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第一話 接敵

 午後の夕方、もう全校の生徒が下校している時間帯に一人だけ机に突っ伏して寝ていた。


 六真正士ろくましょうじ、叶海学園に通う高校二年生である。


 そんな六真は、毎日を漠然と過ごし将来に不安な気持ちが募っていた。


 授業で寝ていた六真は、友人に起こされていた。


 「おぉぉい、六真起きろーー」


 「うぅん……」


 六真は、重い瞼を動かし体を起こした。


 「おはよう。才場、あれ……みんなは?」


 友人の名前は、才場陣さいばじん、六真にとっては数少ない大事な友人である。


 彼は、人当たりが良く誰に対しても優しいがあまり自分の意見を主張しないのが傷である。


 「もうクラスメートは帰ったよ。それよりお前、うなされてたけど大丈夫か?」


 「おう。大丈夫だよ」


 僕は、元気満点な顔をして、大丈夫だよという表情をした。


 才場は、安心したのか暗い顔をしなくなった。


 「それよりお前どうすんだ。一緒に帰るか?」


 才場は、荷物を整理しながらどうするのかと聞いてきたが僕は、一人で帰るよと伝えた。


 「そうか……じゃあまた明日な」


 「おう、また明日」


 才場は、教室から出ていった。


 「よし……帰る支度するか」


 僕は、帰る準備をしながら教室の戸締まりを確認して教室からでた。


 廊下に出て歩いていたら、担任の田辺明美たなべあけみがいた。


 田辺先生は、こちらに気づいて向かってくる。


 なんだか面倒事に巻き込まれそうな気がするが諦めて話を聴く。


 「よぉーー六真、ちょっと頼みたい事があるんだが」


 「えぇと……何でしょうか」


 両手には、ダンボールを抱えており運ばれそうな気がする。


 「これを一階にある物置教室に置いてきてくれ」


 「あの〜〜先生……僕、今からカエルンデスケド」


 「じゃあ頼んだぞーー」


 田辺先生は、使わなくなった教材が入っているダンボールを無理やり押し付けた。


 僕は、溜息をつきながら一階の物置教室に向かった。


 一階に降りて、ほんの数分歩くと十字路の廊下に差し掛かった時に、いきなり出会い頭に誰かとぶつかる。


 「きゃっ!!」


 「うわっ!?」


 互いに激突し、持っていたダンボールが転げ落ち、尻もちをつく。


 「イテテ、大丈夫かい?」


 ぶつかった相手を見ようと下から視線を動かしたら、そこには、銀髪のロングヘアで左に紅と右にシルバーのオッドアイの女子だった。


 「貴方こそ、大丈夫?」


 僕は、ゆっくりと視線を見上げると彼女に見惚れてしまって固まっていた。


 サラサラの髪が夕焼けに照らされ眩く輝き、瞳は万人を魅了するような感じだった。


 彼女は、ゆっくりと起き上がりパンパンと両手で埃を振り払う。


 「どうしたの?」


 彼女の顔が近づき、ぼーーとしていた頭を現実に戻す。


 「あ、あぁ……大丈夫だよ」


 顔が赤くなっているのを隠して彼女に無事なことをつたえる。


 「そう、良かった。それじゃあ私は行くところがあるから、じゃあね」


 彼女は、急ぎ足になりながら去っていった。


 「綺麗だったなぁぁ」


 立ち去って行く彼女の背中を見つめて上の空になりかけたが本来の目的を思い出す。


 ダンボールを持ち、再度、物置教室に向かっていった。


 物置教室に着き扉を開けると床に赤黒い点々とした何かが付着していた。


 「なんだろう……これ?」


 僕は、赤黒い何かを印している正体が気になり、ドンドン奥に引きずられていた。


 心臓は、嫌に速く鼓動を繰り返し、背中から汗がスゥゥと垂れていく。


