第三十七話 邪気に染まる自然
「ウォォォォ!!」
敵に洗脳され、自然を荒らしつくす巨人と成り下がった大地の化身・ダイダラボッチ。
「戦うっていったってどうすれば良いんだ?」
自分よりも数万倍ある身体を持っている巨人が森を引き裂き、大地を砕いていく。
眼を血走らせ、ただの兵器となっている。
このまま暴れ出していたら五寿山が破壊しつくされるだろう。
「六真、これを貼って!」
穂野江さんがホルスターから取り出したのは一枚の御札だった。
「はい!ってこれは……?」
ヒュンとマジシャンのように鮮やかな手捌きで僕に渡す。
それは以前に渡されたのとは別で、お経のように習字で細く長く、羅列され書かれてあった。
「それは邪気から一時的に護れることができる邪封!これを早くどこかに貼り付けて!!」
「わ、分かりました!でもなんで……」
僕は御札を受け取り、胸の真ん中に貼る。
パァーーと光り輝き、僕を包み込んでいく。
「視なさいアレを……敵は私達を確実に抹殺するつもりよ」
僕は辺りをじっくりと見るとドス黒い霧が植物を枯らし、川が干ばつしていく。
まるで今ある生命を喰らい、死んでいく様をまざまざと見せつけられる。
「これが邪気なんですかーー」
手が震え、冷たい汗が背筋に流れていく。もしこの御札が無かったら今頃、死んでいたかも知れない。
「えぇだけど、最悪なのは邪気が"瘴気"に変化していっているのよ。しかもダイダラボッチ様にも邪気が纏っている」
「それじゃあ、ここの邪封で対策はできているんですね」
僕は少しだけ希望を持てたが穂野江さんの顔色は暗いままだった。
「邪封は五分だけしか邪気から護ってくれない。ーーけどその間に何か手立てを考えなきゃ」
焦ってはいる彼女だが冷静に状況を打開する方法を考える。
「それじゃあダイダラボッチを倒すしかないじゃないですか!?」
「駄目よ!あの御方を万が一、殺めてしまえば自然の摂理が一つ消滅してしまうわ!!」
『そんな事を絶対してはいけない』といった切羽詰まる顔をする穂野江さん。
すると『ビィービィー!』と六真のサイタイスがけたたましく鳴り出し、慌てながら確認する。
『警告ーー警告ーー自然の摂理を守護する存在を殺めてしまった場合、全ての生きる者に影響を与え、災いをもたらしてしまいます。
自然の現象のバランスを崩しかねません』
「じゃあどうしたら……」
僕は唇を噛み、どうすれば良いのか悩む。
瘴気という毒ガスに充満された鉄の箱に閉じ込められ、倒してしまえば自然に絶大な悪影響を催してしまう巨人。
このまま五分間。打つ手が無いと僕は絶望し、呆然とする。
「……一つ方法があるわ」
固く閉ざされた彼女の口から作戦を聞くがそれは無謀に近かった。
「私がダイダラボッチ様の洗脳を解く解呪を成功させてみせる。だから六真……」
不安を感じさせない、信じきる気持ちが伝わってくる。
「私を護って……」
そうだ。ここで心が折れちゃいけない!今度は僕が彼女の力になる番だ。
ここで絶望しきったって何も変わらない。
だからーー抗ってみせる。こんな理不尽な運命から!
「分かりました。やってみるよ!」
「頼んだわよ、六真!!!!」
穂野江さんは魔法陣を刻んでいき、人語では理解出来ない事を素早く詠唱させ、発していく。
「よし、サイタイス!召喚プログラム起動!!」
六真が契約した二人の仲魔を召喚する。
「六真様!またお力を貸します!!」
翼をはためかせ、周りが慈愛に満ちていく。さすが天ちゃん。
「せっかく終わったと思ったのに面白いのがやれるじゃねぇかよ」
ポリポリと面倒くさそうにしたが鬼の本能を刺激したのかラバキは戦いの匂いで戦闘体制に入る。
「天ちゃん、穂野江さんを手伝ってあげてくれ!ラバキは僕と一緒にアイツの相手をするぞ」
二人はコクっと頭を振り、互いの役割に就く。
僕はラバキと共に駆け走り、思いっきり地面を蹴り上げ、空高く飛び上がる。
「グォ?ガラァァァァ!!」
ダイダラボッチはこちらに気付いたのか地面の土を圧縮させ、創り上げたソルクラッシュ(大地を砕きし拳)を振り上げる。
「グォォォ!!」
「ドリャァァ!!」
人間と巨人の二つの拳がぶつかり合うのであった。
どうも〜作者の蒼井空です!
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