第三十九話 意志
「けど……どうする!?」
「ウォァァァァ!!」
ダイダラボッチは、こっちが持っている"解呪の札"の存在に気づいてるのか。
土の槍ーーアースランスがこっちに向かい、襲ってくるがまた次の攻撃を仕掛けてくる。
「ウワァァ!!」
「クッ」
両腕を振り下ろし、地面を振動させる。六真らのバランスを崩そうとする。
無論、追い打ちをかけるようにアースランスが貫こうとする。
僕らは揺れ動く地面に対処していく。
これじゃあジリ貧だ……穂野江さんが託してくれた想いが無駄になる。
(チッこのままじゃラチがあかねぇな……)
ラバキは今の状況を判断し、このままだと六真は力尽きる。だったらーー。
『どうする……どうする!?』と焦る六真には何かダイダラボッチに近づけられる打開策を見つけようとしたが上手く頭が働かない。
すると隣にいたラバキが思いもよらない言葉を口にする。
「六真……オレが突破口を開く」
「なっ正気かよ、ラバキ!」
「そうじゃなきゃよぉ。お前と穂野江……死ぬぞ」
確かに……本来だったら五分間、邪気から護ってくれる邪封の効力が切れかけている。
それもそのはず、敵の結界にで逃れる事も不可能であり、充満していく邪気の量は時間が経つにつれて体を蝕んでいく。
だからこそラバキはこれ以上、時間をかけないようにしたいのだろう。
「だ、だったら俺が道を開く……ラバキがやってくれ」
「あのな、オレは鬼だぜ。そんな聖があるもんに触れるかよ」
「で、でもお前の方がーー」
「言い訳すんじゃねぇ!六真、穂野江に託されたんだろ。自分から逃げるな!!」
「ッ!?」
僕がーー逃げる?六真は無意識に片手を見る。
震えていた。そこから自分が気づかずフタをしていた感情が溢れる。
【怖い・泣きたい・逃げたい・殺されるーー死ぬ】
そういった負の感情が六真に鎖をかけていた。むしろその感情を自分自身にかけていたかもしれない。
そうだ、僕は誓ったじゃないか!この想いを無駄にしないって!
「ごめん、ラバキ。目が覚めた」
「なら良い。じゃ指示しろよ、主」
僕は指示を出す。それは『自殺してこい』という無謀に近いがそれでもマスターとして下す。
「我が目の前を阻む壁を破れ、ラバキ!」
「オウ!任せろ!!」
ボキボキと指を鳴らし、六真の先頭に立つ。
「それじゃ……遅れるなよぉぉ!!」
「あぁ!頼むぞ」
互いに全速力で走り、ラバキは土の槍で形成された岩石を壊しながら進んで行く。
「ウォ!?アァァァァ!!」
ダイダラボッチはここに向かっている事を察したのか新たな槍を出していく。
「気づいたか……だがヨウシャシネェェゾォォ!」
「ら、ラバキ?」
ラバキの様子が変わってはいく。
まるで抑えられた本能もしくは欲望が剥き出しになっているかのような。
「オラオラァァモット、モットダァ。オレヲタノシマセロ!」
命の取り合いしながら愉悦する表情をしていた。
「ラバキ……お前どうしたんだよ」
サイタイスでラバキの状態を確認すると『暴走』の二文字が表情されていた。
『悪魔は邪気の濃度が高くある場で浴び続ければ本来の内に秘めた欲が開放され、大変危険です。これを暴走と称されています。もしなってしまった場合、直ぐに呼び戻して下さい』
サイタイスの説明を解釈すれば、ラバキは今、とても危険な状態である。
「おいラバキ!しっかりしろ、落ち着け!!」
「ワカッテルーーダカラダマッテロ」
ラバキはワザと自身にある欲を開放させ、邪気を肉体に巡らせ、力として強化させていた。
「本当かよ……」
だが六真にとってはそれは恐怖でしかなかった。これが戦いになると豹変する本来の鬼の姿なのだと。
「分かった、このまま頼むぞ」
気圧されながらも僕は信じる。
ガァンガァンと破壊していくがそれを上回っていき再生していく壁ら、
まるで破壊と再生のエンドレス。
「よし、このままあと少しでーー」
ダイダラボッチの目の前に差しかかった所で。
「ウォァァ!!」
バァーーンと地面を叩き、その衝撃波で僕らを吹き飛ばそうとする。
「クソっあと少しなのに……」
僕はもうダメかと諦める。
「ロクマァァ!イケェェェェ!!」
ラバキは僕の腕を掴み、投げ飛ばす。
「ウワァァ!本気かよぉーー」
馬鹿力による一直線に投擲し、ダイダラボッチの左腕に飛んでいく。
チラッとだがラバキの手甲には赤く腫れ、血が滲み流れていた。多分、無理を通したのだろう。
ニッと笑い、まるで『後は託したぞ』と言った視線が読み取れた。
「グゥゥォォーー!」
全身に圧力がかかり、ミシミシと痛みが走る。
「ウォァァァァ!!」
ダイダラボッチは飛んでくる六真をハエ叩きのようにはたき落とそうとしてくる。
「そうくるよな!フゥーー」
瞬間的に構えを取り、一点鐘でダイダラボッチの手の軌道を変え、反らしてみせた。
「グガッッ!?」
「ヨシッ!このままいくぞ」
「ガァァ!グガ??」
パラーーパラパラーー
ダイダラボッチはまた、叩こうとしたが自らの腕が粉々に砕かれる一歩手前だった。
これは六真に心の余裕ができたことにより、本来の威力が出せたのだ。
「あとちょっとで……よし!掴んだぞ!!」
ガシッと左の指に捕まり、よじ登ろうとしたが。
「ガッアァァ!」
「うわ、うわぁぁぁぁ!?」
『離れろ』と言っているかのようにブンブンと巨腕を振り回すがそれに落とされないよう必死にしがみつく。
「こ、これじゃあコイツの額に近づけられいぃ」
その一方ーー
(やっとほんの少し力が戻って来たわ)
自ら封印をかけた彼女、穂野江は解呪の札に吸われた魔力を取り戻す事に集中していた。
なぜ封印を施したのかは邪気による、精神・肉体の毒の侵攻を防ぐ方法の一種でもあったのだ。
だからこそ魔力を回復するのに専念出来たのである。
まだコップ一杯分にしか溜まっていない魔力だが彼に少しでも援護できれば。
(よし……準備はできた)
封印を解除し、浅い眠りから覚めた穂野江はまず行動を封じる術を唱えながら、彼に連絡をとる。
「待ってて六真君。これで終わるから、もう少しだけ耐えて……」
ビィービィー
「六真君、私が抑えるからその隙に!!」
「えっ!?」
突然、サイタイスから穂野江さんのディスプレイ通信が入る。
場所はここから離れて数十メートル離れた所から何かを詠唱している。
「我が眼に捉えている敵の動きを捕らえよ。行動制限!」
すると周りの上下左右から鎖が地面から突き出し、キリィキリィと金属音を響かせる。
ダイダラボッチの体を巻きつけていく。
「グォォ!ガガァァ!?」
ダイダラボッチら体に巻きついた鎖を無理矢理に解こうとしたがどうやら上手くできていない。
よし、これなら!
