この間見た夢、恋愛……かな?
中途半端な所で起きてしまった……
続きはまた見れたときで
「あっ」
ようやく残業が終わり、家に帰ろうと会社のビルを出ると白いものが空を舞っていた
「初雪だ……」
そう、この雪は今年度に入って初めての降る雪だ。回りを見ると私と同じように空を見上げる仕事帰りの人たちが見える。
「雪だねぇ~、天気予報じゃなんもいってなかったのにねぇ」
ふと隣から聞き慣れた声が聞こえた。
横を見てみると、席が隣の上矢部司さんが同じように空を見上げて立っていた。
「あれ?司さんも今日は終わりですか?」
普段は私も彼も11時まで会社で過ごしているのだが今は9時だ。
「今日だけね、今日は君も終わるみたいだったし」
何で私が終わりだと司さんも終わるのだろうか、疑問に思っていると司さんがくすりと笑って「一人でやってても詰まらないしね」と言った。
確かにそうだ、普段の仕事は7時まで通常の業務を行い、それから12時まで飲めや歌えやのプチ飲み会を行って帰るのが私たちの一日だ。
私が今日9時で上がったのは理由があり、これから高校時代の友人たちとの飲み会があるのだ。
そう司さんに伝えると「へぇ~、いいねぇ僕にはそういうことが出来るような相手なんて居ないからねぇ~」
……地雷を踏んでしまったらしい、司さんの顔がのっぺらぼうみたいになってる。
「あの~、司さん?」
「あぁ、ごめんごめん。別に友達が居ないってことは気にしてないから」
いえ、そんな暗い顔で言われても説得力に欠けますよ司さん……
そうして、どこか哀愁を漂わせながら司さんが帰るのを見送って旧友の待つ『隠れ蓑』と言う居酒屋に向かった。
「あっ、来た来た~、おーいこっちこっち」
『隠れ蓑』に着くと旧友の坂本佳奈と高橋美紗が私に気付き、手を振っていた。
「ごめん、お待たせ」
そう言うと二人は「今来たところだから大丈夫~」と言って店に入っていった。
でも、私は二人の元々白い手がさらに白くなっていたのを見逃してなかった、ごめんね気を使わせちゃって……後で何か飲み物奢るよ。そう言いながら私も店の暖簾を潜った。
「らっしゃせー、何名でやすか?」
店に入るとどこか目が虚ろな店員が人数を聞きにやって来た。佳奈が「予約してた坂本です」と言うと店員は「予約の坂本さま、ご案内しやす」と奥のテーブル席へ誘導してくれた。
「ご注文が決まりましたら、ボタンでお知らせください」
そして美紗がビールを3つ頼んで店員はホールへと戻っていった。
「さ~て、早速だけど美紗は結婚したんじゃん。それで最近どうよ?」
店員が見えなくなってから佳奈が美紗に近付いてそう聞いた。
「ちょっと、いきなり?まぁ佳奈はいつもそうなんだけどさ、時雨もなんとか言ってよ」
美紗はキスするくらいに近付いた佳奈の顔を押し退けながら私に話を振ってきた。
「アハハ、まぁたまにそうだよね……」
そう言うと佳奈はわざとらしく目を擦りながら「え~、二人とも酷いよぉ、私泣いちゃう、しくしく」と泣き真似をした。
うん、このやり取りはやっぱり楽しいな。何だか高校生に戻った気分にもなれるし……あ、佳奈が美紗に抱きついた。
「ちょっと、佳奈?どうしたのよ、今日は何時もより抱きつくわね?」
美紗が抱きつく佳奈を押し退けながらそう言った。そういえば確かに今日の佳奈はいつもの二倍くらい抱きついている気がする。
「そうそう、聞いてよ二人とも!!」
佳奈は私たちの方を見て急に大声を上げた。
「ちょっ、佳奈。ここお店!もう少し静かに!」
すかさず私が注意すると「ごめんごめん」と言っていつの間にか届いていたビールを一口飲んでから昔を懐かしむように続きを話始めた。
「少し前に話したこと覚えてる?そうそう、それ──三年の時、クラスメイトだったひよりのことよ。」
ひよりは日ノ月ひよりという名前で高校時代、私たち三人と一緒に遊んだ佳奈と美紗以外でほぼ唯一の友達だった人だけど、1ヶ月前に佳奈の話に出るまで私たちは腫れ物を触るかのように触れるのを避けてきた。
その理由は高校卒業の直後にほんの些細な出来事で喧嘩してしまったこと、それを私たちは未だに引きずっている。
「ひよりとは例の件から疎遠になってしまったけど、私はもう10年以上経ったしそろそろ仲直りがしたいと思ってるの。彼女も結婚するらしいし」