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ママと話(?)をしていた触手は、波紋に消えた。
触手が放つ魔力は妹の姿をした魔物と同じだった。
わたし達は、何が起きているのか確認するため、ゲストルームに向かう。
ゲストルームからは特に怪しい物音や気配は感じない。
わたし達は、顔を見合せ頷き合うと、意を決してゲストルームに踏み込んだ。
そして、わたし達の目に映ったモノは、無数の触手が絡まり、犇めき合って出来た肉の繭だった。
肉の繭からやはり無数の触手が伸び、空中に浮かぶ六角形の波紋にその先端が消えていた。
触手が”ドクンドクン”と脈打ち、とれに会わせるように繭も拡張と収縮を繰り返していた。
「あらあら~? これは、どうなってるのかしら~?」
「ママ、危険よ、離れて!」
解析系統の魔法を発動し、肉の繭を調べると、肉の繭の中には妹の肉体に取り憑いた自称触手鎧の魔物がいて、肉体の再構成と最適化を行っているらしい。
そう、肉体の再構成である。
「止めなさい、妹の、アリシアの面影がなくなってしまうじゃない!!」
「あらあら、それはダメね~。ブッ殺かしら~?」
「おのれ、わたしの娘を蹂躙しようというのか?」
「わたくし動けませんの。触手が、触手が~」
「あらあら~。大丈夫よ? アリシアちゃん。触手さんが新しい肉体をくれるらしいわ~」
わたし達が、肉の繭に気を取られている間に、アリシアが憑依したフリージアに無数の触手が絡み付き、もう1つの肉の繭が出来ていた。
フリージアが取り込まれた繭にも、空中に浮かぶ波紋から触手が伸び接続された。
そして、繭が"ドクンドクン”と脈動を始めると、繭の中から蒼く輝く結晶が伸び始め、羊歯六花のような形状へと変化した。
結晶繭の中心には、膝を抱えた少女のような影がうっすらと浮かび、結晶に繋がった触手の脈動に合わせて、繭から漏れる光が増減していた。
「あらあら~、今日はこれでお開きかしら~?」
「くっ、悔しいけどママの言う通りね」
「フリージアの方をアリシアちゃんとして扱うとして~、触手鎧ちゃんの方はどうしましょうか~?」
「それは、出てきたヤツ次第じゃないか?」
「あらあら~、あの娘も娘よ~?」
「「「ママ!?」」」
「娘よ~?」
「わ、分かりました」
わたし達は、2つの繭の監視をメイド達に任せ部屋をあとにした。