第三十ニ話 魔撃
二日目、僕は死にかけていた。
「ハァハァ……クソっなんて二人だ」
「もうバテたか?だが手加減しねぇぞ!」
アバキの剛腕が腹を砕き、間髪入れずに額に勢いが増した拳で殴られる。
「ガハッ」
地面に叩きつけられ、意識が失いかけたがすぐに反撃しようと転ずるがもう一人に阻まれる。
「そうはさせないわよ。ハァ!」
虚空から生み出された紫の塊である二つの球体が六真の身体にぶつかり、吹っ飛ばられた。
六真には、魔力を視認できる能力を身に着けたが予期せぬ攻撃で反応できなかった。
「うわっ!?」
予想できない攻撃に六真は対応できず、ゴロゴロと地面に転がる。
「初めてタッグを組んでるのに息がピッタリと合ってるし、上手く運び過ぎだよ……」
時間は遡り数十分前ーー
テントで穂野江さんと次の特訓について話しを聞いていた時だった。
「六真君、昨日は私が仕掛けたマジックモアで魔力を深くは知れても、それだけじゃ足りないわ」
「は、はぁ……」
「だからこの人と私で貴方の体術の基礎・魔法の対応を無理矢理にでも格段に上げさせるわ」
するとテントから知っている顔、ラバキが現れた。
「ラバキ!?なんでお前が」
「よっ今回の訓練にこのオレも参加させてもらうぜ」
この二人を相手にしなきゃいけないのか!?不味い……戦える自身がない。
サァァと血の気が引き、口元がピクピクする。
「大丈夫よ。今回、私は魔法を担当するわ」
「このオレは体術をやるぜ」
ホッと息をつくがそれでも油断できない。
ラバキとは何回もやり合っているけど、穂野江さんの実力は未知数である。
だが不思議に思う、この二人がタッグを組んだ事を一度も見たことはないし、ラバキと会ったのも最近である。
本当に協力できるのかな?
そんな心配を胸に抱いていたがそれは杞憂だった。
それが現在である。
「やってやるよ!何度でも立ち上がってやる!!」
「そうだ……その意気だ」
ニヤリと笑うラバキ、僕は脚に力を入れて向かって走るがいつもの調子ではなくよろよろと遅かった。
ラバキに大振りのジャブをするがヒョイヒョイと躱される。
「あら、私を忘れては困るわよ」
しまった!ラバキに集中しすぎて穂野江さんの存在を忘れていた。
魔力の塊ーー通称【魔弾】が近づいてくる。
僕は咄嗟に上半身を反らし、一つは躱せても、二つ目は無理だった。
魔弾を右腕でガードしたが当たった腕と球が重なり合い、ボンッと爆発した。
「く、うぁぁ……」
右腕の感覚がない。プスプスと肉が焦げた生臭ささが鼻にツンとくる。
今まで身体を弾く威力だったはずなのに……もしかしてワザと?
「チクショ……」
もう体力も、精神もズタボロだ。六真は遂に限界に達し、倒れてしまった。
「休憩ね。少ししたらやるわよ」
「フン……なんだもう終わりよ」
(お前が言うかよ……結構疲れてるのに)
「六真様!?大丈夫です!今治療します!!」
「あ、ありがとう」
か細い声でサイタイスから出てきた天ちゃんにお礼を言う。
天ちゃんは、この特訓では治療専門についてくれている。
だが天ちゃんは、悲しく涙を瞳に浮かべていた。本当に心配する真っ直ぐな気持ちが伝わる。
そんな悲しい表情しないでよ。大丈夫だからさ。
天ちゃんの美しい手に触れ、優しく自分は大丈夫なんだと握る。
「六真様……うぅこんなのあまりにも酷すぎます……」
「それでもコイツが生き残るためだ」
ラバキは冷酷な顔をする。多分、僕のために厳しい態度をとってるんだろう。
「それでも!」
「じゃあ甘くしてどうする。コイツが呆気なく死んだなんて、オレはそんな後悔したくねぇ」
「ッ……」
仲間の二人がお互いの考えの違いがぶつかり、険悪なムードが流れる。
「天ちゃん、僕は大丈夫だからさ。そんなに怒らないでよ」
「六真様……」
「ラバキもそんなに冷たくするなよ」
「六真……」
鬼と天使は互いの矛を収め、場を落ち着かせる。
「それじゃ僕は眠るから時間になったら起こしーー」
スゥーースゥーーと寝息をたて、眠りにつく六真。
六真の傷を癒やし終え、天ちゃんは自分の膝を枕代わりにする。少しでも負担を減らせるために。
「治療できましたが、これ以上無理させるつもりでしたら……」
本来、穏やかな天使が敵意を剥き出し、ラバキを睨む。
「それでもやるしかねぇだろ。お前も薄々は分かってんだろ」
「……」
天ちゃん自身も分かっている。このままでは遠くない未来で六真の命が無くなってしまうことに、だけど自分の恩人が傷つく姿を見たくはなかった。
「それじゃ頼んだぜ。天使様」
「はい……」
そうしてラバキは二人を残し、場所を離れた。
それから十分もの時間が流れた。
「それじゃあいくわよ……六真君!」
「イクゾォォ六真ぁぁ!」
「こい!!」
まずはラバキが突撃し、顔面を殴りかかろうとする。
「この!もうやられねぇぞ!!」
今の自分では腕を掴むのもやっとであり、引っ張って横にいなす。
「ホゥやるな。だがな」
「油断しちゃ駄目よ」
穂野江さんがいることも分かっている。同じ轍は踏まないぞ!
魔弾がこっちに近づいてくる。僕は回避しようとするがさっきので足が動かない。
「避けられない!?ならぁ!」
魔力を弾いてやる!
「駄目!触ったら!!」
普通の人間が魔力を込めた球に触れれば、爆発して大怪我をしてしまう。
六真は魔力を見ることができても【魔力を無効化】することは不可能である。
穂野江は自ら放った魔弾を解呪しようとしたが間に合わなかった。
「オリャァァァァ!!」
ハンマーの容量で手の甲を振るい、魔弾を弾いてみせる。
お、重い、だけど……やるしかないんだぁぁ!
ググッと腰を踏ん張り、足をズラし、魔弾の角度を変え、上空に打ち上げ、花火のようにバチバチと音が鳴った。
「へへ……出来だぜ……」
「おっと、隙あり!」
少しぐらい喜びに浸りたかったけど忘れてねぇよ。ーーラバキ
ラバキの右ストレートがもうあと数mmまで近づいたが、僕は無駄のない力で受け止めた。
「なっ!?」
「嘘でしょ?」
二人は驚いてるけど、そんなに凄かったのか?
ま、いっか。
「それじゃその感覚を忘れない内に続けるよ」
「へっ?今日は終わりじゃ」
「オイオイ、いつ【終わり】だって言ったか」
僕はムンクの叫びの顔になる。
ボキボキと指を鳴らすラバキ、そして何百球の魔弾をヒュンヒュンと回転をかけている穂野江さん。
「ウソダァァァ!!」
そうして深夜十二時まてま休みなく、地獄がつづいたのであった。
どうも〜作者の蒼井です!
ドンドンと春が近づいてますがまだまだ寒さが続いています。
読者の皆様は風邪を引かないよう注意してくださいね!
それではお逢いしましょ〜う(^O^)/




