第二十二話 朝鍛錬
朝、目がぱっちりと覚める。
「ふぁぁぁぁ」
寝ぼけながら時計をチェックすると午前二時。
「よし、行くかぁ〜」
重い身体を起こし、洗面台にいく。
ジャーーと水を吹き出し、顔に洗う。
冷たい水で顔を整える。
タオルでゴシゴシと拭いて、歯磨きを済ませる。
ヨレヨレっとおぼつきながら服を脱ぎ捨て、学園指定のジャージに着替える。
ゆっくりと玄関を開ける。穂野江さんが起きないようにだ。
何故、穂野江さんがウチにいるのかは、ここで居候することになったからだ。
「貴方の家でこれからお世話になるからね」
手には荷物が沢山あり、これを一人で運んできたのかと驚く。
その荷物は成人男性が四人が居なくては運ぶことが無理な程だった。
「え!?」
突然の事で驚いたがまぁとすんなりと受け入れてしまった僕である。
男女二人が家にいるのはこのご時世的には多分だめだろう。だけど彼女はウチに泊まるのは確定事項だった。
というか拒否権はありませんでした……。
「そ〜っと、そ〜っと……」
彼女は一階の和室で寝ている。僕は二階の階段真正面の部屋である。
カチャッと戸が締まり、僕は背を伸ばしガチガチに凝り固まった腰をポキポキ鳴らす。
まだ外は薄い青だったがまだ暗かった。
ブルッと身震いする寒さで両手で体を擦り、暖をとろうとする。
とりあえず学園に行く前に【鍛錬】をしようとおもったからだ。
この前、タケミナカタさんの修業が終わった時に穂野江さんから『鍛錬を怠らないようにすれば貴方の実力はきっとつくわ』と言われた。
そう僕の身体はあの時、筋骨隆々の細マッチョな感じだったあれは元に戻ってしまったのである。
ガックリしたがそれでも土台としての骨組みはしっかりとしてる。
その感覚は、しっかりと身についている。
それを殺すも生かすも自分次第だが、そんな時間なんてない。
僕は生かす為に今、このトレーニングをする!
多分今も他の新人隊員が一歩ずつ先に進んでいる。
それに遅れないためにも近づくために今日から始める。
そんな心意気を空に向かい、誓う。
今日から毎日、自分で出来る範囲の基礎トレーニングをやってみようと決意したのである。
まずは自分の家から二km、歩いてから慣らすランニングを始める。
一周を歩いてから二周目になって走り出す。
三周目から苦しい、辛い、辞めたいの三重苦が心から湧き出してくる。
そんな事はどうでもいい!!
僕は他の隊員達にずっと今も遅れている。あの悪魔に対抗するためにも今を走り抜けなきゃいけないんだ!
そんな三重苦の雑念を振り払い加速する。いやむしろ集中力が高まっていく。
ふぅ、ふぅと息を吸って吐いての繰り返しを続けていく。
「気持ちよくなってきたーー」
六真には一種のランナーズハイでみたいな擬似的な感情が湧き出る。
心地よい汗を流し、自分を忘れて駆け抜ける気持ち。
そうして何周目か走り抜けたのか忘れるぐらいのめり込んだ。
「ハァーーハァーーーー」
心臓がドクンドクンとうるさく体全体に高鳴り、耳が遠くなる。
落ち着かせるためにゆっくりと……ゆっくりと歩いていく。
サイタイスで時間をを見ると五時二十分。
そろそろ主婦が起きて弁当を作り出す時間でもある。
時間を気にして、最後の仕上げに何処か公園を探す。
すると近くに公園があったのでそこに向かう。
迷惑にならないよう小さい声で気合を入れる。
「はぁ……!ふぅーー」
人が手入れされてないのか雑草がどこもかしこも生えており、鉄棒はサビが付いていた。
ブランコは、キィキィと低音を悲しく響かせ風に煽られていた。
スベリ台には土やホコリが付着して、汚かった。
だがベンチには一人、男が雑魚寝しながらいびきをかいていた。
「グォーグォー」
空き缶が二、三本転がっている。しかも酒の空き缶。
酔っぱらいがここで眠りについたのが容易に想像できる。
「……」
起こさないようにコッソリと準備運動を始める。
手・足首を回して、膝を折り曲げる。
そうして腕が弧を描くように回す。どっかの野球選手がオススメしていたのを試す。
腰を痛めないようにグッと後ろに前にと反らしたりする。
まぁ一般的な誰でも教わり、知っている準備体操でもある。
筋肉をほぐし、心の緊張をなくす。
「よし……やるかぁ」
そう言い僕は、あの時の修行とは違うやり方をする。
まずはイメージで大木を創り出し、脚・拳を三十回の5セットの突きをする。
シューーシューーと風を切るような突きを繰り出す。
