6/10
挨拶
夜明はライブの終わりにまた演説を始めた。
「みなさん。今日は本当に、来てくださってありがとうございました!本当に、本当に楽しかったです!」
大げさにお辞儀をする夜明。ポニーテールが揺れている。
「それで、皆さんにお願いがあって。私のライブ終わりに、皆さんと毎回決め台詞というか、決まった言葉で締めたいなと思って。ライブ終わりの定番掛け合いにしたいんです!昨日の夜、一生懸命考えました!」
「私がぜったーい!って言うので、皆さんその後にアゲインって言ってください!」
会場からおー、ともはーい、ともつかない声が上がる。
「ダサくてごめんなさい。一杯考えたんですけど、これしか浮かばなかった」
夜明がそう言うと会場が笑う。
「じゃあいきますよ!」
夜明が息を吸い込む。
「ぜったーーーーーーい!!!」
「アゲイーーーーーーン」
会場から声が上がる。
僕も少しだけ声を出した。別に、何でもないけど。
「ありがとうございました!!!」
夜明は大きくお辞儀をしてステージから消えていった。
なんとなく、彼女のファンになってしまう気持ちもわからないではなかった。