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Flag number 01 「 与えられるスキル 」


「ここは…?」


気付くと真っ白い空間に直哉達は立っていた。

地面まで真っ白く、自分自身の影すら存在しないため、宙に浮いている様で平衡感覚が狂う。

直哉と高校生5人組、一緒に巻き込まれた家族4人組は何故か居なかった。

高校生達はそれぞれで寄り添いあい、話しをしている感じだが、若干離れている直哉にはそれは聞き取れない。

さて、どうしたものかと考え始めた頃、直接頭に響く透き通った声が聞こえてきた。


「親愛なる我が子達よ。ここは創造神であり法則を司る我がテオトルが住まう地であり、恐れることはない。」


声だけでも存在感を与えてくる威厳ある話し方である。

姿は見えないが、皆空を見上げて反応し始めた。


「神様!!本当に!?」


勇者召喚だ!とあの騒ぎの中、テンション上がっていた男子高校生だったかな?


「そうである。そなたらは残念なことに、とある世界からの干渉を受け、その世界に往くことになった。取り消すことは出来ぬのだ。」


「勇者召喚ですね!」


何故だか目が輝いている感じがするが、適応力ありすぎではないだろうか?

周りの高校生達は不安とか怯えでまだ警戒しているようだが、彼は喜々として未だ見えぬ存在へと話しかける。


「…話が早くて良いな。そうだ、かの世界に住む者が我が世界の地球に召喚の儀よりそなた等を強制的に転移させることになった。その世界では魔人種と呼ばれる者と人種が対立しており、対抗手段として他の世界から力のある者を引っ張ってくるというまったく愚かな行為である。」


愚かというより、凄く迷惑だ。と直哉は思った。

これでは、仕事の段取りが、引継ぎなんて他の人達も手一杯だろうし、期限は31日でも5日前には報告しないと税金の納付額を準備する時間なくて苦情くるぞ…

ここに来てまで、そちらを思案してしまう社会にどっぷり浸かったリーマンの性である。

そんな別の不安がよぎりながらも話は進んでいた。


「それって俺らに、そんな漫画みたいな秘めた力があるってことですか?」


「そのようなものは無い。寧ろかの世界の理で比べるならば、人種の子供の方が強い。」


「え!?じゃ、どうしようもないじゃん…俺ツエーしたかったのに…」


見えない存在から、憐みが感じられたのは、直哉だけではなかったようだ。

質問していた高校生なんて、がっくり膝から崩れ落ちていた。

更には男泣きのように顔を上に向け涙を流していたのは若干引いてしまう直哉であった。


「しかし、我が子達をそのような世界に放り出す事なぞ我には容認できん。かの世界の理に合わせた力を与えようと思い、ここに来させたのだ。しかし、その力も多数渡せるわけではない。個人ごとに保有できる数に限りがあるらしいのだ。いくつか用意していたので、選択するがよい。」


すると突然目の前に選択パネルのようなものが浮かんでいた。


======================================

獲得可能スキル一覧(対象者保有容量 0 / 3 )

・魔力操作

・魔力増加

・魔力回復

・剣術

・盾術

・斧術  …etc

======================================


直哉は格闘経験しかりゲームなどしたことが無いため、よく分からなかったが、こういった能力が存在する以上は、かなり物騒な世界であるとだけは分かった。

先ほど男泣きしていた男子高校生は、奇声をあげて喜んでおり、周りの学友達と相談しながら和気あいあいと選び出していた。

一応ざっと目を通していると、膨大な量があったので、直哉はその中で物騒な能力とその他の能力の区分けをしていると、結構な時間が経っていたようだ。

また突然、神と名乗る者から声がかかる。


「選び終えたらあの光の中を通るのだ。その先に進めばかの世界へと往くことになる。ここに留まることは出来ぬ。」


高校生達は既に選び終えたようで、不安もあるがこれからに期待した表情に変わっており、次々と光の中に入っていった。

若い子の適応力に関心している直哉であったが、神から話しかけられた。


「して、そなたはまだ選びきれてないようだが…そなたにあったものを与える事も可能だがどうする?」


余計な事だと思っている直哉は、ここはバッサリと断ることにした。


「不要です。」


「何故だ?理由を聞いても?」


「神と言われても、よくわからない存在から与えられたものに価値はないかと。」


「はっきりと断るな。神であることは確かだが…」


「私にとっての神は死んだのです。」


「存在しておるぞ!勝手に殺すでないわ!」


「証明出来ない以上は、不審者と一緒ですので、変なものを受け取るわけにはいきません。というより正直怖いので。」


「神の存在証明なぞ…確かに出来ぬわな。して、選ばずに行くつもりか?」


「人は己の力で努力しないと、身に付きません。神頼みなんてなんの宛にもなりませんので。不要です。」


本音ではあるが、実際には、この自称神が胡散臭いだけであった。

都合よく有利なものを、無償で貰えるなんて、警戒するだけである。

百歩譲って安全なスキルだとしても、与えられた才能より、必死に努力した経験の方が何倍も価値が有るのだ。これまでの人生の中で培ってきたものが力になっていると信じている直哉には、この申し出はありがた迷惑レベルなのだ。

しかしながら、一つ大事な事だけは聞いておきたいと思い、直哉から質問を投げ返ることにした。


「それと、ひとつ気になることが。」


「なんだ?申してみよ。」


「私の午前中の…いや、これから予定していた全ての仕事がどうなるのかを知りたいのですが。」


「…かの世界と地球の時間は同じであるようだ。その為、地球で消えてしまったそなたらの事は失踪扱いとなるだろう。その仕事とやらも全て、急遽他のものに引き継がれる事になるだろうな。」


という事は、誰にも連絡することが出来ず、直哉達は神隠しの如く消えてしまったとなる。

当然、無断欠勤及び行方不明で会社を解雇の上、借りていたマンションの家賃を支払えず、強制撤去処分がいつかなされ、年数が経てば死亡扱いされることになる。


「まじか…最悪だ…仕事どころか貯金やなんやら全て水の泡ってことか…これまでの人生プランが…酷すぎる。やはり神は死んだのだ。」


「いや!だからここに居ると…まあよい、早く往くがよい。この空間に留まることも微量ながら心身を消耗するのだ。親愛なる者よ。よかろう。ではかの世界に往くがよい。己の力で生き抜いてみよ。」


ぶつぶつ呟きながら、涙を流している直哉の姿が痛々しく、遂に神もスキル付与のことを勧められる状況では無いと判断したのか、急かす様に往くことを進め始めた。

気落ちしている直哉は、ふらふらとした足取りで光の中に入っていき消えていった。





「行ってしまったか…先に往った家族と学生達には加護スキルという名で監視を付けられる事が出来たが、結局、あの者には何も干渉することが出来ぬようになった…まあ、よかろうて。生きていくには難しい世界のようだ。特異点になろうはずもない。私のもう一つの世界管理の目的の障害になるまいて…」


偶然ではあったが、神様の陰謀フラグを回避する直哉である。

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