 固くなっている唾を呑み込め、むせ返りそうになるが足音をださずにその場所に近づく。


 ーークチャクチャ


 ドンドンと近づいていくと咀嚼音が聴こえてくる。


 ーージュル……ジュルル


 そして水を啜る音も聴こえる。


 なんだかそれは、何かを必死に喰らい啜っている飢餓に飢え過ぎているような感じだった。


 僕は、恐る恐る使わなくなった物が重なっている棚を背にし、覗いて行く。


 そいつは、青黒く腹はでっぷりと太っていて恐ろしく一心不乱に喰らっていた。


 その喰らっていたものは……"人間"だ。


 人間の死体を美味しそうにそいつは、ニターーと口元を歪ませていた。


 涎をダラダラと垂れ流し、バキバキと人間の骨を噛み砕いていた。


 「ひぇ!?」


 僕は、喉の奥から叫びそうになる口を両手で覆ったがそいつは気づいた。


 「ぐぎゃぎゃ?」


 ピタピタと足音を響かせ、心臓が飛び上がりそうになるのを我慢する。


 僕は、『来るな来るな』と念じていたがそれは、儚い想いだった。


 「ぐぎゃゃゃゃゃゃゃ!!!!」


 そいつは、こっちに気づき、妖しく光る爪を掻き立て飛びかかり襲いかかってきた。


 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 上半身を全力で曲げ、攻撃を回避したが指に細かい傷口ができてしまった。


 物置教室は、薄暗くソイツの顔はぼんやりとして見えなかったがハッキリと視えた。


 ソイツは、小さな小鬼だった。


 小鬼は、勢いをつけすぎたのか棚に激突し、上に置いてあったダンボールが落下し、下敷きになった。


 僕は、隙ができたのを良いことに物置教室にあった木の棒を掴み廊下に駆け込む。


 ドアに木の棒を引っ掛け時間稼ぎを試みた。


 「どうしよう……どうしよう……」


 焦る気持ちが邪魔をして考える頭を失わせる。


 「と、とりあえず1年生の教室に行こう!」


 全力疾走で一年生の教室に向かって行く。


 何度も足がよろつき転びそうになるがなんとか教室に着き入っていく。


 じっくりと周囲をみて隠れる場所を探し出す。


 隠れられる場所は、三つ……一つは、教卓の下。


 もう二つ目はロッカーの中に入る。最後はカーテンで身を隠す。


 これは、死の鬼ごっこだ。しかも本物の。


 見つかれば即刻小鬼に喰われてのデッドエンドだ。


 まず教卓の下は、足が視えてしまう可能性があるから却下するがカーテンはもっての外で一番バレてしまう。


 ならロッカーだがそうすると見つけれた場合、逃げれなくなってしまい、あっさりと殺されてしまう。


 ない頭を必死に絞り出すがあっと閃く。


 今いる場所は、一階つまり窓からすぐに出られる。


 「ヨシッ急いで窓を開けるぞ!」


 窓の鍵をアンロックして、右にスライドさせるが硬く閉ざされている。


 「そ……そんな……」


 力強く乱暴に開けようとしてもビクともしなかった。


 近くにある椅子を持ち上げ窓に叩きつける強行手段をとる。


 「オラァァァァ!!!!」


 勢いよく振り上げられた椅子は、窓に当たったは良いが粉々に砕け散った。


 「なんでだよ!なんでだよぉぉ!」


 僕は、学校によくわからない現象が巻き起こっているのか窓の反射で自分の顔が絶望に染っていく。


 ピターーピターー


 裸足の足音が辺りに響く。


 アイツだ。


 時間稼ぎをしていた扉をぶち破ってこっちに来たのだろう。


 脳裏に小鬼の赤く染まった血の嗤い顔が鮮明に思いだし、恐怖に呑まれそうになりそうだった。


 「クソっ!喰われてたまるかよ!!」


 血迷ったのかヤケを起こして小鬼に対抗する。


 掃除ロッカーをガチャンと音を鳴らし、ほうきを取り出す。


 (ここで返り討ちにしてやる!!)


