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突入!?学園生活!

ふっふっふ……遂に来た!この日が!

学校の帰り道に事故に巻き込まれてより16年……長かった。しかしながら!生サイノメに会えるとなれば全く苦にならなかった!

前世の私は高校入学したばかりのピッチピチのJKだった。人よりちょっと乙女ゲーム、少女漫画系が好きなだけの普通のJK。

そんな私が特に好きだった乙女ゲーム……『龍のいる世界』のヒロインに転生した。

いや、最初は何もわからなかったし、信じられなかったんだけどね。

言葉がわかるようになって、自分の名前が判明してからはもうキタ━(゜∀゜)━!でしたわー。

なんせヒロインだ。逆ハーワンチャンあるんじゃないか。

しかもえげつないくらいかわいい。なんというか、髪は背中の中くらいまである茶髪のストレートヘアなんだけど、顔面の整いっぷりがやばい。

10人中8人が振り向くくらいの美人である。

しかし、ひとつだけ問題が。このゲームにはモンスターと言う存在がいる。

大型、中型、小型に別れるそれらを倒してレベリング。レベルを上げてボスを倒してストーリーを進めるというのがこのゲームの趣旨なのだか……。

主人公はそれまで全くモンスターとの戦闘を経験したことがなく、学園に入ってからレベルを上げていく、のだが、死にますわな。

絶対1回は死ぬ。相当なガチプレイヤーじゃないと突破できない究極初見殺しの中ボス、炎王龍ラフレスターンがいるからだ。

あいつが攻略できずに無駄に日にちを溶かしたことは記憶に新しい。

ラフレスターンの前のボスで必要なレベルは20。それに対してラフレスターンは50。

攻略サイトを見ずにレベル30くらいで行って、初っ端の全体攻撃持続ダメージつきのブレスで一瞬で凪払われた。

それに、原作設定的にもレベルはあった方が良い。今思い起こせばラフレスターンは国を滅ぼす厄災だったしラスボスに至っては全種族を滅亡の危機に追い込むようなやばい奴だ。

私は多少の障害はあっても楽しい学園生活を送りたいのだ。前世はあまり体験できなかった事だから。

そのためにも自分も含め誰かが死ぬ……または傷つくなんて嫌だ。

だからレベルを上げるのだ。

確かサイノメ……狼の獣人の攻略対象は強い女が好きだったはずだからレベルを上げることにはメリットしかない。

と、決意してから10年。生まれてから16年。モンスターを倒して修行を積み、レベル63になった私にも遂に収集がかかり、ゲームの舞台……王立大魔導学院に入学することになった。


予想はしていたけど、でっかい。

北方大陸よりランスロットにライドオンして半日。

私達は王立大魔導学院に入学するため来ていた。

係員の誘導に従って学院の中庭に着陸したランスロットを見て周りの野次馬がざわめく。

ランスロットの背中から降りる時にバランスを崩して落ちかけた私を先に降りていたユーリが抱きとめた。

「兄さん!大丈夫?」

心配そうに見てくる緑の目に頷くと、ほっとしたようにため息をついた。

「全く、兄さんは小さくて弱っちいんだから気をつけなよ。」

こいつ、しれっと今ディスったか?

「別にいいだろ。そいつにはそいつの得意分野があるんだし。」

ユーリと私の後、最後にふわりと背中から降り立ったのは父さん……もといシロノウチだ。

強くなりすぎたせいで世界からブロックされて、帰ってきたはいいけど見た目的にも精神的にも私達双子と同い年になってしまった父さん。

な、何を言っているのか分からないと思うが、俺にも何が起こったのかわからなかった……!

大幅に弱体化してしまった父さんだがチート級の強さは健在で、仮にも龍族であるランスロットでさえ苦戦を強いられる。

また同じくらいまで強くなる可能性があるためか、父さんは人の思考を読む能力を徐々に失っていて今はなんとなくこんな感じかな?とわかるくらいだ。

父さんはびっくりするくらいユーリと似ていて、双子の私よりも双子らしい。と、いうより並んだらユーリと父さんが双子の兄弟で、私が末の妹って感じだ。

父さんも同い年になってしまったため、一緒に入学することになった。

リヒトさん……ランスロットの父親で龍族の結構重要な地位にいるらしい龍曰く、「全種族が同じ学校に入学するという取り組みには、当たり前だが前例がない。一応保護者として我々も同行するつもりだが、学校内で起こることに保護者が介入できることは少ない。故にシロノウチ、シアリーン、ユーリ、ランスロット、頼む。

お前達が実質龍族の代表だ。龍が舐められないように、しかして過度な恐れを抱かれないよう立ち回って貰いたい。」

そんな難易度が高い使命を帯びさせられた。龍族の代表って……人間3龍1なんだけど。

でも、ランスロットが舞い降りたファーストコンタクトのインパクトはでかかったようだ。

しんと静まり返った野次馬達が、降り立ったその絶対強者を凝視している。私達が全員降りたのを確認したランスロットが、ふわりと吹いた風と共に人間の姿になる。紅い髪に切れ長の目、精悍な顔立ち。

学校指定の白い制服に身を包んだその姿は正に王子といった感じである。いっそ神々しい。

ランスロットに惚れてしまった女性も多いのではないだろうか……と思って野次馬達の方をチラッと見てみると、引きつった表情でランスロットを見ている。これはあれか、龍のチート具合は知識として知ってたけど、実際に目の当たりにしたら知識以上のやばさだったんだね分かります。

