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弱肉強食の国 中編

「は?」

「だから次はコイツを殺せ」

「いやしかし・・・何故です・・・?」

「求婚を断ったからだ」

「な・・・」

”この国は腐ってる”

・・・その通りかもしれませんキュルさん





「キュルさん、貴女は恋をしたこと無いんですか?」

ロップがそう言ったのは、自分が告白の為にキュルを殺そうとした後すぐである。

「いきなりなんき?」

「貴女は自分の手を汚してでも守りたい物ないんですか?」

「・・・ないき。大体汚さないと守れないんき?」

「それは・・・「この国は変わってるき。皆権力を求めて戦うのにどうして楽しそうなんき?」

「楽しそう・・・?」

「皆笑って殺しあう。仕方なく・・・?ちがうだろう。この国は腐ってる」

「・・・」

「奇麗事は言えないき。只、皆権力だけで大切なものを失う。それを忘れ、権力者になると喪失感に襲われる。そして我が儘になる」

「喪失感・・・」

「お前も忘れんな。自分が何のために戦っているかを」

「・・・ハイ」



知っていた。そんなことは。

分かっていた。言われなくても。

でも・・・

見ないふりをしていた。


「もう見ないふりも出来ないかな・・・」

ロップは悲しそうに笑った・・・

「さぁ、殺せルトを。ルト・オルガナを」

王から渡された剣は鈍く光った。

「それでも僕は・・・」

見ないふりをし続ける。

切っ先を静かに己の喉へ・・・。

「バーカ」

キンッ・・・。

「!?・・・!き・・・キュルさん?」

キュルの足は剣を弾いた。

「誰だ!!」

「・・・只のしがない旅人だよ」

「た・・・旅人だと?まさか・・・ロップお前」

「・・・」

「お前!!」

「あららぁ・・・お叱りは後にしてよ。自分が上でありたいが為に沢山の旅人を殺させてきた国王さんよ」

「何が言いたい」

「んー二つ言いたいなぁ」

「キュルさん?」

「まず一つ、なぜ入国させる」

「は?」

「そこまで旅人が脅威なら入国させなきゃいいんじゃないき?」

「・・・くくっ・・・そうだな冥土の土産に教えてやろう。此処にくる旅人は大半がこのシステムを知っている。」

「?」

「そのまま返せば外から俺をつぶそうとするんだ。しかしだ、奴らは馬鹿なもんで国に入れると油断するんじゃよ」

「その隙に・・・か」

「そう言うことさ。」

「はっ・・・そりゃ此処に来るのはルーキーばかりだからできるんき」

「そうだな。確かにそうだ。なら貴様は何故此処にいる。ルーキーなんかじゃないじゃろ?」

「あんみつのためき。後もう一つ」

「?なんだ」

「‘ロイス’を知ってるき?」

「ロイス?」

「ロイスってあの!?」

「・・・答えるき」

「キュルさん!?貴女はなにを」


貴女は今自分が言ってること分かっていますか?

そう言おうと思って止めた。

この人は本気なんだ。

少し前彼女が言ったあの言葉。

あの時僕は 目だけで何が分かるのか そう感じた。

でも今分かったんだ。


『殺すのを戸惑う目』


全てが分かるよ


だってキュルさん。今の貴女の目は


「死ぬ前の戦士の目」


がむしゃらに・・・突き進む。


「ロイス・・・あの忌々しい冒険家ロイス・カラナーか?」

「そうき」

ザワッ・・・

「・・・大冒険家ロイス。あるところでは英雄あるところでは異端者。なぜ・・・」

「なぜ、かぁ・・・知っているね。噂なんかじゃなく」

「なぜあやつの名が・・・」

「問いに答えろ!!!」

「・・・くっ・・・はっはっはっ!!」

「・・・っち 教える気はねぇって?死ぬき?」

「死ぬ?どの口が言う?此処はわしの城じゃぞ?」

「お前の兵士と違って小生には実力があるんき」

「キュルさん!!無理です!この城には実力者ばかりがいます!」

「・・・何故?」

「そんなきょとんと言わないでください!」

「だから・・・小生もお前もそいつらと同じ・・・じゃなくて、それ以上の実力者き」

「え?ちょ!!僕もですか!?」

「?当たり前き。もともとそのつもりだったき。後ルトも連れてく」

「!!」

「ルトの事好きなんき?だったら告白するまで死んだら困るき!」

「・・・はい」

「捕らえろ!!侵入者だぁぁぁ!!」

「さぁ・・・やってみろ」

「気迫十分だぁ」

「感心してる場合じゃないです!!!」

「さてと」

ドンッ!!!

「かはっ・・・!!」

「え?」

キュルさんがまるで舞う様に兵士に蹴りをいれた。

「すご・・・あれ?キュルさん?ちょ・・・何してるんですか!?」

キュルさんは倒した兵士の持ち物を漁っている・・・旅人としての本能かな?

「この剣いいな」

「なにを?」

「小生剣持ってないから」

「はぁ・・・貰うんですか・・・」

「うん。んーじゃ・・・」

キュルさんは消えた。

次現れたのは・・・

「この王を殺せば終わり」

王の真後ろだった。

キュルさんの手の剣が王の傍にある。

「な・・・わしを守れ!!兵士!!」

「っ・・・ルト・オルガナがどうなってもいいのか!?」

「低レベル・・・ロップ。決断しろ」

「へ・・・はい!」

「んじゃ」

「お・・・おい」

ザシュ

「・・・おいおい仮にも、弱肉強食の国の王だろ?」

「ルトを処罰する!!」

「させない」

ザシュ


そう・・・簡単だった。

逆らうことも 逃げることも 戦うことも

何処かで諦めていなきゃ。


かんたんだった


やらなかっただけだった


自分に溺れた兵士を 斬るのは とても かんたん

ザシュ・・・人を斬る音。

響く声。

そうだ僕は既に、沢山の人を斬ったじゃないか。

今更何を迷う?

「嫌・・・」

君に嫌われるのが嫌で隠していた事実。

僕が人殺しをし続けたこと。

「何故・・・」

「只守りたかったんき」

「え・・・」

「ルト。あんたを守り続けた男き」

「守り・・・」

「影で支え続けた。そのために自分の手を汚した男き。馬鹿な野郎だけど、あんたのため。それだけははっきりしてるき」



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