女王様の庭(メリーバッドエンド②)
真っ暗な廊下を通り過ぎて行きます。先が見えないことを焦ったペティは走り出しました。そしてとうとう入った扉と同じ扉が見えます。
「よし」
ペティは勢いよく扉を開きました。急に明るい光にさらされたペティは思わず目を閉じます。
「えっ?」
目を開けると、そこはさっきの帽子屋がお茶会をしていた場所でした。たださっきテーブルがあった場所に大木が立っています。
「あれ? 扉を間違えた?」
ペティはしゃがみ込みました。アリサに会えるはずだと意気込んでいた気持ちが萎んでいきます。
「嘘つき……」
ペティはしばらくそのままの格好でいました。しかしふと立ち上がると、目の前の大木に近づきます。木の周りをぐるりと回ると、そこには扉が埋め込まれていました。
「嘘つきじゃなかった……」
ペティはもう一度その場で目を閉じて、しゃがみ込みました。そして胸元の鍵を痛いほど握りしめると、立ち上がりました。
「今度こそ会えるよね? アリサ」
ペティは今まで呼んだことの無いご主人の名前を呟くと、花がほころぶように微笑みました。そして扉を開き、その中に入って行きました。
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扉の中はカラフルなタイルが貼れた、趣味の悪い廊下でした。あまりにもギラギラとしているので、ペティは顔をしかめました。
「趣味悪い」
ようやく外の光りが見えてきました。ペティは走り出しました。
先ほどとは違い、目をつぶるほどの明るさではありませんでした。急に空気が変わった事をペティは感じ取り、鳥肌が立ちます。
「えっ?」
ペティは赤い瞳を大きく開きました。そこは凄惨たる景色が広がっていました。
明らかに薔薇が持っている自然な色では無い赤がテラテラと光っています。薔薇だけではなく薔薇のすぐ近くの芝生も赤に染められていました。
しかしすぐにペティは、その赤がペンキによるものだと気がつきました。そのペンキの跡の横に争った痕跡があることを見つけたペティは慌てます。
「アリサに何かあったのかな?」
不安になったペティは赤い瞳を潤ませます。
その時、後ろから草をかきわける音がしました。
「今日は酷い間に合ったな。しかしあの少女のおかげで我らの首は文字通りつながった。しかし、あんなにそっくりとは」
「いやはや、恐ろしい」
「あの子勇敢だったね」
トランプの体をした兵士がおしゃべりをしながら歩いて来ました。どうやら、二、五、七みたいです。
「その少女は、アリサという名前だった?」
「これはこれは、えっと、確かそんな名前だったと。なぁ七?」
「ええ!」
トランプの兵士たちはペティを見つけると、慌てて姿勢を正しました。そして早口に喋り、言い終わると蜘蛛の子を散らすようにどこかに行きました。
「そんなに慌ててどうしたんだろう?」
ペティはトランプの兵士たちが来た方向を見ました。そこには趣味の悪い真っ赤な城があります。そこにアリサがいることはなぜかペティには分かっていました。ペティは駆け出しました。その様子はまるで”白ウサギ”です。