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日替わり?!レアガチャ勇者様!  作者: 窓際ななみ
おうとのたたかいの章
22/63

第二十一話 アンゼリカ!

「ふんふんふーーーん。ふんふんふーーーん」


「…………」


 やっと開放された私は、既に廃人と化していた。ただ羞恥に震える、肉人形のように地面に投げ捨てられていた。

 対して、アンゼリカはお肌ツルツル、何歳か若返っているように感じた。そして、床でごろごろしていたユウシャを両手で掴むと、高々と持ち上げる。


「おお! ユウシャがまさか本当の勇者様だったとは! 飼い主として鼻が高いよ!」


「にゃーーー」


「まぁ、大体の事情はわかったよ。チン大臣と城内については、私が調べてみるよ、パンナちゃん」


「……」


「しかし、魔王が復活しているのも驚きだけど、四天王を倒したのがパンナちゃんのパーティーってのも驚きだよね」


「……」


「ああ、それよりも、その勇者様ガチャという魔法が一番の驚きだね。でも、そうなるとユウシャとは、今晩でお別れなのか、それは悲しいな……」


「……」


「あれ? パンナちゃん返事ないね? もしかして屍になっちゃった?」


「う……うう……」


 調子に乗ってしまったとはいえ、倍以上の辱めを受けるとは思っていなかった。当面は、立ち直れそうもない。


「じゃあ、パンナちゃん!また、明日報告にくるから、楽しみに待っててねーーー!」

 

 そういうと、アンゼリカは軽快なステップ音を立てながら、部屋を出ていった。

 私は、夕食の時間になっても帰ってこないので心配で探しに来たアイスとザッハに発見されるまで、放心状態のままこの部屋で倒れていた。



*****



 パンナと別れたアンゼリカは、頬を叩き顔つきを変える。


「もしパンナちゃんの話が本当だとしたら、王都オードブルは崩壊してしまう……」


 魔王の配下が、既に王都を管理する重要な役職についてしまっている。この状態で戦争にでもなれば、あらゆる作戦は魔王に筒抜け、内部崩壊するのも目に見えている。そんなことは絶対に阻止しなければならない。


 私は、一度王城に戻り情報を整理することにした。


 王城へ戻ると、私は自分の部屋に戻る。これでも私は、騎士団の中では騎士隊を率いる隊長を務めることもできる隊長クラスなのだ。その為、城内で特別に個室が与えられている。

 とりあえず、何人か城内の使用人を部屋に呼びつけ、何か変わった事がないか聞くことにした。



***** 



「それでは、失礼致します」


 使用人の女が、私の部屋から退出する。


 ……とりあえず適当に5人程聞いてみたが、特に変わった様子はないとのことだった。まぁ5人とも最近ここに配属になった使用人とのことだったので、仕事で手一杯だったのかもしれない。

 そのとき、私はふと疑問に思った。


「……適当に使用人選んだけど、全員最近の子……?」


 王城の使用人というのは、待遇はかなり良いはず。その為、優秀な人材を確保するため、事前に厳しいテストを行っている。

 ……なので余程の事情でもない限り、使用人が代わるようなことはあまりないはずなのだ。


 私は、使用人の長に確認してみることにして、部屋を出た。城内の使用人が行きそうな場所を、私は順番に探していった。


「あら、アンゼリカ様、どうなさったのですかこんなところで。」


 私は使用人が集まる休憩室で、使用人の長の【タフィー】を見つける。ちょうど、タフィー一人だけだったので、話を聞くにはチャンスだった。


「えっとですね、ちょっとタフィーに聞きたいことがありまして」


 私は挨拶も早々に、本題に入る。


「最近、使用人で初めての子が多いじゃない?どうしたのかなと思ってね」


「まぁ! 誰かがアンゼリカ様に失礼なことをしたのでしょうか!?」

 

「あ、そうじゃなくて! ほら、使用人の子ってあんまり代わらないじゃない? ちょっと気になってしまいまして」


「ああ、そのことですか。そうですね、ここ最近10人程入れ替わったので……」


「10人も替わったの? 何かあったの?」


「いえ理由は様々です。家の都合や、持病のためといったものです。不幸が重なってしまったのでしょう」


「なるほど……それってさ、本人が直接タフィーに相談したの?」


「全員ではありませんね。何人kらはチン大臣から申し出で確認しています。」


「チン大臣の申し出!?」


「ええ、現在はチン大臣は、使用人を含むプティングの人事を管理しておりますので、たまに仕事場に視察にくるのですよ。恐らくその時に使用人に相談されたのかと……」


「……そう、分かった。ありがとう!」


 私はタフィーに、お礼をいうと、休憩室を後にする。これは、かなり気になってしまう。少し探りを入れてみようか。

 私は、そのままチン大臣がいる執務室に向かことにした。しばらく歩くと執務室が見えてくる。入り口には、見張りの騎士が一人警備をしていた。


「おや? アンゼリカ様、珍しいですね、こんなところで」


 私は騎士の寄宿舎に入り浸っているため、こういったお堅い場所にはほとんどこない。珍しがられるのは、しょうがないかもしれない。

 苦笑しつつも、見張りの騎士に、チン大臣の面会が可能か確認してもらうことにした。しばらくすると、見張りの騎士が部屋から出て来る。 


「はい、アンゼリカ様、チン大臣からの許可が降りましたので、どうぞお入り下さい」

 

