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びくびくと怯えながら、1歩、また1歩とこの身体(アリシア)の姉が居る場所に向かって行く。

姉に挨拶をして、その横を素通りすれば大丈夫と自分に言い聞かせながら。


「大丈夫、大丈夫、怖くない、アレはお姉様、アレはお姉様、大丈夫………」

『全く大丈夫なようには見えぬのぅ』


怯えながら、それでも1歩、また1歩と姉の元へ近付き、もう目の前というところまで来た。


「お疲れ様ですわ、お姉様。わたくし、先に屋敷に帰りますわね」


そう言って、姉の横を通り抜けようとした。

その瞬間、姉が背負っていた大剣を抜き、わたくしの目の前に振り下ろした。


「ぴぃ…」

「わたしの大事な、愛している、赤ちゃんを産んで欲しいとまで思っているアリシアちゃん。ちょっとお待ちなさい」

「そうよぉ、お姉ちゃん達によーく顔を見せなさい?」


聖騎士のような格好の姉の横から、声を掛けてきた、白い仮面で顔の上半分を、黒い布で顔の下半分を隠しているメイド服の女性が、両手でわたくしの頬をがっちり掴み、顔を覗き込んできた。


「アルカナ姉様、どうです?」

「あら? あらあらあら? 貴女、本当にわたし達のアリシアちゃんかしら?」

「ぴゃい」

「貴女の瞳に、魔の王環が浮かんでいるわ。それに、わたし達のアリシアとは魔力の匂いが違うわね」

「ほぅ、わたし達のアリシアを騙るか。貴様、覚悟は出来ているのだろうなぁ?」

「ぴゅぁぁ、こ、殺しゃにゃひでくらひゃい」

『2人とも待つのじゃ。其奴は、仮初めの操者じゃ。妾の不注意で、操者はオークと相討ちとなってしまったのじゃ』


フリージアが、姉2人に事のいきさつを説明してくれた。

但し、最後に余計な一言を言って。


『まぁ、概ねこのような感じでの、今の操者は、操者であって操者ではないという感じなのじゃ。とは言え、13の娘の記憶に塗り潰されたのじゃ、元の人生が余程薄っぺらいものじゃったんじゃろ』

「人の人生を薄っぺらなんて言わないでください!」

「あら、あらあら、貴女には、アリシアちゃんとしての意識があるのですか?」

「…えぇっと、一応? 2人がわたくしのお姉様だという認識はあります。ただ、記憶の消化が不十分で、まだ虫食い状態ですが、一度睡眠を取れば完全な状態になると思いますわ」

「わたしも少し気になることがあるので、確認しておきたいのだけど」

「なんですか? イオニアお姉様」

「アリシアの身体は生きているの? オークと相討ちになって、胸を貫かれたって聞いたけど」

「一応生きてはいます。わたくし(触手鎧)が心臓の代わりに寄生、同化した影響で、鼓動や老化は無くなりましたが」

「じゃぁ、赤ちゃんは産めるのかしら?」


赤ちゃんを産む、その行為とそれに付随する行為を想像し、恐らく顔を真っ赤に染めながら、うつむきがちに「た、多分産めますわ」と答えた。

その答えを聞いた瞬間、イオニアお姉様が"ニヤァ"と嫌らしい笑みを浮かべ、「わたしの愛している(ry」と大仰なセリフのあとに、「15歳になったら約束守って貰うわよ」と言った。


「約…束……約束、約束…」


"ボッ"と音が出そうなほど、赤くなっていた顔を更に赤くして、約束の内容とそれに付随する、イオニアお姉様と幾度となく肌を重ねた記憶が甦った。

わたくしの反応を見たイオニアお姉様は、更に笑みを深くし、「15になったら、わたしの赤ちゃんを約束通り産んで貰うわよ」とわたくしの耳元で囁いた。


「あら? あらあらあら? なんて羨まけしからん約束ですの?」


アルカナお姉様は、イオニアお姉様が耳元で囁いた内容をバッチリ聞き取っていたらしく、「あらあら、あらあら」と物凄いプレッシャーをかけてきた。


「約束の件も含めて、しっかりと話合うためにお家に帰りましょうか?」

「そ、そうですね、アルカナ姉様」


"ギギギ"というようなぎこちない動作で、イオニアお姉様は返事をした。


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