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母様達がギルドの受付嬢さんと世間話をしていたので、暇潰しに依頼が貼り出されている掲示板を見に行った。
受付から少し離れ、掲示板との間にある酒場のテーブルスペースに差し掛かった時だった。
「おいおい、ちぃっと待ちな嬢ちゃん」
声のした方を見ると、明らかにガラの悪そうな狩人がいた。
スキンヘッドで上半身裸、そのくせ履いているズボンやブーツ、籠手だけは上等といったちぐはぐな男だった。
「ちょっとこっちに来て、酌して貰おうか? ベテランのDランク冒険者ラギウス様が色々教えてやるぜ~?」
まさに、異世界あるあるパート3"冒険者ギルドで絡まれる"である。
妾が吸収した、アリシアの記憶によれば、冒険者と呼ばれるのは、Cランク以上の狩人で、洞窟や遺跡の探索を得意とする者達のことだ。
目の前にいる男は、冒険者の条件を満たせていない。
ただの下品な酔っ払いである。
「ほらほら、酌してくれたら、色々教えてやるぜ~、色々と。手取り、足取り、腰取りるぶぇらぁ!?」
「ふん! ロリコン死すべし! なのじゃ」
スキンヘッドのあまりのロリコン具合に、思わず鎧を纏い"トン"とスキンヘッドの腹に拳を当て、魔力を開放した。
スキンヘッドは、変な声を出し錐揉みしながら吹き飛び、テーブルと椅子を巻き込んで掲示板下の壁に激突した。
あえて、【回復魔法】を込めて殴ったおかげか、スキンヘッドは爆散する事もなく、壁に激突してからもじわじわと傷が回復していた。
身体に傷1つ無いものの、掲示板の下でテーブルと椅子の残骸に埋もれ、気絶しているスキンヘッドを無視して、組合の酒場で食事をしていた狩人達に謝罪した。
「食事中にお騒がせして、すまんかったのじゃ」
「いや、大丈夫だよ」
「そうそう、気にしなくていいわよ。あたし達もアイツには迷惑させられてたし」
「組合としても、今回のことは不問にします。目の前で明らかな迷惑行為が行われていましたから。テーブルと椅子の修理代は、あのスキンヘッドの口座から引き落としますので、ご心配なく」
「あの野郎、実力のあるパーティーにMT仕掛けて、状態のいい獲物だけ証拠を残さずにかっ拐って行きやがる」
「組合としても、明確な証拠がなく困っていたのですよ」
「大体、領主様と一緒にいた少女にナンパ仕掛けるって、冒険者騙るには危機管理能力無さすぎるよ」
「あなたなら、大丈夫だと思うけど、あいつしつこいから気をつけるのよ?」
心配そうに妾を見詰め、「いつでもお姉さん達を頼ってくれて良いからねー!」と言ってくれたので、
「ありがとうなのじゃ。でも、もしもの時は男性機能を数回壊してやれば、きっと大人しくなるから大丈夫なのじゃ」と手を振り、掲示板を見ることを諦めて母様達の元に戻った。
何人か前屈みになって、顔を青くしていた狩人が居たが、妾は見なかったことにした。




