第十八話 連絡
一方、早朝かろ六真の家を出た穂野江。
数時間も歩き、またあの事務所についた。
コン、ココン、コンとまた暗号のようにノックする。
ガチャッとドアが開き、中に入っていく。
事務所の中には、ビシッとスーツを着込んだ葉柄さんがいた。
「お待ちしてました。あの会議室にいきましょう」
「ハイ、葉柄さん」
二人は、二階に上がり会議室に入る。
「それで……どうでしたか。彼の実力は」
「えぇ、問題はないのですが……」
穂野江は言葉を濁し、喉が詰まる。
「やはり、あの【力】ですね」
「そうです。あの【力】はまるで……」
政府がこの秘密組織DDOを創設して間もない頃だった。
魔人……
人が邪気に侵蝕され、本来なら狂気に染まり心を壊してしまい常人では耐えられず死んでしまう。
だがその邪気に適合し、人間として終わりを告げ、悪魔としての力をもつヒトになる。
しかし魔人となった者は、残虐な心を持ち、全てを殺し尽くすまで暴れる。
逆のパターンもある。
その力に溺れ、死んでしまうケースもあるのだ。
その姿になった者はまるで人の理性の壁を崩し、己の加虐心、己の本能をさらけ出すように。
その魔人を産み出したしまった研究機関があった。
人間と悪魔を産み出し、新たなヒトを造り出すことを提案した科学者がいた。
当然却下されたが独断で研究をし、魔人を誕生させてしまった。
政府は早急に対処し、その科学者とその魔人は処分された。
しかしその被害はあまりにも悲惨だった。
隊員千四百、一般市民二十万も死亡する結果だった。
「もし……あれがまたあの時みたいに起きたら……」
「……」
穂野江は顔を強張らせ、冷や汗をかく。
だが葉柄は冷静に思考を巡らせる。
どうして彼は、その力を手に入れたのだろうか。
彼の情報、【六真正士】としての人物の情報があまりにも少なかったのだ。
できる範囲で調べても出てこなかったのだ。
両親の名前、どこで育ち、いつ学園に入学したのかも一切不明だった。
しかもヒトとして、持ってはならない力があり、なんにしろ彼には違う人格が宿っている。
あまりにも情報が足りなさ過ぎる、あの場所に行くかと悩む。
「……」
「葉柄さん、どうしますか?」
「とりあえずは監視を続けてください。上層部もまだ判断を下すのに手をこまねいています」
「わかりました。それと彼のデータも送っておきます」
サイタイスを操作する。それは修行をしていた六真の身体能力のパラメータ・魔力の有無などを送る。
サイタイスには最高峰のAIによる、厳正された能力は誤差もなくパラメータを表示され、さらにはその修業を録画した映像で判別していた。
穂野江は、コッソリとデータを取っていたのである。
葉柄は、そのデータをしっかりと受け取る。
「確かに受け取りました。それではこの三つの依頼を彼に渡してください」
穂野江はその依頼に目を通す。
一つは迷える天使の捜索
二つは裏通りの鬼の討伐
最後は敵対組織に属している魔道士に捕獲だった。
「一つと二つの依頼はわかりました……ですがまだ、魔道士との戦闘経験は彼にはありません。あまりにも酷じゃありませんか!?」
まるで確実に不合格にするため政府が画策しているように。
政府として不安要素は削除したいという意志を感じる。
魔道士との戦闘は、魔力がない人間はあまりにも非力である。
「私も努力はしましたがこれが限界でした……」
握り拳をしながら身体を震わせていた。
「優秀な穂野江さんならできますよ。それでは任せました」
「私はそんな優秀じゃありませんよ……」とボソッと呟く。
そこから葉柄と穂野江は、互いに敬礼し、お互いの職務に就いていくのであった。
どうも〜作者の蒼井です!
雪が振り始めましたねぇ〜⛄
雪かきが始まり、私の身体はボロボロダァになりそうですがなんとか読者の皆様も乗り越えましょう!!
それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/




