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Flag number 03 「 収入はやっぱり冒険者 」

「さて、先ずは情報収集だな。泊まる場所が優先なんだが…」


城外に出てから、さっそく動き出したのだが、いかんせん街の地図なんてない。

引き返して憲兵に道を尋ねる気はないのだ。

取り敢えず、屋台や看板らしきものがある店を物色しながら、大きな広場にやってきた。

スキルによるものなのか、異世界の文字について理解出来たのは幸いだった。

さて、ではこれより情報収集だ。


「やあ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


「なーに?」


「冒険者って稼げるのかい?」


「当たり前じゃん!俺、おっきくなったら冒険者になるんだ!そんでいっぱい魔物狩ったりお宝見つけたりしていっぱい稼ぐんだ!」


大人ではなく、広場で遊んでいる男の子に声をかけた。

周囲から浮いたスーツ姿である直哉は、散策中に見かけた大人からは奇異の視線を浴びていたことから、印象はよくないと判断していた。

ならば、子供の方が楽なのである。


「ふむ…ありがとう。じゃ、冒険者達の建物とかあるのかい?」


「おじちゃん何にも知らないんだね。いーよ!案内したげる!」


「ありがとう!」


元手が少なく情報が不足している現状で、客商売に手を出すことも出来ない。

肉体労働すら子供レベルの数値の直哉にとっては上手く行くとは思えない。

地球にいた頃の唯一自信がある会計知識についても、この世界で通用するのは計算することだけだろう。

何より、レベル制度のこの世界、自身の安全を確保するためにも、強くなる事が最優先だと判断し、冒険者で稼ぎながら鍛えることにした。



「ここか…結構大きいな。さて、先ずは受付で冒険者登録をするんだよね。」


案内してくれた男の子に感謝を告げ分かれ冒険者組合を見ると、他の建物と別格の大きさだった。

中に入ると、やはり内部は広く一階と二階は吹き抜けになっているようで天井も高い、やや薄暗くはあるものの外からの光が照らしている、室内には観葉植物と丸形テーブルがいくつも配置している。まばらではあるが装備を着込んだ冒険者らしき人達がいる。奥には受付カウンターのようなものが三か所。その横には大きな掲示板に多数の紙が貼られていた。

早速、奥野受付へと移動した。


「すみません。冒険者登録をお願いします。」


「はい。登録についてご説明は必要ですか?」


受付嬢の一人に話しかけると、隣のカウンターにいた革製の鎧を着こんだ男がこちらを見て近づいてきた。


「おいおい!ちょっと待てよ!こんなひょろっちい奴が冒険者だって?ちっとも面白くねーぜ!」


「すみません。これで…」


「…兄さん。わかってるじゃねーか。いいぜ、好きにしな。」


金銭は交渉材料として最適である。

騒がれる前に即座に、そっと男の手に銀貨一枚を握らせて、騒がないのであればともう一枚の銀貨を隠れるように見せる。

男は、軽く頷いて元の場所に戻っていくと、周りの連中に何でもないと説明していた。

見ていた者は、何が起きたのかよく理解出来ていないらしく、何事もなく収めた直哉に警戒し、声をかけることはなかった。

正直いざこざは面倒なだけである。


「さて、説明お願いします。」


「………あ、はい!えーと…」


揉め事になるとでも思っていたのか、あっさり終わった事に呆けていた受付嬢は、すぐさま仕事モードへと切り替えてくれた。やはりプロである。

色々と注意事項などあったが、纏めるとこうだ。

冒険者登録後は、他国他領関係なく自由に出入りできるが、等級により関税が変わるらしい。等級は、4段階に分かれており、登録したばかりの初心者冒険者は一番下のシングルブロンズからである。等級を上げるとより良い待遇になるらしい。

等級別に説明すると。



ブロンズランク冒険者【初心者クラス】


シングル…採取・雑務の仕事のみ受注可能

ダブル …スライムやホーンラビット等の弱小魔物討伐が受注可能

トリプル…ゴブリンやアンデット等の知能の低い魔物討伐が受注可能


シルバーランク冒険者【中級者クラス】


シングル…オーガやウルフ等の中型魔物討伐が受注可能

ダブル …行者等の護衛依頼が受注可能

トリプル…シャドーやエレメンタル等の特殊魔物討伐が受注可能


ゴールドランク冒険者【上級者クラス】


シングル…ジェネラルクラス・キングクラスの魔物討伐が受注可能

ダブル …エンペラークラス・ロードクラスの魔物討伐が受注可能

トリプル…ドラゴンやジャイアント等の大型魔物討伐が受注可能


プラチナランク冒険者【英雄クラス】


災厄クラスの魔物を討伐する実力を持つが、現在世界に3人しかいない。



他にも、冒険者は魔物のスタンピードなどの緊急事態には強制招集を受けるが、国同士の戦争には参加することが禁止されているなど、国や貴族の権威の影響を受けない立場の組織と、実に都合が良かったのだ。


