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Flag number 04 「 時価販売 」

「予想以上の収穫になった…」


電卓一つで、麻の衣服数枚と袋等の道具、金貨2枚という待望の物を獲得したのだ。

ついでに、宿の情報まで聞いた為、無事に宿を確保出来た。

宿代は、食事抜き銅貨50枚、夕食代金は銅貨30枚、水浴び料金が20枚と合計銀貨1枚程と格安らしい。

夕食まで時間がある為、部屋にて今日起きた大切な事を纏めることにした。


「しかし、鞄の中身もちゃんとこっちに持ってこれて良かった。」


長年愛用している革表紙の分厚い手帳は、仕事の担当先である、大手建設会社の事業年度に合わせて、最近購入したばかりで新しい。こんな事に遣うつもりは無かったが、まさか異世界でファンタジーメモに使用するとは思わなかった。

そこに、国の名前やギルドの仕組み、硬貨や大まかな法律など書き込んでいく。

1番大切なものとして、「スキル」だ。

こっそりスマフォで撮影した画像を見ながら、危険度別に分けていく。


「今後は充電なんて出来ないだろうし、書き写したらもう売っちゃおうかな…けど、スキルの数が多すぎだよな。面倒い…」


スキル名と、ある程度の説明のみ書いていく。

残りは画像を流し見する作業だ。

税理士試験の勉強方法でよくした、10秒で記憶する点写方法というやつだ。

文章を記憶するのでなく、ページを頭に焼き付ける方法がある。

文章を読むのでなく、一部分を記憶し、何度も流し見ることによりページ毎覚える方法だ。

身に付けるまでが本当に大変なのだが、慣れれば便利な記憶法だった。


「まあ、税法より理解しやすくて楽しいな…」


意外とノリノリで楽しんでる直哉である。


スキルは、天性のものだったり、種族的なもの、訓練や経験により獲得するなどあるらしいので、どんなスキルがあるか知っておけば、より効率よく強くなれるはずだ。

しかも、有難い事にどのような性能かなども書いてあったのが行幸だった。


人通りのことが終わると、今後の予定を頭の中で組み立てていく。

気付くと夜なっていた為、食堂へと行くことにした。



「こ、この料理は…」


早速、予想外の事が起きた。

食事文化がとにかく酷い。

素材その物の味と言うのだろうか?

切る、焼く、出来上がり!の様な大雑把なもので、

カチカチに乾燥した黒パン、何か不明な筋張った硬い肉、彩りなんてない真っ黒の野菜炒め、温く薄汚れた水…

何歩譲っても、美味しいとは言えない代物が出てきた。

体力を消耗しないために、全部食べているが食事が苦痛というのは、今後どうにか考えなければいけないものだった。

そんな事を考えながら、疲れが溜まってしまった直哉は、部屋に戻ると早々に就寝するのであった。


翌朝まだ日が昇り始めた頃に起床した直哉は、体力作りをすることにした。

腕立て伏せ、腹筋、スクワット、ランニング、希にダンス…

一種類に拘らず、様々なトレーニングをこなし、呼吸を整える時には瞑想、そしてまたトレーニングを繰り返す。夕刻の食事まで延々と繰り返し、食事後はマッサージを施しまた就寝…

その後、身体作りをきっちり朝から晩まで、食事と睡眠以外の全ての時間を費やしてしていくと、33日目の夜、遂に待望のスキルを取得した。



[身体向上補正Lv1]

レベルアップ時に、各ステータスの上昇に10上乗せする。

また、魔法による身体強化に若干の補正がかかる。


[疲労回復補正Lv1]

心体の疲労時、回復時間を少し短縮する。



「よし!これでレベルアップで多少強くなれるはずだ!」


実際、トレーニングによる各ステータス向上については、3日目に確認出来た。

数値化としては1という、微々たるものであったが、本当に地球とは違う常識で驚いた。わかり易くて良いなと、簡単に受け止めた直哉は、目標スキルの二つをとるために必死に頑張っていた。


レベルアップにより、上昇するスキルの中で、バランスの良い身体向上補正を狙っていただけだが、疲労回復スキルという、副産物まで獲得出来たのは、喜ばしいことである。


だがしかし、周囲の評価については予想通りの結果になってしまった。

いい歳した男が仕事もせず、毎日筋トレを繰り返し、時には不思議な踊りを、偶にヨガっぽい不思議な軟体運動など、修行僧のような彼は、近寄り難い雰囲気を醸し出していたのだが、不思議と小さな子供達とは仲良くなっていた。

