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日替わり?!レアガチャ勇者様!  作者: 窓際ななみ
おうとのたたかいの章
31/63

第三十話 英雄祭!

 あれから、数日が経った――。


 私は、無事に生還することができた。

 吹き飛んだ右腕も、リゼによる懸命の魔法治療によって、日常生活ができるくらいまでは回復することができた。

 冒険者に戻るには、もう少し訓練が必要になるとのことだった。


 一番驚いて嬉しかったのは、アンゼリカが生きていてくれたことだ。


 私たちに敗れたアンゼリカの亡骸を、グラニュー王子の配下の者が証拠の一つとして回収しようとしたらしい。

 その時、ユウシャが現れアンゼリカを舐め回すと、アンゼリカの体が微かに動き出したため、シフォン領土内の地下室でユウシャとともに保護し、観察を続けていた。

 アンゼリカは、意識が戻るまで私の名前やユウシャの名前を、うわ言のようにいっており、ユウシャの名前が呼ばれるごとに、ユウシャは鳴いて応えていた。

 グラニュー王子は、その時の様子を見て、あの生物が私が話した勇者様ではないかと気づいていたとのこと。

 

 なら、なぜ、ユウシャが一日で消えなかったのか。

 私は気になって、魔導書【攻略うぃき】を改めて調べてみることにした。


 そこで、今回の現象について該当する記載を見つけることができた。


>>>>>>>>>>

 【アカウント停止処置】

 勇者様ガチャで不正行為と思われる使用方法をした場合、アカウントを一時凍結します。

 アカウント凍結中は、勇者様ガチャを利用することはできません。

 運営の調査が完了するまで、出現した勇者様はそのままになります。

 運営が、不正行為ではないと認めた場合は、アカウントの一時凍結を解除致しますが、解除まで数日かかる場合がございます。


 また、アカウント停止処置を行った使用方法を継続で利用する場合も、不正行為とみなしアカウントを凍結する場合があります。

>>>>>>>>>>


 専門用語があって全部理解できなかったが、つまり、あのアンゼリカの銀貨三枚が、不正行為とみなされてしまった為とのことのようだった。

 今では、無事解除された様で、勇者様ガチャ!の魔法を使うことができるようになっている。

 そのことを、こっそり御見舞にきてくれたグラニュー王子に話したら、体が良くなったら王城でお披露目する約束をされてしまったけれど。


 そんな訳で、チンを倒したことにより、プティング国の王に成ろうとした計画は失敗に終わった。

 プティング国は、まだ正式な王子が不在の状態だが、良い国にしてもらうようチョコレイト姫には頑張って貰いたい。


 そして私たちはというと、私の体はもう少し療養が必要なので、当面は最初に止まった宿屋で王都生活を満喫しているというわけなのだ。



「……パンナ……準備できた……?」


 ザッハが私に声を掛ける。


「あら、ザッハ、なかなか似合うじゃない?」


 ザッハは、純白のドレスを身にまとっていて、胸には透き通った黒い宝石のブローチを付けていた。うーん……。このブローチだけでも、銀貨300枚は優に超えてしまいそう……。そんな事を毎回考える自分に、またしても苦笑する。


「今着替えるわ。ザッハは先に宿の入り口で待っていて。アンゼリカも迎えにくるっていってたし」


 私もザッハと同じ、純白のドレスに着替える。私の方は、黄色く輝く太陽のような宝石のブローチだった。

 この衣装は、昨日の夜アンゼリカに渡されたものだった。



*****


【昨日の夜 パンナたちの宿屋の部屋】


「なんと! 明日は、グラニュー王子の英雄祭を行います!」


 突然アンゼリカが、私たちの部屋に押しかけ、騒ぎ出した。


「ああ、そういえばもうそんな時期なのか……」


 アイスはお酒をちびち飲みながら、呟いた。


「そうそう、そんな時期なのよ! えっとですね……。毎年、王都で活躍した騎士を英雄に見立ててお祭りをするのよ! でね、今回、グラニュー王子が是非、みんなにも出席して欲しいって! もちろん、コネで一番見ごたえのある席を準備したんだよ!」