「冒険者カード発行のため、申し訳ございませんがステータスカードの提示をお願いいたします。また、氏名と種族のみで構いませんので、一度ステータスカードに開示したいものだけを念じて更新して下さい。」


言われた通り、再度唾液を付けて名前等のみ提示すると、受け取った受付嬢はステータスカードを見て震えていた。


「これは…異世界人?……は!その服装…王城にて召喚するという噂が…ということは勇者様!?」


「違います。異世界人ではありますが勇者ではないのです。しかしとある事情がありますので、出来れば組合長とお話をしたいのですが。」


騒がしくなりそうだと思い小声で注意すると、意図を組んでくれたのか上階へと案内してくれた。目立たないように気を遣ってくれたのは嬉しい限りだ。

そうして連れて来れられたのは、組合長室だった。


「あら♡やだ♡結構好みよ~♡ はぁ~い♡ ホーソン王国首都ギルドマスターのアラリコよぉ~♡ 異世界から来たって本当なのぼーや♡」


全ての語尾に♡が飛び散っている。演技でなければおねぇという相手だろう。

見た目は中肉中背で少々髭を生やしたおっさんであったが、いかんせんキャラが濃ゆそうだ。


「そうですね。カードを確認して貰えれば分かります。」


念のため、再度唾液を付けて情報を更新し提示した。


「確かにね~。いつの間に王様達は勇者召喚しちゃったのかしらぁ~?」


「先にお話しさせて頂きますが、私は勇者ではないのですよ。」


「んん~?どういうことかしら?」


「勇者召喚に巻き込まれた形でしてね。まあ、勇者と同じ世界から来ているので、同郷の仲ってやつです。」


「けどぉ、なんであなた一人だけ冒険者登録してきたのぉ?」


もっともな質問である。とりあえず用意しておいた筋書きを話すことにした。


「これは内密な話になるのですが、異世界から来た私達の視点で、この世界を見て回るべき役割が必要と考え、勇者とは別行動を取ることにしたのですよ。王様も認めているところです。後々勇者のみんなには私の口から、見てきたことを伝える予定です。」


「…つまり、あなたの報告で、力を付けた勇者達が判断を下す。ということねぇ…」


「本当は極秘事項なのですが、冒険者登録をする際には、私が異世界人と分かってしまうため、冒険者ギルド長には伝えていたほうが、今後のために必要と思ったのです。」


何かを考えているようで、立派に揃えられた髭を弄りながらギルドマスターはぶつぶつ独り言を話していた。

本当の事情を話すわけにもいかない。弱者レベルの自分を、出来れば陰ながら支援して貰える確かな存在は必要なのだ。

ここに来る間、案内してくれた子供からは冒険者組合の評判を色々と聞いていて、実力主義の世界であるらしくその中で王都のギルドマスターはかなりの人気があったのだ。

まあ、まさかオネエとは思っていなかったが…


「理解出来たわぁ!魔王を倒す勇者様を、敵に回すことがないようにしないとねぇ♡ ちょっかいかける荒くれ共もいるから、受付の子と合わせて気を付けるように手を回しておくわぁ♡」


「ありがとうございます。」


「いいのよ♡ そ・れ・よ・り、あなたは独身?今日は一緒にお食事でも?」


「いえ、故郷に大切な家族が居ますね…それに、やらなければならない事がまだまだありますので。」


「そう…残念ねぇ。」


上手くいったようでほっとした直哉だった。

先ほどのように絡んでくる面倒な奴らがこの先減ってくれるだけで有難い。

また、オネエのあしらい方は仕事の付き合いでいったオカマバーで経験済みであったのが幸いした。

彼らは、断り切れない草食男子を好むのだ。あの手この手で接近してくるので、きっぱりと断りを入れる必要がある。

その際の注意としては、嫌いだと拒絶を全面に押し出して断らないことだ。

怒らせるとかなり面倒な生き物なのだ。

断り方としては、離れていても妻子を大切していると強調して普通の男性だと理解させることだ。

そうすると、向こうもそれ以上踏込みずらくなる。

もの凄く残念そうな顔をしているギルドマスターだったが、即座に別の話題へと切り替えさせて貰うことにした。


「ところで、電卓というものに興味ございませんか?」


落ち込んだ後は相手を喜ばせるチャンスでもある。

残りの銀貨では今後不安であるので、少々稼ぐことにした、したたかな直哉であった。

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