後編
きっと私は彼女に恨まれるに違いない。そう感じた。
必死に彼女の悪かったこと、許せなかったこと。それを探し続けた。
しかし、彼女に恨まれてもなお、私は関東への憧憬を捨てきれずにいた。きっと、いい生活が待っている。
でも。
恨み言の一つや二つ言われるに違いない。それだけのことを、私はしてしまったのだ。
そんな時、私の許に一通の手紙が届いた。差出人は、彼女だった。
「忙しいけれど夢に向かって努力している姿がいつも格好良かったです。
君はもう、『そんなこと言ったっけ?』ってなってるかもしれない言葉に何度も助けられたりしました。
1つ決めていたことがあって、それはずっと君の味方でいようという事です。例えば酷いことを言われても、離れてしまっても、嫌われてしまっても、味方で居続けます。
このことがすごくつらいことがあった時や自分が孤独だと感じる時に少しでも救いになったらと思います。」
女の子特有の丸文字で、そんなことが書かれていた。
手紙を読んで涙を流すことなんて、物語の中だけだと思っていた。
ごめんなさい。心からそう思った。
彼女のために、私はこの街で生涯を終えよう。
私の夢が、憧れが。たった一人の女性に崩された瞬間だった。
そして、今も私はこの街で暮らしている。
彼女は、もういない。
連絡をしてこないでほしい。私からももう連絡しないから。
そんな言葉を残して、私の許を去っていった。
ここには、夢や憧れを捨て、決まっていた神奈川県に本社のある内定先も蹴り、一生を誓った相手にも捨てられた惨めで無様な私がいる。
死のうとも考えた。
でも、生きねばならない。もう一度最初から始めよう。
彼女からもらった手紙は、当分捨てることが出来ないだろう。
でも、それでもいいと今は思えている。
こんなに素敵な手紙は、私しかもっていない。
こんなにも温かい気持ちが、私の体の中をめぐっている。
彼女が私にしようとして、ついには出来ずに諦めてしまったこと。
今度は私がそれをする番だ。