた。


 鬼としての人間離れした腕力を持ち、鉄板のように頑丈な肉体を有しているが、突如のダイダラボッチとの戦闘では圧倒的に敵わないと思ったのだ。


 邪の力を利用して己の本能を刺激し、リミッターを外して力を何倍にも膨れ上がらせていた。


 その反動により、激痛がラバキの全身に巡り、立っているのも奇跡に等しい。


 「ハァハァ、私も最後までお供します」


 全身から汗を垂れ流し、健気にも立ち上がる天ちゃん。


 「万事休すかな……」


 覚悟を決め、レイピアを引き抜き、ダイダラボッチに向ける。


 「ウォ……アァァァ!!」


 己が敵と見なした者に荒れ狂うように上半身を引きずってくる。


 「ッーーやるしかない!!」


 そうして穂野江達にダイダラボッチが近づくまで二メートル差し掛かった時ーー


 「「「ッ!!??」」」


 「グォォ!?!?」


 後ろから全身が冷たく血が引いていき、心臓を握り締められているような威圧感。


 ダイダラボッチの目にはさっき殺したはずの人間の死体に驚いていた。


 「チッこんなに肉体ウツワをボロボロにしやがって……」


 起き上がっていたのだ、死んだ人間が。


 奴だ……この声は六真に宿っているもう一人のナニカ。


 人の身でありながら人間にとって毒でもある邪気を扱い、普通の人間が浴びたら致死量もあるのを平気で纏っている。


 そして神や魔王と同等の力を持つ存在。


 「ウゥ……アァァァ!!」


 脅威となる存在をこの眼で視たダイダラボッチ。


 洗脳されているはずが震える声を押し殺し、雄叫びを上げ、地面が隆起する。


 アースランスがその存在を捉え、串刺しにしようとする。


 『避けろ』と有無を言わせず穂野江達に伝える。穂野江らはその指示に従う。


 「そんなもん効かねぇよ」


 アースランスがその存在を貫く前に光の粒子となって消えていく。


 「フン……おっとまずは体を治さねぇとな。ハァァーー」


 そいつは邪気や瘴気を吸収し、貫かれた身体が再生されていく。


 「こんなもんだろ。だがまだだーーこの肉体は完成してねぇ」


 「グ、グォォ」


 信じられないといった眼で見つめるダイダラボッチ。


 大地を使った攻撃は無駄と判断し、ならばと接近戦に持ち込み、腕を振り下ろす。


 「六真君!!」


 口パクで『大丈夫だ』と伝える。


 「グォォォォォォ!!!!」


 「へぇ……なるほどなぁ。いい判断だが甘いな」


 「グォァァ!?」


 目では捉えきれない速さで振り下ろそうとした腕を掴み、顔面に重い一撃を叩き込まれたダイダラボッチは状況を飲み込めず、固まっていた。


 パラパラと顔面には歯を貫き、ほぼ空洞ができていた。


 「これで借りは返したぞ」


 「がァァァ!!グォ!?」


 ダイダラボッチは掴まれた腕を引き剥がそうとしたがガッチリと握られている。


 ならばとダイダラボッチは腕を崩し、新たな再生させようとしたが不可能だった。


 「オイオイ……そんなにジタバタすんなよなぁ!」


 「グゥォ!?」


 「ハッハッ逃げんなよ。あんだけ優位にたって不利になれば弱腰になるのかよなぁ!オイ!!」


 掴まれた腕にグッと圧をかけられわ痛みが走る。そして自分のある悪意が吸い取られていく。


 「フフッハハハハ!人の悪意ってのはなんとも心地よいんだろうなぁ。力が戻ってきたぜ」


 嘘でしょう……あれが本当の力ではないというの?