「ハッ!ハッ!!」
自己流で格闘家のプロが見たら、『甘い』と思うだろう。
それでも続けていく。
そのセットを終わらせ、鉄棒を掴む。
バランスを取り、ズレが生じないようグッグッと腕を曲げたり戻したりする腕立て伏せをする。
最初こそあたふたして落っこちたり、バランスを保つだけで精一杯だったが慣れてきた。
これがあの修行の成果でもあるのか。
「あれは無駄じゃ……なかっ……た!!」
十回もしてようやく五分の休憩に入る。
「ハァハァーーきちぃ」
腕はプルプルして脚はがくがく。
でもこれは成長している証。
そうして大の字で寝て、空を見上げていた。
休憩が終わり、最後にあの技に挑む。
【一点鐘】
夢の中で出逢った、【シュラ】という人物から教わった技。あの時は本当にひどかった。
自分が何度も殺され、その亡き骸が積み上がっていくあの風景……。
今でも思い出そうとすると憂鬱になるが忘れようとする。
だけどあの人?が言っていた言葉が気になる。
どうして自分に【死】を乗り越えさせようとしたのかビビリの気持ちをねじ込んだのか。
そう考えるがこれ以上耽ってもなにも変わらないし、分からない。
切り替えて一点鐘の技を物にしようと練習する。
「確か……こうだったよな?」
正拳突きの容量で深く腰を落とし、膝を曲げ、腕を脇腹まで引く。
想像で己の壁を造り、構える。
「ハァァァァァ!!」
腕に回転をかけ、壁に触れるが割れなかった。
「うぅん?違うなぁ」
なんか……違う。
やり方は合ってるはずなのにしっくりと型にハマらない。
拳を放ってもあの勢いの無さが足りない。
う〜ん、う〜んと頭を抱えて悩んでいると。
「悩む前にもう一回やってみるか」
そう何度もやるがやっぱりあの感覚ではない。
「握り方がなっちゃいねぇなぁ……ファァ」
「えっ……?」
するとベンチで寝ていたアンちゃんが急に欠伸をしながら助言する。
やれやれとした表情でこっちに近づき、僕の手を取る。
「まず小指から順に折ってく。親指は拳の中じゃなく外に出せ」
「あの……なんで急に教えて?」
「まぁ良いからよ。後は爪が肉に食い込まないように気をつけろ」
「ㇵ、ハイ」
なぜかしら酔っぱらいのアンちゃんとの指導が加わった。
「もっと相手を貫くイメージで!!」
「ハイ!!」
「オラ!腕がブレてきてるし、脚もふらついてるぞ。もうやめるか?」
「やめません!もう一度!!」
そうしたスパルタ指導が始まって二時間。
「よし、それじゃあお前がやっていた技……やってみろ」
「……」
無言で頷き、構えをとる。
目の前には、鉄以上よりも硬い壁。
そう己の壁だ!
(一点鐘!!)
心の中で叫び、回転した弾丸のように拳が唸りを上げる。
壁に当たり、ヒビが入る。
するとあの感覚が掴めた気がする。
嬉しさと高揚感で自信がついた。
振り返り、あのアンちゃんに感謝のお礼を言う。
「あ、ありがとうございます!!」
だがそこにはもうアンちゃんはいなかった。
酒の空き缶を持って手を振りながらどこかに歩きだしていった。
僕は深々と頭を下げた。
アンちゃんがいなくなってからも僕は一点鐘のコツを忘れないよう何度も身体と頭に叩き込み、刻み込んだ。
そういえばと思い出す。
どうしてあれが技だと解かったのか不思議に思ったがあの人は何かしらの格闘技をしているのかと思った。
そうしてサイタイスで時間を確認すると七時三十分。
「ヤバい!!そろそろ帰らなきゃ」
爽快な汗を流し、技の習得に一歩近づいた六真は全力疾走で汗を拭き、水分補給を済ませて家に向かった。
一方、六真に教えていたアンちゃんはというと。
「あの坊主……良いもんみれたぜ……」
ククッと笑い人の姿を変え、紅き肌・額に二本のツノが生えた。
「アイツは強くなる……俺と対等に戦(殺り合える)ができる!!」
そう己と対等に戦(殺り合える)をしてくれるヒトに巡り会えた事に喜びを覚えていた。
どうも〜作者の蒼井です!
いやぁ~大変お待たせしました読者の皆様(^o^)
実は私、少しだけ体調を崩して執筆ができずにいました。
今はだいぶ良くなりこうして投稿することができましたよぉ〜(´・ω・`)
話は変わりますが読者の皆さんはクリスマスどうでしたか。楽しめたでしょうか?
もう少しで今年は終わります。やり残しが無いようにしましょう!!
それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/




