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「ほぇ?」
な、なんか出たぞ。
お、落ち着け、そう、クールになれ。
もう一度確認するんだ。
「【鑑定】?」
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オーク
Lv.23
♂
成人男性より少し大きな人型の魔物。
種族的にオスのみしか存在せず、他種族のメスを拐い苗床にする。
筋力は、人種の3~5倍と強い。
幼い子供を拐うケースもあるため、見掛けたら討伐を推奨する。
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おぉ、やっぱり出た。
【鑑定】というスキルがあるのだろうか?
しかし、筋力が人種の3~5倍とは、これは筋繊維や骨が人種よりも頑強な可能性が高いな。
この身体の持ち物に、いい感じのナイフがあったはずだから、オークを少しバラして確認するか。
オークをバラした結果としては、筋繊維は同じ断面積なら人種の3倍、骨の強度に至っては人種の8倍の強度があった。
俺は、オークの身体に触手を突き刺し、骨と筋肉のみを吸収し、少女の身体を見た目はそのままで更に強化した。
骨と筋肉がなくなり、皮と脂肪に内臓だけになりブヨブヨとしたオークと剣を置いて、もう一度魔力推進で壁を殴ってみる。
「…ッハ!」
ズ、ズゥーン
ナックルガードと強化された肉体のおかげか、目の前の壁に蜘蛛の糸状の亀裂が入り、突き刺さっていた腕を抜くと崩れてしまった。
これだけの力があれば、戦闘力がわからないオークが居ても切り抜けて、洞窟から脱出できるだろう。
あと気になるものは、少女が持っていた剣だけかな。
とりあえず、手に取ってみるか。
『穢らわしい。気安く妾に触れるでない、肉虫が!』
剣に手を触れた瞬間、脳裏にえらく気の強そうな幼女の声が響いた。
「なんだ? どこから聞こえてるんだ?」
『ここじゃ。貴様が触れている剣じゃ、肉虫』
「シャ、シャベッタァァアアアア!」
『えぇい、煩いわ肉虫。貴様から何故、妾の操者の声がする?』
「すまん、ネタとして言いたかったんだ。声については、何故と言われてもなぁ、俺は気がついたらこの洞窟に居て、目の前にはオークと相討ちして亡くなっている少女、俺自身は触手鎧に大変身ときたもんだ。オークに取り憑くのは嫌だったからな、少女の身体をもらったわけだ」
『もらったじゃと、肉虫の分際で妾の操者を犯したのか』
「犯したかどうかは微妙だな。貫かれた胸から侵入し、全身に浸食しているから、犯したと言うより侵したという感じか? あと、肉虫ってなんだ?」
『肉虫は肉虫じゃ。貴様は、妾の操者を辱しめてはおらんのだな?』
「辱しめてないとは思うけど、全身に絡み付いているようなもんだからな。ただ、彼女の純潔は奪ったつもりはないぜ」
『なら良い。仕方ないでな、肉虫、貴様を仮の操者と認めるのじゃ。妾を連れてこの洞窟から出るのじゃ』
「へいへい、話の続きは、歩きながらでいいか?」
『良い。しかしなんじゃな、操者の声でその口調は何かイラッとくるものがあるのぅ』
俺は、立ち上がり剣を腰に差し、洞窟の出口を目指しながら、剣と会話を続けた。
「口が悪いのは、諦めてくれ。俺は、元の世界じゃ成人した人間の男だったんだ。今更口調なんて変えられねぇよ」
『貴様、異世界から来たのか? まぁ、それも気にはなるが、操者の身体に寄生しておるのじゃろ? ならば、操者の記憶を読めば良いではないか』
「それは、この身体になったときに分かってはいたんだが…、変な風に意識が混ざりそうでなぁ」
『臆病風に吹かれたのか、意気地の無い肉虫じゃ。それに、貴様の意識が混ざって消えようが妾は一向に構わんのじゃ』
「…チッ、まぁいい、この世界の知識を得るために、遅かれ早かれやらなきゃいけなかったんだ」
悪態をつきながら、俺は少女の記憶へ浸食を開始した。