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Flag number 06 「 冒険者との邂逅(下)」


薄暗い森を進んでいくと、そこだけ陽の光が差し込む、小規模な丘に辿り着いた。

何かを象っていたのか、古くなり欠け崩れた石像が二つ、丘の中央には一際大きな樹木があり、至る所で様々な色の背の高い草や花が咲き誇る。

とても綺麗な場所だったのだが、そこには2体の魔物がいた。

毛髪はまばらに生え、しわくちゃの顔立ちに、生気のない淀んだ目玉。

身長は大人と子供と父子の組み合わせみたいだ。

2体とも、顔よりも大きな掌とアンバランスな体型。

ボロボロな革製の服で酷くみすぼらしい。

足元には棍棒みたいな武器と、何かの動物の死体があり、2体はそれを弄って遊んでいるようだ。


見つからないように風下へと移動し、話し合う。


「リトルゴブリンとゴブリンですね。私達を襲った仲間かな?ダレン君飛び出しちゃ駄目だよ。」

「分かってるっすよ!…あっ!俺達の道具あったっす!」


指し示す方向の石像の近くに、皮袋が4つ

落ちていた。


「…あいつら…倒さないと…取れない。」

「先に強化魔法掛けますね。2体いるので、別れて戦いましょう! ゴブリンの方は、耐久力がプレストードよりあるので、先にリトルゴブリンを倒したいですね。」


「では、弓を使える私が、反対側からゴブリンを受け持ちますので、3人でリトルゴブリンをお願いします。討伐後に4人でゴブリン倒しましょう。」


ここまで来る間に、直哉の実力を見てきた3人は、反論すること無く頷いた。

その後、レレイから強化魔法を受けた後、2手に別れる。

幸いな事にゴブリン達は、動物の死体弄りに夢中で、回りの警戒は薄い。

直哉は気付かれないよう、うつ伏せになり背の高い草花を利用して移動をしていく。大きく迂回していくと、ギャギャギャッとゴブリン達の濁った声が聞こえる距離まで近づいた。


背中にある弓を構え、先制攻撃に集中する。

弓術スキルはあるが、まだ頭部を狙い撃ちする自信は無い為、照準はゴブリンの背中にした。


「さて…見たとこ奴らの武器は、棍棒かな?出来れば腕に当たらないかな…まあ、いいや。集中して……撃つ。」


呼吸を整え、当たると確信した瞬間に弓を射る。

昨日の紫スライム戦では、相手の攻撃を避けながらの射撃だったが、今回は邪魔の無い力ある一投だった。

シュッと風を切るいい音が鳴る。

矢はゴブリン達に気付かれることなく、見事に背中の中心に命中した。

唐突にお腹から弓矢が突き破って、風穴があいたゴブリンは、甲高い叫び声を出し、その場に倒れもがくと、ピクピクと痙攣し続ける。

一方のリトルゴブリンは、驚きつつ周りを確認し始めるが、その知力の低さから、弓矢が飛んで行った方向を警戒していた。

背中を向けて棒立ちになっているリトルゴブリンに第2射を放つと、先程と同じように風穴をあける結果になる。

ゴブリンとは違い呻くことなく、直ぐに倒れ動かなくなった。


2体のゴブリンが動き出す気配は無い。

離れた位置にいたリオン達が姿を現し、ゴブリンの死体を眺めている。

先程までゴブリン達の不快な声が響いていたこの場所は、今は風の音だけがよく聴こえてくる。

気持ちの良い風だ。久し振りに煙草吸いたい。と、そんな事を考えていた直哉だった。



「……え? 倒しちゃったんですか?」


「…決して、わざとではないですよ。」


唖然とした表情で近付いてくる3人だったが、直哉本人もどうしたものかという表情をしているのを見て、変な空気が流れる。

気まづくなり取り敢えず死体処理を行い、荷物を回収する一同だった。

ついでに、直哉の依頼である上質な薬草も大量に採取出来た。

本来はビギナーズフォレストに入る浅い地域で採取する普通の薬草で良いのだが、奥深い場所に生える薬草は、それらよりも上質な回復薬となる。

ひと通り済むと、日が暮れるのを見越して元来た道を戻ることにした。




「スライムは楽で楽しいよね〜♪」


帰り道に出て来た、何故だか懐かしさを感じるスライムの群れに遭遇するも、ダガーの消耗度を考慮したのか、落ちている岩石を持ってプチプチと職人の如く討伐していく直哉の姿に、さらに驚くダレン達はもう何も言えなくなっていた。




