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日替わり?!レアガチャ勇者様!  作者: 窓際ななみ
うらぎりのしてんのうの章
35/63

第三十四話 裏切りの四天王!

 少し話を整理しよう――。


 カガの話では、魔族の鉄人と呼ばれた僕以外の四天王の上位三人が、人間の勇者と思われる者に倒されてしまったということだった。

 僕でも、人間の能力については、ある程度把握していたつもりだった。個人の能力の差は歴然で、例え人間の国の軍隊が相手だとしても、四天王の敵では無いくらいの実力差はあったはずだ。

 ……力の差をもしかすると、何か人間以外の巨大な力によって、倒されてしまった可能性が高そうだ。人間の世界は、遥か昔、魔族の天敵となる神族も住んでいたからだ。その神族が、残した何かの神具によるものなのかもしれない。それとも、もしかすると僕が引きこもっていた10年足らずで人間の英知が、魔族を凌駕した可能性も捨てきれない。


 ……いや、そんなことはどうでもいい。

 問題は、僕の立ち位置だった。四天王がまさか、僕一人になるとは予想もしていなかったからだ。このままでは、僕は四天王最後の一人として、魔王軍を率いることになってしまう。

 自慢ではないが、僕はこういった指導者には向いていないし、魔族の人望……いや魔望というべきか、そういったものは無いに等しい。唯一、メイコとマイコの二人だけは僕に優しく接してくれるけど。 


「それは大変だね。じゃあ、僕は忙しいから、新しい四天王の選別はカガに任せるよ」


 僕は、考えるのを止め、今までの話を聞かなかったことにして部屋に戻ろうとすると、僕の肩をカガが掴んでくる。


「この事態に何をいっているのですか!?コウメイよ!今、貴方が魔王軍の最強の戦士になったのですよ!さぁ、魔王様の為に今こそ貴方の真の力を発揮するのです!ハッハッハッハッハッ!」


 いつもは僕の事を小馬鹿にしているカガも、ここぞとばかり持ち上げてくる。こういう時だけ持ち上げられても、正直困るんだけど……。なんとかして、この場を平穏にやり過ごす事はできないだろうか。

 とりあえず、まず話題を変えることにした。


「……そういえば、魔王様はどの位で復活するの?」

 

 そういうと、カガは怪訝そうな表情をする。


「もうすぐ、魔王様は復活します……」


「そうなんだ……1ヶ月くらいで復活するのかな?」


「いいえ、もう少し時間がかかります」


「じゃあ、半年……くらい?」


「いいえ、もう少し時間がかかります……」


「……じゃあ、10年位経てば流石に復活するよね?」


「いえ……もう少し時間が……」


「…………」


「…………」


 祭壇の間に少し長い静寂が訪れた。もしかして、魔王軍はかなりヤバイ状況ではないのだろうか。

 魔王様の復活は10年後も見通しが立っておらず、人間界に侵略をし始めた直属の四天王は、自分を残してほぼ壊滅状態。

 魔族が人間より戦闘能力に長けるといっても、人の英知は計り知れない事は過去の歴史が語っている。戦力を整えて攻め込まれたら、魔王軍といえどもの敗北する可能性は高い。


 ……僕が、この先生き残る道はあるのだろうか? 


「コウメイよ、先程の話は内密で頼むぞ」


 カガは、表情を強張らせて僕に念を押してきた。


「……分かってるよ。そんなことが他の魔族に知られたら、大混乱だよ……」


「ねぇ、カガ?とりあえず四天王が敗れた事はまだ、他の者には伝わっていないんだよね」


「ん? ああ、今知っているのは、私とコウメイだけである」 


「じゃあ、カガはなるべく混乱しない程度に、新しい四天王になりそうな猛者を選別しておいてよ」


「コウメイは、どうするのだ?」


 カガは、少し前向きな僕の意見に少し驚いた表情をしていた。 


「僕自身が人間界に行って、現状を視察してくるよ。今は迂闊に動かないほうがいいだろう?」


 僕は、僕がこの先生き残るとある手段を考えていた。今は、その可能性を検証するための情報が欲しかった。


「おお、やはり腐っても魔王様に選ばれた四天王ですね! ブンダバァー!」


 カガは、大げさなリアクションを取りつつも、僕の意見に賛同してくれたようだった。

 

