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第十二話 準備

 タケミナカタさんから「明日からは最後の試験だ。六真、英気を養うなり、基礎をもう一度取り組むなり、好きにやれ」と言われた。


 六真は短い時間で準備運動する。


 手首・足首などを回しほぐしていく。


 手や足をしっかりと曲げ伸ばしをして、関節を柔軟にする。


 地面に寝そべり背中に手を回し、エビみたいに跳ねるよう上半身、下半身を上下に揺らす。


 そして胸の真ん中に腕を潜らせ、90度になるよう姿勢をキープさせる。


 イメージとすればトドみたいな感じが近い。


 五秒間キープしたら、ゆっくりと息をを出し、元の体勢に戻し、これを繰り返す。


 これは、自己流ではあるがヨガモドキみたいなことをし始める。


 全身の疲れをできるだけ癒やし、全身に圧力をかける。


 そうして準備運動が終わり、昨日のタケミナカタさんとの稽古を思い出す。


 眼を閉じ、仮想敵みたいな感じであのときの構え、攻撃を思い出す。


 一種のシャドーボクシングの目隠しバージョンをやってみた。


 本来瞑想は、あぐらをかいては、いけないのだが集中力を高める。


 そんなことをやって十時間。


 むろん初めてやる事をやってみた訳だがこれでも多分無理だ。


 どんなにやっても勝てる未来が見えない。


 「くそぉ〜あのひとにどうやって勝てばいいんだよ……」


 なにをやっても無駄じゃないかと悲観的になるがそれを振り払い、自分のできることをしてみる。


 「とりあえずはできるだけやってみよう!!」


 弱気な心に活を入れ、鍛錬を再開した。


 かれこれ二時間経過し、小屋に戻ることにした。


 「ただいまぁ〜」


 「あら、お帰りなさい」


 割烹着を着ている穂野江さんを見て僕はドキリと心臓が高鳴る。


 まるで美人な女性が家で自分の帰りを待ってくれている。


 そんなことが現実にあって、夢なんかじゃないかとほっぺを抓る。


 うん、現実だ。


 「どうしたの。ほっぺを急に抓って?」


 首を傾げて、意味不明な行動をした僕に疑問を抱いた穂野江さんだった。


 「いや……気にしないでください」


 「そう?もうすぐできるからもうちょっと待ってね」


 微笑みながらキッチンへと向かっていった。


 忙しなくキッチンで料理を作っている。


 ほのかに美味しそうな香りが鼻腔を刺激し、よだれが出かける。


 話は変わるが今日、穂野江さんに修行をつけてくださいと頼んだがタケミナカタさんに手を貸しては駄目だと言われて出来なかった。


 そんなことを思い出し、時間が過ぎてご飯の時間になった。


 食卓につくと二人分しか、料理がなかった。


 「あれ、タケミナカタさんの分は?」


 「タケミナカタ様は、準備することがあるからご飯はいらないってどこかにいったのよ」


 「ふぅ〜ん……準備かぁ」


 そうだ、明日は試験だ。


 隊員としての力があるかの見極める重大な試験らしい。


 「あまり気弱ず、しっかりと明日は頑張ってね」


 「ハイ!」


 「それじゃあご飯が冷めちゃうし、いただきましょう」


 「「いただきまーす」」


 穂野江さんが作ったのは、鮭の塩焼き、味噌汁、ご飯と家庭的な料理だった。


 まずはご飯を食べると衝撃が走る。


 ちょうど良い塩梅での柔らかさ、モチモチとした食感である。


 鮭の塩焼きは、油が抑え気味で塩が痺れるように電流が流れる。


 味噌汁は、ホッと息を出すような心が温まる気持ちになる。


 「お、美味しい……」


 「フフ、ありがとう」


 彼女が作った料理は、どれもプロと名乗って良いほど美味しかった。


 ご飯を食べ終え、しばらくしてからお風呂に入った。


 だが驚くことにそこには、温泉ができていた。


 穂野江さんがいうには、「タケミナカタ様が自力で掘って見つけたのよ」らしい。


 「す、凄いな神様パワー……」


 髪を洗い、身体についた汚れをお湯で流し、温泉にいざ入る。


 「き、気持ちぃぃ。体に効くなぁ」


 ハァァと心地よい声を漏らした。


 するとガラガラと戸が空いたような気がした。


 (タケミナカタさん、帰ってきたのかな?)


 と思っていたが目を凝らすとそこには、穂野江さんが居た。


 (!?!?!?!?)


 あまりの驚きで声がでなかったのだ。


 体にタオルを巻いてはいるが白のヴェールがかかっていて光が灯りそうな柔肌、髪は月の明かりで一層輝いていた。


 「あっごめんなさい六真君、ここが混浴だって知らなかったわね」


 「こ、混浴〜!!!!」


 突然知らなかった事を宣告され、声を荒げお湯から飛び立てる。


 バジャ〜ンと波が立ち、ユラユラと水面が揺れていた。


 「まぁいいじゃない。そのまま入ってて」


 「いやいや!!僕出ますからどうぞご、ごゆっくり」


 急いでここから立ち去ろうとしたが彼女の視線が勇ましくなり、僕は渋々と残った。


 「失礼するわね」


 「は、ハイ」


 僕は彼女に背中を見せ、前が見えないようにする。


 哀しい男のさがが湯気で見えないが胸に視線がいってしまう。


 「貴方は、本当に良かったのこれで?」


 「えっ?」


 「私の不手際で貴方を巻き込んで、こんな血塗れた道に引き込んでしまって私ね、後悔してるのよ」


 「そんなことを言わないでください。これは、僕が決めた事ですから。穂野江さんが悩まないでください」


 「そう……ありがとう」


 そうして彼女と一緒の時間を過ごし、各々の部屋に戻ったのだ。


 部屋に戻る際穂野江さんにこう言われた。


 「私に興味を持つのは良いけど、バレバレだったわよ」


 どうやら胸に視線がいっていたことは隠せなかった。


 女の子は、こういうのをよく見ているのだと感じとった。


 そうして布団に入り、眠りについた。

どうも〜作者の蒼井です!

読者の皆さんはお元気ですか?

私は、冬の寒さでこたつでぬくぬくと暖まりながらミカンを食べています。

体調に気をつけて、読んでくだされば幸いです。

それではまたお逢いしましょ〜う

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