第1.5話 兆し
「彼は……眠ったようね」
穂野江は、スマホを取り出し電話する。
「もしもし、死体の処理を頼めるかしら。後、怪我人の搬送先も手配しておいて」
穂野江は粛々と現状を伝えていく。
その中で、餓鬼の死体の山で密かに獲物を喰らおうとする一匹がいた。
「グギュゥゥゥーー」
難を逃れたのか、はたまた運が良かったのか。
餓鬼は、狙いを定め獲物が油断するのを待っている。
餓鬼の血が辺りに漂っているおかげか生きている存在を隠している。
餓鬼は、仲間の死体を掻き分けドンドンと近づいていく。
ニタニタと嗤い、早く血肉をしゃぶり尽くし今ある欲求を満たす事だけを考える。
やがてほんの一メートル付近に近づき、獲物を見据える。
やがて女の匂いを感じ取ったのか早くその豊満な肉を犯し、最後には跡形もなく喰らう……そんなゲスな考えが沸く。
餓鬼は、妖しく光る爪を突きたて無謀の突撃する準備をする。
「クキャグギャャャャ!!!!」
完全に不意をついたと餓鬼は、確信をつき跳びかかる。
「しまった!?生き残りがいたの!!」
なぜ穂野江が気がつかなかったのは理由がある。それは辺りに充満する餓鬼の血生臭い匂いの性で判断が鈍っていたのである。
本来だったらここで穂野江は、終わりだった。
そのはずだったが運命の歯車が壊れだす。
「オイオイ……こいつを喰うつもりか」
「あ、貴方は一体!?」
穂野江は、内心恐怖に彩られそうになるが意地でかき消す。
ソイツからは、身をも凍らせる邪気を放っていた。
餓鬼の顔面を鷲掴みにしている。
「まぁ、待てよ。こっちが片付いたら話すからよ」
ゆっくりとこっちに振り返ってくるソイツの正体は意識が途絶えていた彼だった。
「グギァァァァ!!」
餓鬼は、驚いていた。
これで終わったと思っていた現状を変えやがった。
忌々しく思いまずは、コイツから喰ってやろうとたかをくくっていた。
だがそれが間違いだった。
餓鬼は、全身から汗が大量に吹き出す。
ソイツからは、底が知れない邪気を感じたからだ。
その邪気の量は、まるで自分よりも遥かに危険だと本能が刺激し、溢れでている。
餓鬼は、顔を掴んでいる腕を殴る引っ掻くをして引き離そうとするが爪は簡単にボロボロに崩れる。
まるでガラスが指先で突っついて壊れるぐらいに。
「グギァァァァ!グギャ、グギャャ!!」
指から血が流れていても、どんなに腕がへし折れても抵抗を辞めない。
「オイオイ、あんなに余裕そうな顔をしてこっちを追いかけたくせに自分がピンチになるとそんなに慌てやがって」
「まぁ良いか……ここでお前は死ぬ。手をだしちゃあいけねぇのを襲うとしたからな」
腕から血管が浮き出し、餓鬼の顔は、ゴキッゴキッと骨が軋む音が鳴る。
「く、クキャぁーー」
餓鬼は、顔面から大量の血が地面にポタポタと流し、乱雑に死体を放り投げる。
「良い叫びだったぜ。あ~ん……」
ソイツは、餓鬼の血がついた腕を美味しそうに醜悪の笑みをしながら飲んでいく。
穂野江は、その現状に絶句しながらも警戒体勢を整える。
「あ、貴方は何者なの!!」
怒気を発しながら首元にレイピアを突きつけたがソイツは、油断せずのうのうと答える。
「おっと……驚かせて悪いな。この身体の主には傷をつけないでくれや」
「俺は、まだ名乗れないがまぁ必ず会えるからよ」
死体の山に近づき、身体に纏っている邪気が形を成していく。
ソフトボールぐらいの黒炎を掌に浮かせ、ふっと息をかける。
やがて黒炎が死体に燃え移り、一種のバーベキューが出来上がる。
「あぁなんて良い焼ける匂いだ」
ソイツは、うっとりしながら穂野江に向かい合う。
「じゃあ後は、頼んだぜ。穂野江……」
哀しい表情を浮かべ、憑き物がとれたかのように前から倒れた。
穂野江は、カランカランとレイピアを手から落とし膝から崩れる。
「な、何だったの……アイツ」
レイピアを拾い直し、彼の背中に突きつける。
「彼からはあの邪気が全く感じられない。どうゆうこと」
危険人物になりかねないと心臓を貫こうとするが震えが治まらない。
生きている人間をこの手で殺すのだ。
そんな恐怖に呑まれいた彼女は、レイピアを鞘に戻し六真を抱きかかえる。
「まずはもう一回治療しなくちゃね。後のことは組織がやってくれるだろうし」
屋上の扉にゆっくりとした足取りで歩き出す。
辺りは、ゆっくりと静かに太陽が沈み、やがて夜が包み込んでいた。
穂野江夏
好きなもの・味噌汁
嫌いなもの・納豆
主人公を助けたヒロインある。物腰は柔らかく優しく穏やかな雰囲気だが怒ると般若がでるとかでないとか……