とりあえずランスロットに所属種族指定の赤のマントを渡しに行く。

同じ種族でも私達家族のように自分の種族ではなく別の種族に味方している場合もあるので、所属種族を明確にするために種族事に色分けされたマントを装着することが義務付けられている。

このマントは身分証明も兼ねていて寮などにもこのマントがないと入れない。

マントを身につけ、颯爽と歩くランスロット。野次馬達がモーゼを目の前にした海のように割れていく。そんな群衆の真ん中でランスロットは立ち止まり、振り返った。

「……そう言えば、どこに行けばいいのか知ってるかい?」

「いや、知らんかったんかい。私にも分からんけど。」

思わず突っ込んでしまう。

「荷物を置きに行くのが先じゃないの?」

そう言って荷物があるはずの方角を見るユーリ。

「あれ?荷物は……?」

え、まさか。

「荷物忘れた?」

「んなわけないだろ……」

呆れたようにため息をつき、無限空間収納……インベントリから全員分の荷物を取り出す父さん。

「行きがけにこれに全部入れてくって言ったのを忘れたのか?」

「「「忘れてた」」」

「馬鹿野郎共が!!オラ、全部持て!寮はこっちだ行くぞ!」

父さんすげえ。ツッコミ役としてのの父さんを尊敬していたら、私は父さんに投げられた武器入り激重ずだ袋の不意打ちをくらって押し潰された。


自分が元々は大人で、若返って戻ってきた……その話を初めにシアリーンから聞いた時は訳が分からなかった。

俺の感覚としては未来にタイムスリップした感じだったからだ。未来の自分が変化した姿が今の自分とか訳が分からないだろう。

現実とは物語より奇妙だなと現実逃避したものだ……が現実逃避なんかしている暇はなかった。俺がシアリーンによって召喚された後、とりあえず帰ろうとリヒト達と相談していたシアリーンが倒れた。

それと同時に湧き上がってきたのは、恐ろしいまでの怒り。いきなりでその怒りの在り処がわからなかったが、これは自分に怒っているんだと気がついた時にはもう走り出していた。

シアリーンを抱き上げ、体の具合を調べる。ただの魔力切れのようだったので自分の魔力をじわじわと流し込んで応急処置を行う。

おそらくまだ自分の体が世界が行った変更に適応しきれてなかったのだと思うが、その時点では記憶を読む能力がまだあった。

シアリーンから流れてきた記憶。

前世の記憶、元の俺と過ごした記憶、元の俺も含めた他人の記憶、俺がいなくなった時の心情。そして俺を再召喚した時の期待と落胆と……安心感。

精神的にも肉体的にも幼かった俺にとって、それはあまりにも衝撃的で。でもこの世界に居たのは確かに俺なんだなと思った。

それから俺は可能な限りシアリーンとユーリの父親らしく過ごしてきた。……残念ながら、レイナさんの事は妻として見れなかったが。年上のお姉さんみたいな印象しか持てなかった。

しかし、この姿になる前の俺に関わってきた者の記憶から、心情からあいつらの父親であるシロノウチを演じた。レイナさんに対してもあまり年上に対する態度を出さないようにし、同年代のように振舞った。

多分みんな元のシロノウチでは無いことは気づいているだろう。

そもそも俺が元のシロノウチを演じてることも、元のシロノウチの代わりに自分が居ることに罪悪感を感じていることも、結局俺の自己満足なのだ。

レイナさんもリヒトも俺の事を気にかけてくれて、特にレイナさんには何度か抱きついて泣いたことがある……黒歴史だが。

あれから10年の時が過ぎた現在、6歳で父親を失ったあいつらは、それでも元気に過ごせているようだ。

誰のかはわからないが天然な性格が伝染したようで、ランスロット含め3人ともやや抜けているところが難点だが。

俺じゃ元のシロノウチの代わりになれないのはわかっているし、多分元のシロノウチは戻ってこないと思うがしかし……あいつらの平穏を守ることが俺の仕事だと思う。

我々龍陣営に用意された寮は、他の寮より大きくて広かった。

……マントと同じ赤い屋根に、どでんと鎮座しているあの龍の像は誰の趣味だ?

中も俺達の家ほどではないが割と広めにスペースがとってあり、最悪ランスロットが龍の姿になっても大丈夫だろう。

とりあえず荷物を置いて……何をどうするかキャッキャしているあいつらに昼食を買ってくると告げ、寮の外に出る。

さて、平穏な日々をぶち壊す可能性がある異常な存在に会いに行きますか。


やっっっばい。メインヒーローランスロットが来るって聞いたから野次馬しに行ったのに、なんだあの男は。

ゲーム本編では一切姿を見かけなかったけど、強い。他のヒーローとその従者達もちらほら見かけたけど、あの男は別格だ。

正直真正面からやり合ったら勝てるかどうかギリギリの相手だ。

なんであんな化け物がよりにもよって龍陣営にいるんだよー。

……どうする?不意打ちならいけるか……いや、どう考えてもあっちも私に気づいていたしな。

後手に回ったら殺られる。あっちは龍の寮に向かうみたいだったし、先手必勝乗り込んでやろうじゃないの。

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