しかし、他の大人と話している事もなかったので、変人として評価されていた。

その事を、宿のおばちゃんから聞かされた時は、苦笑いで対応するしかなかったものだ。


ちなみに、この身体向上補正スキルを獲得する為には、筋トレだけでなくバランスよく、様々な動きで体を酷使する必要があり、条件が面倒なものであった。

また、筋力向上など他の個別向上スキルを取得していると、獲得不可となるものという、とてもレアなスキルである。


必要ならば出来るだけ良いものを、更には身体を鍛え直すついでにと、一石二鳥でいいじゃないか。と考えていた直哉だったが、この世界の人々は15になる頃には、既に何かしらの向上スキルを、日常より習得してしまうため、全能力向上とは珍しいものであるとは、知らなかった。


「後は、やっぱり…実践だな。」


次の目的はレベルアップだ。

幸いな事に、王国周囲の森林には、奥地でもスライム等の下位の魔物ばかりで、危険度は低いらしい。

ブロンズ冒険者は、そこで薬草採取などを行いつつレベルを上げ、ダブルブロンズへと昇格するのが一般的との事だ。

そうと決まれば、久しぶりの冒険者組合へと向かう。

目的の薬草採取依頼を受け、薬草の見本をしっかり確認したのち、森林へ行く前に、武器を購入するため武具屋へと赴いた。



「らっしゃい。」


カウンターに座る若い男は、こちらを見るなり興味なさげに視線を外した。

おそらくこちらの格好から、中位冒険者や金持ちに見えなかったからだろう。


武具屋の中で売られていたものは、短剣から長剣、はては誰が持つのかと思う程の巨大剣、ゴツゴツとした様々なハンマーや槍まで置いてあった。

しかし、やはり予想通り銃などの武器は無い。

店員に聞いても、鉄の玉を撃ち込むといった武器等知らないようだが、そんなものより筋力等の能力補正で威力が変わる、弓の方が良いだろうと一蹴された。

今回は、通称ビギナーズフォレスト[初心者の森]で討伐を考えているだけだから、防具の購入はせず武器のみ購入しようと決めていた。


「では、解体用ナイフと砥石、それとダガー2本に、弓と換えの弦、弓矢を50本程下さい。」


「あいよ。けどそんなに買えんのか?お前さん、見た所シングルブロンズだろ?手持ちいくらだ。」


「金貨1枚位ならギリギリ出せるんですが、足りませんか?ああ、不良品は売らない所だと、冒険者組合から聞いて来たんだ。」


「…まあ、丁度くらいだな。分かった用意する。」


嘘である。

購入予定の武具だった為、冒険者組合で既にどの程度か聞いていた。

普通の素材のものなら、およそ銀貨60枚位だそうだ。

身なりで判断し、尚且つ商品金額を明記していない。まずぼったくられる前提で対応しなければと思い、通常の倍を予定として金額を提示したのだ。

ここで冒険者組合での件を伝える事はしない。

組合は保証しないのだ。

全ての商売は商業組合の管轄であるらしく、揉め事になる場合は自己で処理すること。との説明もあった。

現状、揉めても力尽くでは解決出来ないし、最悪の場合、武器の購入が出来ないなんて事が1番困る。

騙してくるのならば騙されてあげよう。

上限を伝えておけば、それ以上の稼ぎは諦めるものだ。

お金は大事だが、これから当分はレベルアップがメインとなり優先度は低いから構わない。


儲かったとニヤけた顔を隠さず、店員は道具を揃えた。

念の為、その場で人通りの強度や、試し撃ち等確認させて貰う。

取り敢えず、購入予定をしていた物を買えた。

全部で銀貨97枚と結構したが、別に良い。

これで残りはあとわずかだが、ここからが生きる為の踏ん張りどころだと気を引き締めて外門へと向かった。



「あれが…変人…異世界人…興味深い…」


そんな直哉の跡をつける者がいたのであったが気付かない直哉であった。



======================================

名前:斎藤・ロットン・直哉

種族:異世界人

称号:巻き込まれた一般人


レベル:1

体 力:35 ➡ 45

魔 力:15 ➡ 25

攻撃力:15 ➡ 25

耐久力:21 ➡ 31

素早さ:24 ➡ 34

知 力:68 ➡ 70

器用さ:60 ➡ 70


固有スキル:

異世界言語変換、成長補正【弱】


習得スキル:

身体向上補正Lv1、疲労回復速度Lv1

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