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第二十九話 天使様とのデート

 期限一週間の鬼討伐の依頼をこなし、被害を受けた人物・建物の書類(始末書)を片付けた。


 「ハァーーやっと……終わっ……た」


 「六間君。お疲れ様」


 一体いくつもの書類と格闘していただろう。


 難しい文章の羅列、状況の詳しい説明を書き、間違いがないか何度も目を通した。


 ミスがあれば僕は天を仰いでいた。


 テーブルには、数百、千……いやここで数えてくると気持ちがげんなりしてしまう。


 「それじゃあ私は、本部に書類を提出してくるから。貴方はしばらく休みなさい」


 「ハイ……お願いします」


 穂野江さんは、僕が書いた書類をテキパキと分別し集めて本部とやらに向かった。


 「よぉお疲れさん。オレの代わりに片付けてくれてよ」


 ケラケラとディスプレイ越しで笑いながら、反省してるのか怪しい今回の主犯……アバキである。


 (こ、この野郎……)


 怒りで拳が硬くなり、コイツの顔面を殴りたかったがそれはできそうもない。


 そうだ。こんなときは深呼吸して落ち着こう……気にしない気にしない!


 スゥーーハァーー


 そういえば、今何時なのかチラッと時計を見ると針は二時二十分を指していた。


 「もうこんな時間か。寝よう……」


 フラフラとした足取りで立とうしたら、ピロンピロンとサイタイスが反応する。


 「なんだ?こんな時間に」


 サイタイスを操作すると穂野江さんからメールが届いていた。


 『六真君、今日はゆっくり休みなさい。明日は学校だけど特別に午前だけ授業を受けて帰りなさい。後、真面目にしなさいよ』


 「……とりあえずわかりました」


 返事を返そうとするが瞼が重く、体もなんとなく怠い。


 階段をトン……トン……とゆっくり上がる。


 部屋に入り、ベッドに身体を寝かせるとすぐに僕は寝てしまった。


 ピピーーピピーー


 「う、うーーん」


 カーテンから朝の陽差しがチラチラと目に入ってくる。


 そして目覚まし時計はドンドン音が高く鳴りだし、イライラしてくる。


 ガチャンーー


 乱暴にスイッチを切り、目をゴシゴシしながら時間を確認する。


 午前八時三十分。


 ん?おかしいな……夢かな??


