非日常は突然に・・・
~ ちゅんちゅん ♫ ~
一人身の社会人の朝は早いものである。
起床し洗濯、料理、仕事の準備をこなす為には相応の時間に起きる必要がある。
学生の頃の方がよっぽどゆっくり出来たのだ。
いつも通りの朝の作業を終わらせ、駅に向かう。
彼が住んでいる地域は、控え目に言っても田舎である。
午前7時45分。都会でいう、朝の通勤ラッシュは存在せず、無人駅と言われる寂しい駅構内であった。
いつもは、ぽつんと一人でいるのだが、今日は何やら騒がしい方々がいるようだ。
龍二君、今日の朝連行かなくて良かったの?
大丈夫!俺って既に県メンバーのお声が掛かってる優秀プレーヤーだから!
調子に乗って練習サボると外されるかもよ?
調子に乗るために練習して強くなったんだぜ!俺は!
直哉が視線を向けると、そこには男女5名の高校生達の姿が会った。
その奥には四人組の家族が仲睦まじく電車を待っている。
今日はちょっと騒がしいだけだと割り切り、一日のスケジュールを考える。
「午前は巡回監査、帰社後に1月決算申告の法人税申告書作成が2件、必要資料は既に伝えているから午後には届く予定をしているから大丈夫…あ、あいつの消費税の確定申告の仕事見てやらないとな。まったく…そろそろ2年目なのだからある程度は自力で覚えてくれないと…いや、まだ早いか。」
口に出してしまう癖も本人は気付いていない。
そうして熟考に入りだしている中、周囲が騒がしくなった。
---- グワァン!!! ----
音で表現するならば、そんな感じで突然視界が揺れた錯覚がした。いや、実際今なおも蜃気楼のように線路が揺れている状態である。
「なんだなんだ!」 と構内が騒がしくなる。
よく周りを確認してみると、夜のように景色が暗くなっており、何故か身体が重い。
現状を整理しようとしても、唖然とするばかりで上手く出来ない。
高校生達も家族連れも驚きの声をあげている。
オロオロしている彼らの足元が突然光り始めると、薄い膜のようなものに包まれていく、
ぼーっと眺めていると、直哉自身にもそれが出現し、触ってみると壊れそうもなかった。
「キタコレ!異世界転生だ!勇者召喚だっ!あぅ…」
高校生の内の一人が異常なテンションのまま、消えていった。
どんどん消えていく周りを見て、面倒だなって思った直哉であった。