一話 意味分からんわ
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✳タイトルを少し変えました。
「ちょっと叶多ー、見てこれ。凄くない? やっぱ来て正解でしょ〜」
「止めときなよ……」
一人の少年が、崩れかけたコンクリートの塀の壁を見ながら、もう一人の少女を呼ぶ。少女は無気力そうにあくびをしながら近付いていく。
無関心ではあったものの、ポーズとして、壁に浮かぶ真っ黒な穴を覗き込んだ。
穴といっても、おそらく黒のペンキで描いたものだろう、と思った。
「……わっ!」
少年が肩を軽く押して驚かせると、少女の方は驚いて黒の部分に右手をついてしまう。
「止めてよ」
壁に手を突っ込んだまま、少女は少年を振り返って言った。怒っているようだが、あまりその雰囲気は感じられず、まぁ、簡単に言えば危機感を感じられない声音で話す。
「……ん?」
壁に、手を突っ込んだまま―――
「わ、ちょっと…………」
少女は壁の向こうに引っ張り込まれそうになったところで、慌ててもう片方の左手で少年の服の袖を掴む。
真っ黒の闇が壁の向こうに見えて、光をも吸い込みそうな黒。
黒が眼前に迫って―――