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軍の兵器だった最強の魔法機械少女、現在はSクラス探索者ですが迷宮内でひっそりカフェやってます  作者: しんとうさとる
エピソード2.5「隣町ギルドの面倒な事情」

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1-2.貴方の行動は禁則事項




「そこまで」


 声を掛けながらフィリップたちの間に強引に割って入る。するとフィリップは「ああ?」とドスの聞いた声を上げて大きく舌打ちと一緒に振り向き、けれど私の姿を見た途端、まるで奇妙奇天烈なものでも目にしたかのような表情に変わった。


「ちっ、ガキはすっこんでろ」

「ガキではない。これでも十七歳」


 一応は成人している年齢ではあるのだが、彼だけでなく遠巻きに見ている他の探索者たちからも胡散臭そうな目で見られた。とても成人女性の見た目ではないことは理解しているけれど、事実は覆せない。

 ともあれ、暴力行為を止めさせることに一役買ったのなら良しとする。


「ギルド内における暴力および戦闘行為は厳禁。貴方の行動は禁則事項に値する」


 ギルド内にかかわらず暴力は禁止ではあるのだけれど、それはさておいて私がそう主張すると彼は鼻で笑ってきた。


「分かってねぇな、ガキ。俺はな、今コイツにルールを教えてやってんだよ。このギルドのルールって奴をな。だから関係ねぇガキはどきな」


 そう言って私を睨んでから押しのけようとするがギルド職員として、何より「困っている人を守る」という私の存在意義からしても退くわけにはいかない。

 フィリップが肩をつかんで力を込める。が、私の体は動かない。顔を真赤にしてはいるけれど、どうやら私を押しのけるほどの膂力はない模様だ。


「っ、く……! このクソガキ! 痛い目見ないと分かんねぇみたいだな!」


 私は単に立っているだけではあるのだけれど、どうやら彼はずいぶん短気らしい。フィリップが私の首に剣を当ててきて周囲から悲鳴が上がる。

 もっとも、それは別にたいした話ではない。なので私は淡々と必要なことを述べる。


「暴力および戦闘行為におけるローカルルールの設定はギルド規則に認められていない。それ以外にもギルド内での秩序維持義務違反や器物損壊などの規則違反が認められる。貴方の主張は一方的かつ独善的であり、許容されない」

「さっきからクソが……! 何様のつもりだ、ああっ!?」


 フィリップの方が何様なのだろうか。クレアならば確実にそうツッコミを入れているだろうけれど、私は黙ってギルドの職員証を提示した。


「私はギルドの職員。ルーヴェン支部より臨時で派遣されている。故に私は貴方の違反行為を止める義務がある」

「っ……」

「フィリップさん、さすがにこれ以上は……」


 私がここエナフではなくルーヴェンの職員と知ってマズいと思ったのだろう。隣りにいた探索者が彼をたしなめると、また盛大に舌打ちをしながら剣を鞘に仕舞った。


「はっ! こんなガキでも職員になれるなんざ、ギルドだなんだって威張ったってたいしたことないんだな!」

「フィリップさん!」

「まあ、しかたねぇ。俺ら探索者に養ってもらうしか能がない連中だしな!」


 それでも気が収まらないのか、隣でたしなめる声も無視して、大声でギルドそのものを侮辱するような事を叫び始めた。さすがに渋い顔をする人も多いけれど、こういった人間は珍しいという程でもないし、彼のような発言を負け惜しみと言うのだと確かエドヴァルドお兄さんが言っていた。なら気に留める必要性は無い。


「要件を承ります」

「……」

「要件を承ります」

「……」

「要件を。でなければお引取りを」

「……素材の買取を頼む」


 舌打ちばかりして一向に要件を口にしないフィリップに変わって、抱えていた袋を雇われたというパーティの男性が差し出してきた。それを受け取り、さらに騒ぎを起こされても問題ないよう私の担当窓口へ案内する。

 さて、彼らが持ってきた素材はどんなものか。素材鑑定用のボックスに袋の中身を広げると、生臭い血の匂いが一気に広がってきた。

 素材がボックスにボトッと落ち、さらに真っ赤な血が滴り落ちていく。素材から結構血が出てる。生臭い匂いはこの血が原因と推定。十分な血抜き処理をしなかったためだろう。しかし、それにしても匂いが強い。ギルド職員であれば慣れているはずだけれど、隣で見ていたユハナも鼻を押さえて顔をしかめているくらいだ。

 私も戦場で慣れているとはいえ好きではない。白魔導が使えれば浄化して多少は匂いを抑えられるのだろうけれど、残念ながら私は使えないのでこのまま鑑定作業を進めていく。


「この処理は……」


 覗き込んだユハナが呆れたようにため息をついた。

 彼らが持ってきたのはロアリングゴートの毛皮と角。B-1~B-2ランクに位置づけられる難敵だ。このモンスターの毛皮は防寒用としての需要が大きいし、角も武器や防具に混ぜて加工すれば強度を増すことができ、こちらも需要がある。供給量が少ないから結構な値がつく素材だ。本来なら。

 けれど処理の拙さがすべてを台無しにしている。切り取る時についたと思われる傷で毛皮はズタズタ。血の匂いが染み付いてしまっているし、角も傷だらけ。一緒に入っていた他のモンスターの素材も同様。まるで素人か駆け出しの仕事だ。幾つかはキレイに処理されたものも入っていたけれど、血で汚れて匂いがついてるために台無しになってしまっている。まともなのは魔晶石くらい。

 ともあれ、私としては粛々と仕事をするだけ。予め定められているギルドの算定基準表に従って算定額を出していく。途中で「まだか!」という声が聞こえたけれど気にせず仕事を進めていく。

 そして。


「フィリップ様、お待たせしました」

「ふん、やっとか。さっさと金を出しな!」

「こちらになります」


 素材買取の明細書とお金を差し出す。フィリップは奪うようにしてそれを掴み上げたのだけれど明細書を見た瞬間、血相を変えてカウンターにお金を叩きつけた。








お読み頂き、誠にありがとうございました!


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