 扉の真正面に立ち、ほうきを構える。


 「クキャアァァァ」


 小鬼は、獲物を追い詰めたのか気味が悪い裏声を発しながら近づく。


 小鬼は、僕が潜んでいる場所が判っているのかドンドンと叩き扉を壊そうとする。


 やがて扉は、バーンと音を出し、地面に崩れ落ちた。


 ニタニタしながら入ってきた子鬼を、僕はなりふり構わずに、ほうきを振り上げる。


 「くらえぇぇぇぇ!!」


 ほうきは、見事に小鬼の頭に直撃したがバキッと音を鳴らし真っ二つに折れてしまった。


 「う、嘘だろ……」


 「グギャァァァァ!!!!!!」


 小鬼は、忌々しく思ったのか憤怒の顔を滲ませ襲ってきた。


 僕は、両手でガードしたが深く肉を抉られ、腕から大量に出血する。


 体を反転させ、逃げようする。


 「今は、逃げるしか無い!」


 生徒玄関に行こうとするが……もしまた謎の力によって開かなかったらどうしようもない。


 僕は、屋上に向かう。


 走っていくと腕の違和感を覚える。


 それは、血がドンドン溢れ出して来るのだ。そしてズキンズキンと痛みが次第に強くなる。


 しかも血は、変色しているのか黒くなっていて身体がだるくなっていくのを感じる。


 保健室に寄って治療したかったがそんな時間は無かった。


 そんな後悔を頭から振り払い、死ぬ気で階段を登っていく。


 屋上のドアをバーンと開き、周りをみるともう夕焼けは、沈んでいっている。


 夕焼けは、死を予感させているのか弱々しく僕の身体を照らしている。


 「もう……駄目なのかよ……」


 暗いトビラの奥からニタニタと小鬼がゆっくりとこちらに擦り寄ってくる。


 ーーペタペタ


 ーーズリ……ズリ……


 両者は、つかず離れずの攻防を交互に繰り返し、やがて屋上に配置してある後ろのワイヤーネットに背中が当たり、もう逃げる場所が無いと察する。


 小鬼は、六真に飛びかかり、絶対絶命の状況になってしまった。


 六真は、眼を閉じこれが最後かと感じ、諦めかけていた。


 すると、突然空から怒号が響き渡る。


 「ハァァァァァァ!!!!!!!!」


 なんとあの時、ぶつかったオッドアイの美少女が何かを突きたて急降下してくる。


 「クキャア!?」


 小鬼は、驚きを隠せなかったが咄嗟に後ろに飛び退いた。


 (う、嘘だろーー)


 心臓が飛び出る位に声を張り裂けそうになるが驚きに口を閉じていた。


 彼女は、高度十メートルもありそうなところから降下しているが、間違いなく激突するだろう。


 僕は、目をギュッと瞑ったが何も音がしなかった。

 