なんとか夕暮れ前に、出発した魔よけの木に辿り着いた直哉達は、漸く緊張の糸を解く。

今夜の夕食は、帰り道でレレイが狩っていた森兎の素焼きと、再度見つけたラクシャの実だ。

いつの間にと狩りを…その疑問 は、

今夜は森兎肉ですよ〜♪

と、笑顔で首を斬られた森兎を持つ、彼女の姿に気圧されて、聞けずじまいであった。

食事も済んだ頃、ダレン達から直哉に話しがあるらしい。

パチパチとなる焚き火がそれぞれの顔を照らし出す。真剣な表情、期待に満ちた表情をしたダレンとレレイであるが、表情の乏しいリオンまで揺らめく炎で、何故だか不安げな表情をしている気がした。


「ナオヤさん!本格的に俺達とPT組んでくれないっすか!」

「私達、相談したんです。そうなって欲しいなって…」

「…強い…秘訣…いっぱい…教えて?」


これまで薄々ながらも、キラキラした視線は感じていた。

直哉も彼等を観察していたつもりで、印象ほ騙して近付いてきた様子は無い、普通の冒険者と判断している。

それに、この世界で冒険者として生きていく為には、必ず仲間は必要だと思っており、これは良い機会と思っている。

それに、出来るだけ低いレベルの方が、計画していた事を試すのに丁度良いのだ。

少し懸念するならば、仲間と一回り以上も離れている彼等と組む事になって、今後どうなるのかと思ったのだが…些細な事だと振り払う。



「嬉しいよ。こちらこそよろしくね。」


思考が長かったせいか、不安そうな顔した彼等にそう答えると、わぁっと喜び出すダレン達が初々しくて、直哉も笑顔になってしまう。


「じゃ!仲間になったので、俺らのステータスカード見せて上げるっす!」


そう言うと、3人は直哉にステータスカードを渡してくる。そこには名前以外にも、レベルやスキルを含めた殆ど全て情報が開示されていた。


「…いいのかい?」


「勿論です!私達は既に共有してますので。」


ステータスが分かるこの世界は、平民や貴族問わず、他人に自分の情報を開示する事はない。

王城の時は、無警戒では無かったがあまりにも弱いと思いそれを利用したが、今現在見せろと言われても拒否するだろう。


特にスキルと称号は隠さなければならない。

貴重なモノを所持している者は、貴族や力のあるものに搾取されたり、将来犯罪となりそうなスキルを所持している者は、それだけで危険人物とされる為慎重になる。


しかしそれでも例外はある。

開示することが有用になる場合だ。


冒険者の場合は、仲間内で見せ合う事もある。

日々、死が間近にある戦いに少数で挑む彼等は、個々の役割が非常に大切となる。

また、ステータスを自ら周囲に広める者もいる。名が広まればそれだけで指名依頼を受ける事もあるからだ。

実際に、プラチナクラスの一人は、年に1回冒険者組合を通してステータスを開示している。


「それなら、私も……あ、どーぞ。」


異世界人である身分を明かすべきか…

そう考えたのは一瞬だった。

王族やギルドマスターが知っている以上、いつかバレる事を心労にする必要は無い。

ちょっと珍しい。そういう種族で構わないだろう。

事実、最初からチートを所持している勇者達とは違うのだから。


「異世界人って始めて見る種族ですね。」

「うぉー!レベル高いっす!てか、レベルとステータスが見合ってないっす!」

「…異世界人…だから…強い?」


「んー。少し前に王国に勇者が召喚されたって、以前お披露目のパレードがされたよね? 私はその勇者召喚に巻き込まれた、向こうの世界の一般人なんだよ。だから勇者ではないんだ。召喚された頃は、人族の子供より劣るステータスだったから、勇者達とは比べられないくらい弱いよ。」