 いつにもまして、テンションの高いアンゼリカだった。


「どうする?パンナ、ザッハ?」


「うーん、そういう式典って苦手なのよね……」


「……人混みは……苦手……」


 その台詞を聞くと、アンゼリカは顔を真っ青にする。


「ななな、なにいってるの! 英雄祭だよ! 王子様からの招待なのよ!? それを無下にしちゃうの! 信じられない! 絶対強制参加に決まってるでしょ!」


 興奮気味にアンゼリカは、私とザッハを説得しだす。

 

「……だそうだ」


 アイスは半分呆れ顔だ。

 

「あっ! そうそう、王都の名物料理や高級料理も食べ放題なんだよ! 絶対お得だよ!」


「行くわ!」

「……行きます……」


私たちは、食いしん坊だった。


「じゃあ、明日はこれに着替えてきてね。式典なんだから正装で参加しないとね!」


 そういうと、アンゼリカは高級そうな木箱を3つ出した。

 中を開けると、二つは丁寧に仕立てられた純白のドレスと宝石のブローチ、一つは貴族が着る為に作られた、所々に金色の刺繍の入った綺羅びやかな男性衣装だった。

 

 「……こんなの着なきゃ駄目なの……?」


 「だ、駄目に決まっているでしょ! そ、そうだ! たまには貴族気分を味わうのもいいんじゃないかな!」

 微妙にアンゼリカの態度が怪しいが、折角のグラニュー王子からのお誘いと美味しい料理だ。断る事もないだろう。


「分かったわ、アンゼリカ。折角だし、楽しませて貰うわ」


「うん! うん! そうだよね、楽しまないとね。じゃあ明日迎えに来るから、準備して待っててね! 絶対、逃げないでよね!」


 アンゼリカは、念を押すとその日は帰っていった。



*****



「しかし……、ドレスってなんでこんなに着づらいのかしら……」


 背中にある編み上げ紐を、自分では結べなかった。

   

「アイス、ちょっと手伝ってくれる?」


 私は、部屋の外で準備していたアイスを呼んだ。


「どうした、パンナ?」

 

 扉が開くと、貴族の服を着たアイスが現れる。

 

「プッ……!」


 私は、その見慣れないアイスの正装姿が新鮮すぎて、思わず笑ってしまう。


「お前なぁ……。さっきもザッハに笑われたんだぞ。勘弁してくれ……」


 そんなに似合わないのかという様子で、アイスは落ち込んでいる。


「……で、要件はなんだ?」


「そうそう、後ろの編み上げ紐、ちょっと結んでくれない?」

 

「ああ、これか?」


 アイスは私の編み上げ紐を確認すると、手際よく結びだす。


「パンナちゃん!準備できた!? 編み上げ紐を結べないよね? 私が綺麗に結んであげる!」


 突然アンゼリカが、部屋に入ってくると私たちの姿を見て硬直する。


「ちょっ! なんでアイスがパンナちゃんの編み上げ紐結んでるの!? この浮気者! 姫様に言いつけてやる!」

 

「突然入ってきて分けわからないことをいわないでくれ……」


 ため息をつきながら、アイスは私のドレスの編み上げ紐を結んでいった。しばらくして準備が整うと、私たちは宿屋の前に集まった。


「……遅かったね……。ふぁぁ……」


 ザッハは待ちくたびれて、欠伸をする。


「文句は、このバカ女にいってよ」


 私は、アンゼリカを指さす。


「酷い! パンナちゃんのこと、こんなに心配しているのにバカ呼ばわりなんて!」


 涙目で訴えるアンゼリカ。


「頼むから、アンゼリカは少し黙っていてくれ……」


アイスは、今日何度目かも分からないため息をつく。

全員揃ったところで、私たちは英雄祭の式典会場へ出発することにした。


 式典会場は、王城の前庭で行われることになっている。今日ばかりは、街の人間であれば誰でも王城の前庭まで入ることができるとのことだった。

 私は、歩きながた街の様子をみる。 

 確かに警備はいつもより厳重だったものの、それ以上に街が活気づいていた。 四角い建物の窓には、様々な飾り付けがされ、街を彩っていた。左右の露店では、普段取り扱っていない、高級な食材が衣類が並べられている。広場には、着飾った街の人々が集まって、会話を楽しんでいた。


「でも、良かったわ。四天王の計画を阻止できて」


 私は、王都の空を見上げる。

 その空は、王都で見た中で一番の青い空のように感じた――。


読んで頂きありがとうございます。

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