 恐る恐る目を開けると、そう彼女はなんと音もださずに着地してみせたのである。


 無事に着地し、息も上げずにレイピアを振るいあげる。


 「チッ外したわね」


 彼女は、舌打ちをしたが小鬼に立ちふさがる。


 「貴方はさっきの……そこから動かないでね。私が護るから」


 彼女は、レイピアを真っ直ぐにし、小鬼と対峙する。


 小鬼は、焦っているのか弱々しい声をしていたが空に奇声を轟かせる。


 「クギャャャャャャ!!!!!!」


 「参ったわね……仲間を呼んだみたいね」


 「な、仲間だって!?」


 あんな奴が仲間を呼んでいる。


 そんな事になればただじゃ済まないだろうと走馬灯のようなものがチラッと脳裏によぎったような気がする。


 僕は、頭を下げ項垂れていたが彼女は諦めていなかった。


 「大丈夫!私が貴方を絶対に護るから」


 周りで影になっている場所からドロドロと何かが這いずり出てくる。


 「「「クキャア」」」


 数十……数百体も居そうな小鬼が顔を覗かせ二つの獲物をケタケタと嗤いながら追い詰める。


 彼女は、スゥゥゥと深呼吸する。


 眼をクワッと開かせ気合の入った怒声を響かせ、突撃していく。


 「ハァァァァァ!!」


 コンマ0.1秒の速さで小鬼の命を刈っていく。


 小鬼の鮮血が顔に飛び散り気が遠くなりそうになるがしっかりと目に焼き付ける。


 彼女は、まるで戦乙女ヴァルキューレのように可憐で美しい舞をしていた。


 小鬼は、すっかりと倒され死体の山が積み重なっていた。


 「ク、クキャァ」


 「グ、グギギギギ」


 張本人である子鬼は仲間が一瞬で倒された光景を見て、勝てないと見込んだのか逃げ出そうと影に潜ろうとする。


 だが敵に背を向けた獲物を彼女は、見逃すはずもなく腹に風穴を開けた。


 小鬼は、呆気なくも短い命を終わらせた。


 僕は完全に置いてけぼりになり、何がなんだか分からなかった。


 しばらくぼうっとしていると彼女は、レイピアを鞘に納め、急ぎ足でこっちに向かってくる。


 「君、大丈夫!?」


 「あぁ……うん大丈夫、イテテ……」


 腕から大量の血が流れていたが勢いはますます増していた。


 血は、本来赤くなっているはずだが黒く変色していた。


 「大変!?待ってね。すぐ治すから」


 彼女は、僕の腕に触れブツブツと口から唱えていた。


 「キュアリア……」


 突如、傷口が輝きだしみるみると塞がっていった。


 「す、凄い……君は何者なの?」


 「私は穂野江夏ほのえなつ、この学校から調査を依頼されたの」


 光が無くなり腕の傷は、すっかりと無くなっていた。


 「調査?一体どんな」


 彼女に調査とやらを深く聞こうとしたがハブらかせられてしまったが簡単な事だけを教えくれた。


 「この学校に微かな邪気を感じて、その元を探してたらまさか君が追われてたなんて」


 「あはは……まぁ助けてくれてありがとう」


 照れくさく穂野江に深々と頭を下げ、お礼を言った。


 「いち早く貴方を助けれなくてごめんなさい。よく頑張ったわね」


 「そ、そんなわけ……」


 穂野江は、ギュッとやさしく抱きしめてくれた。


 彼女から甘い香りがして鼻腔をくすぐり、クラっとなってしまうが意識を保とうとする。


 手があたふたするが彼女の肩を掴み名残惜しく体を離す。


 「そ、それでアイツは何だったんだ?」


 「アイツらは餓鬼がき、地獄にいる決して満たす事ができないようにされた人間の成れの果てよ」


 餓鬼だって!?


 内心、驚きに狼狽えそうになる。


 それは伝承でしか聞かない人間が創り出した創作の怪物だからだ。


 それが今、眼の前にいる。


 僕は、体を起こそうとするが上手く力が入らず、ずり落ちる。


 「あら、まだ無理に起きなくて大丈夫よ。まだ体内に邪気が残っているから」


 穂野江は、看護士のような慣れた手つきで座りやすい体勢に変えてくれた。


 「と、とりあえずもう大丈夫なんだよな」


 「えぇ大丈夫よ。この辺りにもう餓鬼は、いないわ」


 僕は、安堵し、そこから意識が朦朧とする。


 「大丈夫……後は、任せてゆっくり眠りなさい」


 穂野江は、柔らかい手で六真の瞼を閉じた。

才場陣さいばじん

好きなもの・レモンティー

嫌いなもの・油がたっぷりのった肉

人当たりがよいが八方美人になるのがきず。人に頼られるのが好きではなく内心イライラしている。

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