「……じゃあ、僕は早速準備してくるから、その間、魔王軍の事は後は宜しく頼むよ」


「うむ、このカガ、魔王軍と新しい四天王の選別、確かに頼まれた」

 カガは、上機嫌に僕を祭壇の間から送り出してくれた。


 僕は、祭壇の間から部屋に戻るまでに、これからの事を考えていた。


 「……どうやって、人間界に亡命しようか――」


 ぶっちゃけいうと、僕は魔王様がどうなろうとあまり興味はない。僕が幸せな生活ができれば、正直周りはどうでもよかったのだ。そういった意味でいうと、好戦的な魔族の中にいるよりは、人間の中に潜んでひっそりと暮らしていた方が僕には性に合っているかもしれない。

 

「おかえりなさいませ、コウメイ様」


 メイコの言葉で、僕は我に返る。どうやら、これからのことについて考えているうちに、部屋の前まで戻ってきてしまったようだ。


「お疲れでしょう。コウメイ様、お茶を準備しますので、しばらくお待ちいただけますでしょうか」


「うん、宜しく頼むよ。メイコ」


 僕は漆黒のマントをベッドの上に放り投げると、部屋の奥にあるテーブルの席に着いて、服の胸元のボタンを外すと、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「ねぇメイコ、僕、人間界に行くことにしたんだ」


 その瞬間、部屋に陶器の割れる音が鳴り響いた。どうやらメイコが、陶器製のカップを落としてしまったようだった。メイコにしては、珍しいミスだと思った。

 しかし、メイコはそんな壊れたカップ等に目もくれず、僕の方に駆け寄ってくると、僕の方を両腕でがっしりと掴んでくる。


 「しょ、正気ですか!? い、いきなり最前線とか、いくらコウメイ様が四天王だからといって無茶すぎます!」

 「コウメイ様は、もうずっと引きこもり……そんなか弱いお方が人間界にいったが最後、野蛮な人間に非道な行いをされ、殺されてしまいます! わ、私がカガ様に、なんとかお願いしてまいりますので、ご、ご安心ください! コウメイ様!」


 半分、泣き顔のメイコは心底僕を心配してくれていた。いや、さすがに一応は四天王なので人間ごとに負けることはないのだけれど、メイコの中の僕はひ弱な♀のようになっているのだろう。


「だ、大丈夫だよ! 今回は人間界への偵察だから、心配は要らないよ……」


「……そ、そうなのですか……。しかし、偵察とはいえ、私は心配です……」


 それでも納得できない様子で、メイコは表情を沈ませる。

 

「まぁ危険と思ったら、すぐ戻ってくるから大丈夫だよ」


「そ、そうですよね! コウメイ様は、強い相手には決して戦いは挑まれませんからね!」


 メイコが僕をどう見ているのかちょっとだけ分かった気がした。……ちょっとショックだった。


「そうだ、メイコ。もしもの話なんだけど――」


「はい?」


「僕がもし、魔王様と対立してしまったら、メイコはどちらの味方をする?」


 メイコは、僕の意図を知ってか知らずか、目を閉じ少し考えていた。冗談ではないという意図を汲み取ってか、メイコなりの考えを整理しているのだろう。

 部屋にしばらく静寂が訪れる。


 ……そして、メイコは僕に優しく語りかけた。


「私は、コウメイ様の専属の使用人です。例え魔王様が相手でも、コウメイ様がお決めになられたことなら、私はコウメイ様について行きます。ご安心下さい」

 

 その言葉を聞いて、僕は胸をなでおろした。このままの戦乱が続けば、メイコにも戦いの火種は飛んできてしまうだろう。そうなる前に、僕とメイコの安住の地を探す必要があるのだ。

 僕はメイコに抱きついていた。流石に僕の方が背が低いので、傍からみると多分、姉弟みたいに見えてしまっているのかもしれない。


「ありがとう、メイコ。その言葉を聞いて安心したよ! メイコは、絶対僕が幸せにするから。」


 僕がメイコを見上げると、メイコは頬を赤くして微笑んでいた。


「ありがとうございます、コウメイ様。ふふ、これは、メイド冥利に尽きますね」


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