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第三十三話 調整

 「それじゃあいくよ、六真君」


 「いくぜ……六真」


 「……」


 かれこれ十二時間もぶっ続けで休むことなくこの特訓で何も言うことができず、黙って構える。


 もう頭が思考を放棄し、僕は無になっていた。


 「オラァァァァ!!」


 地を蹴り上げ、真正面から向かってくるラバキ。殺意を込めた視線をビリビリと肌に感じる。


 本気だ……。


 グッと僕は、全身を固めるが後ろに魔力の反応を感じる。


 このままラバキの攻撃を受け止めきれなければ、地面に設置されたマジックモアが作動されてしまう。


 今さらだが僕は、彼らの無茶な"教え方"により魔目の感知能力が鋭くなった。


 例えば人間の目で物を視認する限界は百度まで、だが僕は三百度まで感知できるようになった。


 人間の隠された第八感の一部……というべきだろう。


 まぁこんな事を悠長に思い出しても仕方ないので現状に視点を戻す。


 後ろに穂野江さんが設置した色は赤、つまり火に属する魔法だろう。


 しかも色が濃く、完全に丸焼けになりそうな嫌な感じがする。


 だったらこれを利用してみよう。……小賢しいと思うけどこれも一つの作戦だと思うようにした。


 構えをとっていた六真は、それを解く。いわゆるノーガードだ。


 「諦めたのか、見損なったぞ……六真ぁぁぁぁ!!」


 フッと心の中で笑みを浮かべ、ラバキの剛腕が振るわれようとした瞬間ーー


 勢いよくジャンプして二メートルもの身長があるラバキの背中をとろうと不意をつく。


 「良い作戦だが甘いぞ!」


 そんな僕の考えを読んでいたのかラバキが振り返り、血管がを隆起した裏拳が近づく。


 流石、数多の戦を駆け巡った【鬼】の勘だろう。


 「やっぱり凄いな……」


 空中にいる僕は左右上下に回避するのは到底不可能であり、むろん魔法なんて使えない。


 だけどこの三日間と本物の神様との修行のお陰で体術に関してはちょっと自信はある。


 「そうだろうと思ったよ」


 身体を丸めて、グルッと回転してラバキの拳に合わせるように両足を突き出す。


 名付けてジャイロドロップキック。


 一寸でもズレてしまえば相応のダメージを喰らってしまうがそんな事で恐怖に呑まれたら何も出来なくなる。


 そんな事はしたくない!なぜなら僕は"悪魔から人間を護る"ためにこの苦難を乗り越えなければならないからだ!!


 拳と両足がカチッとパズルのピースのように重なり、バァンと辺りに重轟音が鳴る。


 「グォ!?」


 「よっし!決まったぁぁ」


 ラバキは衝撃に耐えきれず仰け反る。


 そう、後ろに仰け反ったしまったラバキの足元からピカッとマジックモアが発動する。


 「チッハメられたか……」


 炎がラバキを包み込み、体を焼き尽くそうとする。


 「アチチ!アチチ!!」


 ゴロゴロと地面に寝転び、火を消そうとする。


 とりあえずは危険な鬼は一時的に無力化は出来たがそう長くはないだろう。


 ホッと一息ついたがそこから、ゾワッと背筋が凍るほどのものが流れた。


 「ふぅん、私を忘れてもらっちゃ困るわ!」


 遠くから魔力弾が放たれ、ギリギリ視えるぐらいの速さだった。


 しかもその魔力弾はドンドン加速していき、僕の顔をかすめた。


 「ヤベェ……肝が冷えたよ……」


 「さらにいくよ。全部避けきってみなさい」


 ポンポンと穂野江さんの手から前回よりも倍の量、千……万ぐらい魔力弾が創り出されていく。


 その中には、火・氷・風・光などの属性が付与されている物も混じっている。


 最悪なのは、地面に無数に仕掛けている罠の数々であり、ランダムに素早く動いている。


 遠距離から確実に近距離からの攻撃を得意とする相手を封じるフィールドである。


 「やるしかねぇな」


 心の帯をギュッと再び締め、全身に集中力を巡り通す。


 「それじゃあ……いくよ!」


 「クッ覚悟を決めろよ俺ーー」


 魔力弾マシンガンが容赦なく撃たれ、僕は全速力で左右にステップを刻み、球を避け続ける。


 地面に触れた球はドォォンと爆発し、小さなクレーターができていたがその反動によって罠が作動する。


 だがこのまま避け続けてもジリ貧でもある。ラバキとの戦闘で両足が痺れてかけている。


 そして体力も集中力も尽きかけている。


 だったら……このまま突っ込むしかない!