「ありがとう!」


 私は、見張りの騎士に会釈すると、執務室の扉を二回叩き、扉を開けて中に入るのだった。


「夜分遅く申し訳ありません、チン大臣」


 私は敬礼をして、チン大臣に挨拶をする。私は、執務室をざっと見渡す。

 流石に私の部屋に比べると、その数倍の広さがあった。周りには大量の本棚がおいてあり、恐らく王都に関する様々の情報か記載されているであろう書物が本棚に綺麗に並べられていた。チン大臣が座っている豪華なテーブルの上にも大量の書籍が積まれていた。

 チン大臣は特に嫌な表情もせず、私を迎い入れてくれた。


「君は、確か騎士団長のアンゼリカ君だったかな? どうしたんだね?」


 私は、チン大臣の表情を注意深く観察しつつ、先程の話をしてみる。


「はい、先程チン大臣が、使用人の人事管理で色々相談を受けてると聞きまして、私もお手伝いできればと……最近、新しい使用人も多くなりましたので」


 私は、怪しまれない程度の話をする。


「おお! そうか、それは助かるよ! 使用人の中には直属の長に話すのを躊躇するものも多くてね、たまに私が視察をして悩みを聞いているのだよ」


「私より、アンゼリカ君のような人の方が話しやすいかもしれないな」


「恐れ入ります」


 チン大臣の表情は変わらない。この件については、ハズレだったのかもしれない。


「ああ、そうだ。アンゼリカ君、ちょっと研究資料を運びたいのだが、手伝ってくれないか? 少し大事なものでね。その辺の使用人や騎士には任せられんのだよ」


「はい、私で良ければお手伝い致します」


 これは、チン大臣の研究が確認できるチャンスかもしれない。私はチン大臣と共に、王城の地下に向かうことにした。

 王城の地下一階。ここはプティング国に割り振りされた倉庫が多くなる。既に辺りは夜になっているせいか、地下はひんやりとしていた。所々にある、魔法鉱物で作られたランプが、鈍い光を発しており、周りの様子はなんとなく見えている。


「それでは、お願いするよ」


 チン大臣は、地下一階の奥にある部屋の扉を開けると中に入っていった。私もそれに続いて部屋に入る。部屋に入ると、更に温度が低くなるのを感じた。

 いや、鳥肌が立つほどの寒さだった。部屋の中は地下にあるためで窓はなく、奥に大きな棚が三つある以外は、何もない広い部屋だった。


「少し、これを見てくれないか?」


 チン大臣は奥の棚に置かれている、人間の頭位の大きさの瓶を指差した。私は、そっと中の様子を覗いてみる。

 瓶の中は茶色く濁った液体だった。毛のような長いものがウヨウヨとたくさん詰まっている感じで、瓶の上には丸い白いボールのようなものが浮かんでいた。

 何かの材料? のようだが、かなり気持ち悪いものだった。


「あの……これは何でしょうか?」


 私が恐る恐る尋ねると、チン大臣は笑って答えてくれた。


「それは、君がさっきいっていた使用人だよ。」


 突然、腹部に激痛が走ると、私は部屋の入り口まで一気に吹き飛ばされる。

 

「が……がはっ……」


 油断していた。観察していたのは私だけじゃなかった。チン大臣も私を観察していたのだ。そして、私が怪しいと判断したのだろう。チン大臣は、私をここで殺す気だ。


「くっ……!」


 私は、激痛を堪え入ってきた入り口から出ようとする。しかし、入り口のとってを思いっきり引っ張ってもピクリとも動かなかった。魔法か何かでロックされているようだった。


「これは、なかなかヤバイわね……」


 私は、太ももに隠していた護身用の短剣を握りしめる。しかし、私が動こうとした瞬間、信じられない速さで私の目前までチン大臣が移動してくる。あまりの素早さに、動きが一瞬硬直する。その瞬間をチン大臣は見逃さなかった。

 

 私はチン大臣の大きな右手で、顔をまるごと掴まれてしまう。


「き……きゃああああああぁぁぁ!」


 顔に激痛が走る。チン大臣の掴まれた顔は万力で締め付けられたようにミシミシと鈍い音を立てている。私は、持っていた短剣を離し、顔を引き剥がそうともがき暴れた。

 そんな私の抵抗も虚しく、チン大臣はその腕を大きく振りかぶって地面に叩きつける。

 

「ぎゃあ!」


 後頭部に激痛が走る。その痛みもどんどん鈍くなっていくのが分かった。頭を激しき揺さぶられたせいで、意識が朦朧としていたのだ。


「さて、仕上げだ」


 チン大臣は、私の頭を後ろから右手で掴み直す。そして、先程と同じように私を片手で持ち上げると、勢い良く私の顔面を地面に叩きつけた。

 そして地面には大量の血が、激しく飛沫を上げた。

読んで頂きありがとうございます。

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