3人は唖然としていた。

質問する立場だったが、逆に色々と質問されたが、また落ち着いてからと話しを戻しす。

邪推すること無く、純粋に受け入れられほっとした直哉は、3人のステータスで疑問に思った点があったので、確認してみる。


「この黒文字で区分されたスキルって…何でしょうか?」


3人の獲得スキル欄には、レベルアップ時のステータス向上系が1つある他、その他として、ダレンは2つ、レレイは1つ、リオンは固有スキルを含め3つ所持しているが、それとは別に、各自1つの黒字スキルを所有していた。

黒文字のスキルは、自称神に勧められた一覧には無いものだった。


「あ、それはタイプスキルと呼ばれるものです。職業とは別にタイプがあって、それについてもレベルがあるんですよ。上限に達すると、上位のタイプや別のものに就いたり等出来ます。ステータスカードで変更出来るのですが…やってみましょう!」


レレイからやり方を教えられながら、早速することにした。

現在表示されている職業を、細かく表示するように意識してみる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

職 業:冒険者


タイプ:現在登録なし


「選択可能一覧」


見習い剣士、見習い弓使い

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


タイプは1度選択すると、最大Lvまで上げなければ変更不可能のようだ。

取り敢えず、選択可能な見習い剣士を選んで見た。

すると、スキル欄に [ 一閃 ] とダレンと同じ黒字スキルが追加された。

使い方がよく分からなかったので、ダレンに感覚を拙いながらも教えてもらい実践した。

構えたダガーが、光の筋を残していつもより素早く振り抜けた。連続する事は出来なかったがそれでも威力はありそうだ。

一通りの確認が終わり、再度腰掛けると直哉はため息を出す。


「こういう大切な事は、召喚されたあの日に知りたかった…」


何故落ち込んでいるのか理解出来なかったダレン達だった。


「一般的な理論では、スキルを覚えてから、タイプが派生される流れだそうです。けど、何を取得したら派生していくのか、というのはまだまだ解明されていません。」

「タイプスキルは強力なんっす!普通のスキルとちょっと違って、体力を削ったり制約があったりするけど…でも!職人さんとかなら、それに合わせた行為で上がるんっすよ?」


「とても勉強になったよ。ありがとう。他には…」


その他にも、ダレン達が何処の宿屋を拠点としているのか、この世界の事など、これまで知りたかった細かな情報を聞いて、その日の夜は暮れていった。




翌朝、街へ出発する準備を整えた直哉達だったが、レオンが何かの気配を捉えたのか皆に警戒するように伝えた。

森の木々の向こうから、何者かが1人歩いてくる。

全身を覆う灰色のフードコートに、鼻から下の顔半分を布で隠している細身の人物だった。


「そう警戒しないで貰いたいわ。何もしないわよ。私はそこの人に用があるのよ。」


声質からすると女性のようで、指差した先の人物は直哉だった。

直哉は、警戒しつつ前に出る。


「どの様なご用件でしょうか?」


「答えを聞くまでは、顔と名前を晒せない事は先に謝るわ。用件は私と一緒に来て欲しいってことよ。」


「何故でしょうか?」


「貴方が勇者達と同じ世界から来ているのは知っています。そうね…これは伝えても構わないわね…私は、自由の翼の1人なの。」


「自由の翼ってあの!?」


ダレン達の反応から、彼等にどの様なものか小声で確認してみる。


「……現国王に反旗を翻す…闇組織。」

「貴族や商人が水面下で作った組織って噂されてます。誰が入っているのか掴めない為、なかなか国も対応出来ずにいるそうです。」


聞くと物騒なもののようだが、革命軍とかそのようなものだろう。


「貴方達もこれからの事は、周囲には迂闊に話さない方がいいわよ。で、どうなの?付いてきて貰えるかしら?」


マスクで口元が分からないが、交渉する気が無い態度は、にやけているに違いない。

もう少し相手の情報が欲しいところなので、微笑みは絶やさないようにして、


「お断りします。」


相手の反応は、驚いた後に直ぐ冷静になる、さてどうくるか。


「…あなたの事は色々知っているのよ。今現在、勇者という力を保有した王族は、その力で近い内にきっと他国と武力衝突…侵略するわ。勇者達と同じ世界から来た貴方ならば!」