 ソイツの力の底がどのくらいあるのか絶句する穂野江。


 「ゴッァァァァ」


 ダイダラボッチ全ての力が無くなったのかドスンと倒れる。


 「邪気と悪意の気配がなくなったの?」


 あんな量を吸い取るなんて。本来であれば札や聖なる力を結集させ、清めなければいけないはずなのである。


 「後はこの障害を壊すだけだな」


 ソイツは二本の指で文字を描き、魔法陣が形成され、バリーンと硝子が割れる音が響き、結界が破られた。


 「これって魔法解呪マジックディスペル?そんな高等魔法を扱うなんて」


 魔法解呪マジックディスペルとは相手の魔法攻撃・結界など様々な用途に使い分けられる便利な魔法ではある。


 がその膨大な魔力(例えば百年間で得る水)を消費、魔法文字(十億冊分の文字の知識)を解読の二つがなければ出来ない芸当である。


 「よし、これで良いだろ」


 「コイツも敵かぁ!!」


 ラバキはソイツの背後を取り、手刀で首を跳ね飛ばそうとする。


 「いけない!ラバキ様!?」


 天ちゃんが止めに入ろうと声をだすが遅かった。


 「落ち着け。敵じゃねぇよ」


 ラバキの手刀を音を出さずに受け止め、地面に組み伏せる。


 「おっと、すまねぇな」


 スッと簡単に離したソイツはまた哀しい瞳をしていた。


 ラバキは完全に戦意を失っていた。呆気なくも自分が組み伏せられたことに。


 「皆、ありがとな。それじゃ回復させなきゃな」


 ブツブツと何かを唱え、三人の傷ついた体と体力が回復する。


 「それじゃあ後は託す……が穂野江さん、あまり無理をしないでくれ……頼む」


 ドサッとソイツは自分の事より私達に慈愛の瞳を向けながら倒れた。


 ラバキと天ちゃんは六真のサイタイスに戻っていく。


 「ウグ、ワレハイッタイナニヲ……」


 「ダイダラボッチ様!正気を取り戻しましたか!!」


 「ソウカ、ワレハアヤツラレタノカ」


 そうして本来の大地の神が目覚めた。


 ーーーー


 「あれ?ここは……」


 目を覚ましたのはまたあの時と同じ、白い世界だった。


 「えぇ〜っと確か、僕は死んだんじゃなかったっけ?」


 今でも分かる。槍に刺された感触は嫌にでも思い出せるが身体には穴が空いていたかった。


 「う〜ん、ここってもしかして天国かな?」


 「そんなわけねぇだろ。たくっ」


 聞き覚えのある声が聞こえ、後ろを振り向くとそこにはシュラさんがいた。


 「シュラさん!どうもです」


 「よっ元気そうでなによりだ。と言いたいが油断して死ぬんじゃねぇよ。もう少し冷静に考えろ」


 『ハァァ』と深い溜め息を吐くシュラさん。


 本来だったらオレはあまり【あっち】に行きたくねぇんだがな。


 「うっはい……あのシュラさん、僕は死んだんですか?」


 「いや、死んじゃいねぇがまぁその境にはあるだろうな」


 うっ……やっぱり死ぬんじゃないか僕は……


 「まぁ安心しろ。死を乗り越えたお前ならな」


 「【死を乗り越える】ってあれは夢であって現実じゃないんじゃ」


 そうだ、最初の時は理不尽に何度もシュラさんに殺されては復活してのエンドレスがあったな。


 自分の死体が積み重なった光景を遠目にみてたんだよな。


 しかも妙に痛みが現実味を帯びていたしな。


 「本当だが、まだその力は未完成に程遠い。だがあの戦いで封印が少し解けた」


 「封印が解けた??」


 「おっとまだその先は言えねぇがまだまだお前にはこの先乗り越えてもらわなきゃ困るからな」


 なんでここまで僕にこだわるのだろうか?不思議に思っているが何だか聞ける様子ではなかった。


 「それじゃあそろそろ現実に戻る時間だ」


 「はい。分かりました!」


 「とっその前に現実に戻ったお前の肉体は少し変化している」


 「へっそうなんですか?」


 「まぁオレがヒントをやっても成長しねぇから自分で見つけろよ。じゃあな」


 そうして僕はシュラさんからのアドバイスを受け取り、再び眠気が襲ってきたのだった。

どうも〜作者の蒼井空です!

読者の皆さん、お元気ですか?

こんなに作品を投稿するのに遅れてすみませんm(_ _)m

ちょっと心の整理とか仕事で忙しく中々、出来てませんでしたがそれでも待って下さった読者様には感謝しております。

この場を借りて感謝を申し上げます。

本当にありがとうございます!!

それでは長く書きましたがそれではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/

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