 グイッと頬をつねり、頭で考える。


 「もう一度見てみよう」


 時計をシッカリと見ても八時三十分。


 「遅刻だぁぁぁぁ!!!!」


 僕は急いで学校の支度を整え、全力疾走で向かったのである。


 叶海学園に着いたが午前九時十分、遅刻である。ーー僕は職務室で担任の田辺先生に説教されていた。


 「先生……遅刻してしまいすいませんでした」


 「ハァ大体の事情は知っているが遅刻しても良いことではないぞ。六真」


 「ハイ、その通りです」


 「まぁ良い、二つ目の依頼はご苦労だった。私が先生方に話をしてあるから授業に向かえ」


 「ありがとうございます。それでは失礼しました」


 椅子から立ち上がり、職務室から出ようとするが。


 「そうだ。六真、午後から早退するんだろ。私に伝えて帰るんだぞ。後、遅刻するなよ」


 「わかりました」


 そうして話を終わらせ、退屈な授業が始まるのであった。


 ーーそうして昼休み。


 「お〜い六真。お前、一週間以上も休んでたけど大丈夫だったのか!?」



 僕にとって数少ない友人、陣は心配そうにしながら声をかけてきた。


 「あぁ大丈夫だよ。心配かけてゴメン」


 「なら良いけどよ。連絡ぐらい寄越せよな」


 そういえばとスマホを確認すると五十件ものメールと電話の履歴が残っていた。


 あの時は神様との修行・鬼との闘いで連絡するのをすっかり忘れていた。


 心配させてしまった事に僕は、しっかりと連絡だけでもしようと心に刻んだ。


 ゴソゴソと帰り支度をする。


 「ん?六真、今日は早退するのか」


 「まぁ用事があってさ」


 「そうか……じゃあまた明日な」


 陣と話し終え、迷惑をかけた先生方に謝りにいき、田辺先生に早退することを伝えて学校をでた。


 ノンビリ、ボンヤリと家に帰って歩いていくとピコン、ピコンとサイタイスが反応している。


 「六真様、申し訳ありません。少しお話をしても良いですか?」


 「あれ天ちゃん。どうしたの?」


 急に話しかけられたので真剣な顔をする。もしかしたら大事なことかもしれない。


 「私……人間界について知りたいのです。六真様、案内してくれませんか?」


 「へ?」


 重大な事かもしれなかったけど拍子抜けした。でも確かに彼女はここで人助けしかしていなかったのである。


 人間界を詳しく知りたいのも頷ける。


 「うん。良いよ」


 「ありがとうございます!」


 嬉しそうに満面な笑顔だった。


 でも詳しく人間界を知るにはどうしよう……ショッピングモールとかが良いかな。


 ここから近くに行けるのは駅から三十分かかるが東京と同等である大型ショッピングモール"オーシャンバイ"が良いかも。


 「よし、あそこに行こう」


 そこから駅に行って、電車に乗り、オーシャンバイに向かった。


 「いや〜ここに来るのは毎度、緊張するな……」


 「凄い……これが人間界のショッピングモール」


 いつの間にかサイタイスから召喚されていたのか天ちゃんが神々しく翼をはためかせ現れる。


 「ちょっ!?天ちゃん、ここで出たら!」


 本来だったら路地裏かどこかで召喚しようとしたかった。


 周囲に視られてしまうと思ったが天ちゃんの姿は特殊な人間にしか視えないんだった。


 「六真様々!早く行きましょう!!」


 キラキラと瞳を輝かせ、あっちとこっちに顔を忙しく振っている。


 「ちょっと待ってよぉ〜」


 天ちゃんは新しい物を見た子どもみたいにはしゃぎ、僕の服を力強く引っ張っていく。


 そうして生活用品を買ったり、今回の夕飯の献立を天ちゃんと考えていた。


 「どう?ショッピングモールは」


 「ハイ!すごく良い場所ですね!!」


 「なら良かった」


 「あのぉ六真様、あそこにある建物はなんですか?」


 指差す方向に顔を向けるとそこは男女が寝泊まりするホテルだった。


 「あ、いやそこは気にしなくてイイヨ」


 「えっ?」


 「次の場所に行こうか」


 グイグイとその場所から離れようとする。天ちゃんはまだ純粋だし、もし間違いがあったら堕天使になってしまう。


 僕は冷や汗を流しながら、焦る現場から逃れられた。


 そうして午後五時三十分、夕日が覗き始めた夕方である。


 あれこれ買い過ぎて両手には荷物がいっぱいである。


 「よし天ちゃ〜ん。そろそろ帰るよ」


 「……」


 「天ちゃん?」


 天ちゃんはどこかを見つめている。そこには女性物の服を扱う店だった。


 それを覗くとショーケースに入っている夏に似合う白のワンピース、麦わら帽子、ハイヒールを履いた人形を見ているようだった。


 「ハッすみません六真様。そうですね帰りましょう」


 天ちゃんは名残り惜しそうにその飾られた服を見ないようその場から離れていった。


 もしかしてあれが欲しいのかな?


 でも天使として欲に溺れてしまう事は駄目であると教えられてきたから理性が働いたのかな。


 一応……値段を見てみると三つ合わせて二万四千円……。


 ブッと吐き出しそうになるが我慢する。


 二万四千円……学生としては手には出せない代物である。


 だけど買ってあげたい。


 財布と葛藤が混じり合い、頭が痛くなる。


 生活費とか電気代とか諸々考えている。それでも……。


 「ゔぅぅん……だぁーー考えるのは終わり!買おう!!」


 そうだ。悩むより買って後悔しよう!そのほうが心に凝りが無い。


 そうして高いお買い物(代償)を支払い、彼女にプレゼントを買った。


 (バイトのシフト……増やさなきゃな……)


 「どうだった?天ちゃん、人間界について学べたかな」


 「はい!凄く勉強になりました。こんなに人が幸せそうに生活していて」


 「そういえば天ちゃんの世界はどうなの?」


 気にはなっていたが天使が生きる世界はどんなのか聞いてはいなかった。


 「そうでしたね。私達、天使が住む世界は自然との調和したところです」


 「し、自然と調和?」


 「はい。このような建物や食べられるお店などは無いのですよ」


 それはなんともサバイバルチックな世界何だな。


 「それでも空気や水が美味しく、果物は一年中沢山の種類があるのですよ」


 「へぇ〜凄い所なんだね」


 そんな会話をしていたがすっかり目的の物を渡すのを忘れるところだった。


 「天ちゃん、これあげるよ」


 「そ、それは……いけません!六真様、こんな高価な物を……!!」


 「良いよ。これはいつも頑張ってる天ちゃんのご褒美だから遠慮なんかしないでよ」


 「ッ……」


 天ちゃんは、僕が差し出した服に手を伸ばすが抵抗感があるのか引っ込めようとする。


 僕はグイッと彼女の手に、買った服装を渡した。


 「ありがとう……ございます……六真様」


 ギュッと僕が買った服を大事に抱きかかえた。


 「六真様。今回は本当にありがとうございました。この服装は大事にします」


 「良いよ……そんなにお礼を言われると照れちゃうよ……」


 駅に向かっている間、歩きながら何度も彼女に感謝の言葉が贈られ、流石に顔が熱くなる。


 ピタッと天ちゃんが歩くのを止める。


 「どうしたの天ちゃん?」


 「六真様、少し目を閉じてくれませんか」


 「えっうん」


 目を閉じるとコツコツと靴音が近づいてくる。


 「ありがとうございます六真様。人間界の勉強をさせて頂き、ましてこんな服を下さって。本当に……」


 耳元に彼女の吐息が当たり、囁かれビクビクと体が震えてくる。


 チュッーー。


 頬に柔らかく暖かい物が当たる。


 「え!?」


 ガバっと目を見開くと彼女は、優しくはにかみながら頬が紅く染まっていた。


 「それでは!」と急いでサイタイスに戻っていく天ちゃん。


 僕は固まったまましばらく、呆然と暁を眺めていた。


 そうして二人は幸せな時間を過ごせたのであった。


 ーーこんな時間が続ければ良いなぁと密かに願った六真正士だった。

どうも〜作者の蒼井です!

読者の皆様、お久しぶりです!!

投稿するのに大変お待たせしました。

不定期ですが読者様には読んで頂きありがとうございます。

これからも気長にしてお待ちしていただけたら幸いです。

それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/

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