こちらの事はよく知っているならば、貴族との繋がりはやはり本当の様だが…


「優先すべき事があるので、お断りします。」


再度断る。

以前の直哉ならば、相手を不快にさせる言動は取ることはなかったが、召喚時の勇者達のステータスを超えたこと、かつダレン達のステータスを見ることが出来たので、自身の能力を比較出来た為、最悪の場合ダレン達が逃げる時間を稼いだ後に、あわよくば自分も逃げ切るつもりだ。

こういう時の為に強くなってきたのだ。

しかしまだまだ勇者達に勝てるなんて思っていない。巻き込まれるのは避けなければならないのだ。

それに、こういった権力者に対して自分の意見を押し通す賭けに出なければ、今後もずるずるとなるだけだと思っていたのだ。

そんな決意を込めて向かっていると、相手はふるふると震えていた。


「なんでよ!貴方にしか出来ない事もあるのよ。それで沢山の人が救われるのよ。…もし断るのであれば何をしてで」


最後の言葉を聞いた瞬間、すっと無表情になる直哉に気圧された女は、自分が失敗したことに気付く。

今回は個人の興味で変人と呼ばれる異世界人である直哉を付けただけで、組織からの指示は受けていない。

話し掛けたのは、これまでの観察から人柄に問題無さそうだと判断したのと、直哉が仲良くする相手が駆け出し冒険者の、まだ子供であり制止易いと思ったのだ。

だが、実際には直哉の反応は、完全な拒絶だ。読み間違えたと思考を切り替えるが既に遅かった。


「そういう脅しがあるならば、国王側に付きます。若しくは、例え無謀でも其方を潰す選択をするでしょう。」


「え…いや、待って。」


フードの女は、何やら混乱している様だったが、意思を込めて一瞥すると黙ってしまった。

力尽くでの戦闘になる感じも無い。


「では、失礼します。」


ダレン達を先頭に、フードの女性の反対側から森に入っていく。

ある程度歩き続けると、先程の件で微妙な空気になっていた雰囲気を壊してくれたのがダレンであった。


「みんなごめんね。やっぱりこういう事が起きるみたいだから、やっぱり」


「もう遅いっす!…仲間なんだから水臭いっす!」


怒った顔でだつたが、後半の言葉が本音の様だった。

他の2人も同様に頷いていた。


「にしても、ナオヤさん…すっげー怖かったす!」

「……僕らの時も…最初はあんな感じ…だった。」


「ごめんね。ああいった人とは関わりたくなくてね。でも、みんなの時はダレン君が裏表感じさせなく対応してくれたから、今があるのかな?」


「あの時に対応してくれたのが、ダレン君で良かったです。久し振りにそう思いました。」

「…よくやった…感謝。」


「なんか誉められてないっす!酷いっす!」


それからは、再び4人に笑顔が戻り、その後は先程の女性を警戒しつつ、街へと帰還した。


たった3日の初めての冒険者活動は、予想よりも信頼出来る仲間に出会う事となり充実した直哉だった。

連休中の入院…悲しかったですが、本日退院しました!

ヾ(●´∀`●)ノ゛キャッキャッ


登場魔物

======================================

討伐ランクE

種族:ゴブリン

レベル:15

体 力:108

魔 力:15

攻撃力:150

耐久力:122

素早さ:45

知 力:15

所持スキル

怪力Lv2、痛覚遮断Lv1、悪食Lv2、

======================================

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