表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

二話 通じるんかい

「ちょっと待って、叶多。オレたちは、ホラースポットに居て、壁に浮かんだ穴を見てた」

「うん」

「叶多が手をついて、オレも引っ張られた」

「うん」

「……何これ?」

「ね」


 真っ黒な闇に飲まれたと思ったら、人に囲まれているのだ、流石に驚く。叶多と呼ばれた少女の方も、無表情に見えて実は非常に驚いている。

 しかもここは日本ではないらしい。髪の色は濃さに差はあれど、大体が金色の髪を持っている。また、目鼻立ちがくっきりしていて、美人の部類に入る人が多い。

 叶多と想良を見て、しばらく呆然としていた群衆だったが、一拍おいて歓声が響く。手を取り合って喜んでいたり、綺麗なハンカチで目元を押さえている人もいる。

 しかし、その中心に立っている人たちは、何やら難しい顔で二人を見ていた。

 そのうちの一人が立ち上がって、近付いてくる。

 なんか、厳つい。一言で言うと、子供に泣かれそうなおじさま。その見た目には似合わず、丁重な言葉遣いで話す。


「よくぞいらっしゃいました。さぁ、こちらへ」


 ―――いや、言葉通じるんかい。

 叶多は心の中でツッコんでしまう。

 その男が手を差し伸べたのは、想良。困惑した表情で男を見上げている。

 想良は立ち上がらされて、どこかに連れて行かれそうになっている。叶多〜、と自分の名前を呼ばれているにも関わらず、無視を決め込んだ。

 ―――面倒事は、全力回避。それ以外は、適当に。

 これが叶多の生きる上での鉄則だ。

 無に徹しているが、この状況だと少し困ることもある。

 ―――私はどうしろと?

 興味の視線にさらされたまま、放っておかれた。


「えぇ〜…………」


 戸惑いつつも周りを見回してみると、案の定みんな見ている。美形にこんな見られるって、なかなか無くない? とか少しは思ったが、いわゆる現実逃避である。

 困ったあと、いきなりばっ、と立ち上がって、走り出す。部屋、というか広間みたいな場所で、とにかく出口を目指して走る。


 ―――ここ、どう考えても異世界ってやつだし、なんか城だよね。


 夢であれ、と思いながら走り出すも、願いは儚く散る。腕をがっしりと掴まれた。なんて怖いおにーさん。ここではあまり見ない黒髪の青年だった。細くても筋肉がついていると分かる体つきをしていて、いっぱしの少女である叶多としては怖い。

 なんか目つき鋭いし、眉間に皺よっちゃってるし、腕掴む力の調節出来てないし。


「……ごめんなさい」


 素直に謝って、逃してもらおう。さぁ、頼む! と祈ったものの、無理だった。そうだと思っていたけれど。


「……こっちだ」


 腕を掴んだまま、歩き出してしまう。

 なんだか豪華な廊下だった。よくテレビで見る赤い絨毯とか敷いちゃって。

 レッドカーペット人生初体験の叶多だが、そんなに周りを見る余裕などない。

 死刑になるのだろうか。ボッコボコにされるのだろうか。嫌な想像を膨らませながらついて行く。


「入れ」


 無愛想すぎるおにーさんは、苦い顔をして叶多を部屋に招き入れた。一応の礼儀はある叶多は、軽く礼をしてから部屋に入った。

 質素な部屋で、さっきの廊下とはイメージが全く違う。少しだけ周りを見てから気持ちを落ち着かせ、口を開く。


「……あの、なんですか?」


 やっと疑問が口からこぼれ出る。

 その言葉に、男はさらに眉間を寄せて、目元をもみほぐした。


「ここがどこか知っているか?」

「知りませんよ」


 だっていつの間にか来てたんだもん、と言おうかと思ったが、一応言わないでおいた。


「レミシャールは知っているか?」

「だから、知りませんって。何その厨二みたいな名前」


 ついつい本音が口に出る。それが前島叶多である。

 あ、ヤベ、と思ったが、幸いなことに男は意味を分かっていない。チューニ? とぼそぼそ呟いているが、プライドの高そうなこの男は、何も聞かないだろう。


「で? なんですか、そのエイチャーン」

「……レミシャールだ。我が国の名前」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