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フィストナイト  作者: 猫宮 小福
プロローグ
2/3

プロローグ2

 モンスターは俺目掛けて腕を振る。俺はいとも簡単にモンスターに吹き飛ばされコンクリートに思いっきり背中をぶつける。

 ぶつかったコンクリートは、俺が衝突した衝撃でひびが入っている。硬いコンクリートにひびが入るようなパワーで吹き飛ばされたのだから俺は、無事では済まないだろう。殴られた所は骨が折れ、最悪脊髄損傷しているかもしれない。

 しかし、殴られた所はジンジンと痛みはあるものの、骨が折れた時のような激痛はいつまで経ってもやってこない。

 不思議に思い、自分の体を確認する。擦り傷など軽い怪我はしてはいるが、骨は折れていない。

 どういうことだ。別に自分は改造手術を受けて超人的な肉体になった覚えはない。だが、モンスターは俺の心情を知るはずもなく追撃を仕掛けてくる。

 咄嗟に、追撃をかわす。モンスターが攻撃したコンクリートは粉々に砕ける。

 やはりおかしい。コンクリートをいとも簡単に破壊するパワーで殴られたのにも関わらず、俺は擦り傷程度ですんでいる。それに、先程の体当たりもだ。モンスターの方が体格は俺よりも大きく体重も俺の倍もあるだろう。それなのに、数メートル吹き飛んだのだ。

 そして、自分が目の前のモンスターを倒す姿が脳裏に浮かぶ。もしかしたら、出来るかもしれない。俺がモンスターを倒すことが。

 そんなことを、考えるとやる気がどんどん湧いてくる。俺の中の闘志が燃えて抑えられない。

「やってやる。」

そう呟く同時に、モンスターが更に追撃をかけてくる。しかし、闘志が燃えてゾーンに入ったのか、モンスターの動きがゆっくりに見える。

 モンスターの攻撃を回避し、思いっきり顔面に渾身のパンチをくらわせる。

 すると、モンスターは口の中を切ったのか少量の血を吐きながら後方へ吹き飛ぶ。

 やっぱりだ。どこにこんなパワーが自分にあるのか分からないが、今はどうでもいい。とりあえず、自分は目の前のモンスターを倒せるかもしれないということだ。

 俺は、更に追撃をモンスターに加える。思いっきり横っ腹に蹴りをくらわせる。蹴られたモンスターは更に吹き飛ぶ。

 モンスターは俺の蹴りが効いたのかよろよろと立ち上がる。そして、恨みを込めた目で俺を睨んでくる。その迫力に、一瞬びびるがすぐに構え直し俺も睨み返す。

 そうして、お互い睨み合い静寂がこの場を支配する。心臓はいつもより激しく鼓動をうち続ける。緊張で震える体を落ち着かせるために呼吸を整える。

 そして、数秒がたった時、秋の冷たくも心地よい風が吹くと同時にお互い動く。

 モンスターは一気に距離を詰めて、俺の顔目掛けて拳を振り下ろす。俺は後ろに1歩下がることで間一髪かわすも、もう片方の腕で腹を殴られる。

「ぐぅ!」

腹の痛みが全身を駆け回るが、負けじと反撃をする。俺を殴った腕を掴み、コンクリート目掛けてモンスターを投げる。

「オラァ!」

モンスターは、されるがままコンクリートにぶつかる。そして、俺は更なる追撃を加える。モンスターの顔面目掛けて蹴りを加える。蹴りは見事ヒットしたものの、足を掴まれてしまった。

 モンスターは俺にされたことを仕返しするかのように、思いっきりコンクリートに俺を叩きつける。

「かハッ!」

叩きつけられた衝撃で肺にある空気が一気になくなる。呼吸が一瞬止められただけで呼吸のリズムが狂う。空気が無くなった肺が空気を求め一気に空気を吸う。しかし、そのせいで咳き込んでしまう。

 その俺の隙を逃すまいと、モンスターの蹴りが顔面目掛けてくる。対応することが出来ず、コンクリートの壁もろとも破壊し俺は吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた勢いのまま、コンクリートの向こう側の敷地内に入る。受け身も取れず、頭から地面に落ちる。