手助けをしてくれた穂野江さんにお礼を言おうとしたが。
「穂野江さん、ごめん。助かっ」
「そんな事を言ってないで早くしなさい!後数秒しか保たないの、は、はやくぅぅ……」
穂野江さんの顔は酷く青ざめ、声も震えている。よほど無理をしている。
『無茶しないで自分の身を守って下さい』と言おうとしても彼女のDDOとしての"意志"は固いのだろう。
だったらその意志を僕は無駄にするわけにはいかない。
「ウォォォォ!!」
六真はガムシャラに登り、立ち上がって走り出す。
「ガッオァァ!!」
急にダイダラボッチな叫び出すと同時に全身から棘が隆起する。
まるで刃の胴体、いや鎧だろう。
コイツ……自分の所まで行かせないよう壁を張ったのか。
暴走していても己の敵と見なした者に侵攻されたいように阻んでいく。
「邪魔すんなぁぁ!!」
棘を破壊き、体から生成されていく槍が貫こうとしても避けていく。
まるで見えていて、視えない障害物レースをしているようだった。
何度も転んで、立ち上がって、走って、砕くのループだった。それでも諦らめない。
バァンバァンーーズゴゴ……ズガァーーン!!
壊していっても再生されて、クッ、ハァハァ……避けても追い打ちが続いていく。
もう身体だって……限界だ。しかも『ゴホゴホ』と咳か出て、口の中が鉄臭い。
「一気に決着をつけるしかない、ゥオオオオ!!」
僕は限界を引き出し、タンタンと槍を破壊せず、足でステップをとりながら躱していく。
ダイダラボッチも対抗して障害を増やしたが避けられていく。
僕は、順調に肩まで近づけられた。
「グ、グゥゥ……」
顔には焦りが滲みでて、荒々しくアースランスの命中が悪くなっている。
「今だぁ!」
僕は脚に全集中させ、飛び跳ねる。これを逃せば二度とこのチャンスは無くなる。
五十mーー十mーー1cmと巨人の顔に近づき、この勢いで右手に持った解呪の札に貼り付ける。
「モラッたぁぁ!」
なぜかゾクッとしたビビる気持ちが心に巡るが構わない。
ドスッーーーー。
「えっ…………」
完全に決まったと六真が思っていた慢心がミスを引き寄せてしまった。
ダイダラボッチはニヤニヤとしてやったりとした嫌悪する程に嗤っていた。
背中を抉られ、胸から飛び出ているのは土の槍だった。
「しっかりして!六真君!!お願い、死んじゃイヤ……」
「ゴホッガァッァァッッ」
吊るされた肉の状態から口に多量の血を吐き出し、手から足元に流れ、意識がかすれていく。
「アガァァ!」
グササーーグチャ……グチャ……
さらに六真の肉体をツラヌキ、穴だらけにされる。
僕は眼の前が暗くなり、マブタが徐々にゆっくり閉ざされていく。
「ダメ!しっーーかーーりしーーてろーーくま」
ディスプレイから穂野江の声が必死に六真を呼びかけるが耳が遠くなり聴こえなくなる。
「そーーうだ、ぁぁ、やらなきゃ……」
機能を失いかけていく体に力を入れ、引き抜こうとする。
ズチャャーーボタボターー。
引けば引くほどに血が流れ落ちていく。それでもやり遂げる。
「はやく、もとに、もどれよ……」
ペターー
「ウゥッガガォォーー」
札は輝きを放ち、ダイダラボッチの洗脳が解かれていく。
「よかったぁぁ」
六真を貫いた槍は消えていき、ドサッと地面に倒れる。
「そ、そんな嘘」
「オイオイ、マジかよ……」
「六真……様??」
そうして決着はついたーー1人の犠牲を除いては。
どうも〜作者の蒼井空です!
桜が散り、みんなが楽しいGWが始まりましたね。(今頃遅い気がするけど…)
読者の皆様はどうお過ごしになりますか?
私はボチボチと趣味と現実を両立されるように頑張りたいですね…淡い希望ですが…
長々と書きましたがここまで読んで下さりありがとうございますm(_ _)m
不定期ですが程々に頑張りますので応援よろしくお願いします!!
それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/