 普通だったら、他人が見たら何をトチ狂ったのかと罵倒するかもだがこれしかない。


 「フゥハァァーー」


 左腕を脇腹まで引き、全集中を拳に注ぐ。


 この技に賭けるしかない。


 穂野江さんの方まで走っていく。


 「アッゥァァ」


 今になってから痩せ我慢していた痛みが全身から脳に伝わってくる。


 しかも罠、魔力弾をひとしきり全身に浴びてしまい、意識の糸が切りかける。


 だってそのはず馬鹿正直に真正面から向かってくるのは敵からしたら格好の的である。


 「精神力の強さも体術は急成長した貴方は凄いわ。けどそれはあまりにも無謀よ」


 「えっ?」


 「これを撃たれたらお仕舞いだからね」


 「しまった!?それはぁ!」


 とてつもない魔力を込めた球を溜めていた撃ち出そうとする穂野江さん。


 この威力は多分、気絶だけじゃ済まされないし、あの時みたいに手で弾けない。


 どうすりゃいいんだコイツを……。


 諦めかけたその後、どこからか頭に声が響いてくる。


 (オイオイ……なにも一点鐘は相手に近づいての攻撃だけしか出来ないしか取り柄のないもんじゃないぜ)


 (えっ……誰だ!?)


 (俺の事はどうでもいい。目の前にある巨大なもんをぶち抜いてみせろ!)


 (お、オウ!)


 (イメージとしちゃ、風を纏い拳の衝撃波を飛ばす事だ)


 (わかっ……えぇ!いきなりそんな事を言われても)


 (つべこべ言わずにやれ。死にてぇのか?)


 「何をブツブツ考えているのかしら。これを避けてみなさい!!」


 強大な魔力弾が放たれ、地を削り、恐怖に溺れそうになる。


 だけどやるしかねぇ!


 僕は立ち止まり、今なら球と穂野江さんは重なり合っている。これならイケる。


 「一点鐘ぉぉぉぉ!!!!」


 左腕に溜めた集中力を込めた拳に回転力をかけ、突き出す。


 すると一点の風を纏った一点鐘が魔力を砕き、穂野江に近づく。


 「ハァァァ!!」


 穂野江は腰に携えたレイピアで一点鐘を難なくかき消した。


 「本気かぁぁ決まったと思ったのに……」


 ガクッと膝をつき、ハァハァと息切れを起こす。


 そうして後ろに倒れ、空を見上げる。


 「合格よ。六真君」


 「やったーースゥスゥ」


 合格の二文字を聞き、六真は眠りについた。


 ーーその後


 「これなら大丈夫か?」


 身体に纏わりついた炎を消し終えたのか穂野江に聞くラバキ。


 穂野江は顔には出てはいないが驚いていた。本来だったら上級に位置する悪魔でも"火傷では済まない"火だったのにピンピンしていたのだ。


 やはりラバキは油断できない相手だと再確認する。これはもちろん人類に牙を向けるかも知れないからだ。


 「そうね。これなら急場はしのげるかもしれない、けど……」


 「不安か?」


 「大丈夫さ。コイツならきっと乗り越えられる」


 「ラバキ……ありがとう」


 「別に礼はいらねぇよ。さて酒のつまみでも見つけてくるかな」


 ラバキは森の中に入り、今晩のつまみになる獲物を探しに行った。


 突然、六真のサイタイスが輝き、天ちゃんが召喚されたのだ。


 「六真様、今治療しますからね」


 「我が主よ。この者の傷を癒やし給え」


 天の光が六真を優しく照らし、これまで受けたダメージがみるみる回復していく。


 「天ちゃん……彼の治療は任せたわ」


 「はい……穂野江様、あまり無茶をしないで下さい。あんなに魔力を消費したのですから相当お疲れになっているはずゆっくりお休みになって下さい」


 「えぇ……後は頼んだわ」


 穂野江はDDO隊員として優秀であり、魔力の保有量は多い分かりやすくするならば海に等しい。それでも三日間で魔力を使い続けていたので疲弊が耐えなかった。


 やるべき事は全てやった。後四日……彼を信じるしかない。


 そうして六真は地獄の特訓である三日間を過ごし終えた。

どうで〜お久しぶりです!作者の蒼井空です!!

読者の皆様、大変長らくお待たせしました。

執筆するのにリアルで忙しかったり、ネタを探したり、ガチ目に凹むことがあって中々書く意欲が沸かずにいましたがそれでも待って下さった、読者の皆様には感謝しかありません(´;ω;`)

話は変わりますが春の時期が近づいておりますがまだまだ寒い時期でもあります。

しっかりと暖をとってこの作品を読んで下されば大変嬉しく思います!!

長らくお書きしましたがそれではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/

追記

この度【人魔転生ーー黙示録】に総合評価を下さりありがとうございます!

これからも不定期ですが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

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