 立ち上がろうとすると、ダメージがしっかりと入っているからか、よろめいてしまう。鼻血も出始めた。呼吸も乱れている。先程まで闘志を燃やしていた心に、再び恐怖が湧く。

 でも、逃げるわけにはいかない。ここで逃げたら被害が広がるかもしれない。それに―

「それに、逃げるなんて……かっこ悪いだろぉがぁあ!!」

よろける体に喝を入れるように、恐怖が湧いた心を騙すように、大声を張り上げる。

「うぉおおおぉぉおおおお!!」

雄叫びを上げながらモンスターに向かって走り出す。モンスターも負けじと、声を上げながらこちらへ向かってくる。

 拳に力を溜めるように握りしめる。一歩一歩前へ進む足にも力を込める。目の前の敵に恐怖する気持ちもある。今すぐここから逃げ出したい気持ちもある。

 それでも、恐怖を押し殺し目の前の敵に集中する。逃げても敵は何処までも追ってくる。ならば、助かる方法は目の前の敵を足すことのみだ。そう、自分に言い聞かせて走り出す。敵も向かい打つためにこちらへ走り出す。

 そして、敵との間合いが縮まりお互いの拳が届くほど近づくと同時にお互い顔面目掛けて拳を振る。

 お互いの拳はほぼ同時にお互いの顔に到達する。しかし、俺は出した拳を引っ込め、引っ込めた勢いのまま体を回転させ、敵の拳を躱す。回転の勢いのままもう片方の拳で相手の顎を捉える。そして、そのまま拳を振り切ると、敵は軽く宙を舞う。

 宙を舞う敵は隙だらけだ。その隙を逃すわけにはいかない。追撃を加える。

 殴る。殴る。殴る。殴り続ける。できるだけ数を叩き込む。だが、1発1発手を抜かない。

 怒涛のラッシュに敵は為す術もなく、うめき声を上げることしか出来ない。だからこそ、手を緩めない。緩めれば最後こいつは反撃してくるだろう。このチャンスが再び来るとは限らない。ならば体力が尽きるまで殴り続ける。

「ぅうらぁぁぁぁあああ」

最後の最後まで力を出し切るつもりで叩き込む。そして、最後の一撃に蹴りをくらわせる。

 蹴りをくらった敵は数メートル吹き飛び、ゴロゴロと転がり壁にぶつかった。その後、ぴくりとも動かず倒れたままだ。

「はぁ…はぁ…はぁ―。」

体力を出し切った。モンスターは倒せたが、自分も相当ダメージを受けており歩くことも難しい。正直、今にも意識が飛びそうだ。

「ちょっと…休憩…」

そう呟きつつ腰を下ろそうとした瞬間、モンスターが動き出す。さっきの攻撃が効いたのかよろよろと立ち上がる。それでもしっかりとその場に立ちこちらを見据える。

「まじかよ……」

ダメージはしっかり入っているが、倒すまでには至っていなかったらしい。

 逃げるだけの体力はもう残っていない。かと言って、戦えるほどの力ももう残っていない。

 心臓が跳ね上がる。今度こそ殺される。そう考えると、恐怖で体が震える。

 モンスターはゆっくりとこちらに一歩一歩近づいてくる。助けを呼ぼうにも、恐怖で萎縮してしまい声が出ない。「絶望」その言葉の意味が真に理解出来た気がする。

 死にたくない。死にたくない。

そう願うも、その願いを嘲笑うかのようにモンスターはさらに近づいてくる。拳が届く距離まで近づくと足を止めゆっくりと拳を振り上げる。そして、俺目掛けて振り下ろされる。俺は死を覚悟し目をつぶった。


しかし、いつまで経ってもその時は訪れなかった。

「もう、大丈夫だぞ〜少年」

女性の声が聞こえてきた。恐る恐るまぶたを上げると。大剣を片手に持た、隈が濃い女性がこちらを見ていた。そして、モンスターは上半身と下半身が別々に切り分けられていた。

「よく、瀕死にさせたな〜おかげで仕事が一瞬で片付いたぞ〜感謝感謝」

だらしない口調で感謝を告げられる。

そうか、俺は助かったのか。

そう、わかった瞬間緊張が解けたのかフッと意識を手放した。

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