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日替わり?!レアガチャ勇者様!  作者: 窓際ななみ
おうとのたたかいの章
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第十九話 三人の茶番劇!

「二人の力を、私に貸してほしい」


 宿屋に戻った早々、アイスが私たち二人を集め、頭を下げる。


「はいはい、じゃあ作戦会議ね」 

「……了解……」


 ザッハはアイスに向かって親指を突き立て、私はお茶の準備を始めた。アイスは、やれやれといった表情で、バツの悪い顔をしつつ椅子に座り、私たちの準備が終わるのを待っていた。

 今日はちょっと奮発しよう。少し香りの良い葉を利用した紅茶を、準備する。

 ザッハは、近所の露店に美味しい焼き菓子が売っていると宿の主に聞いたようで、紅茶のお供にするために買いにいった。



*****


 

「それで、アイスはこれからどうしたいの?」


 私は、遠回しなしでアイスに確認する。


「まずは、王都のここ二年の情勢や内情など色々確認したいんだ。私が姫から聞いた話だと、プティングの王子が二年前に病死したとのことだ。本来なら、早急に次の王子を迎えるべきだったのだが、まだプティングでは新しい王子の目処は立っていないとのことだ。」


「なるほどね」

 

「……これ美味しい……」


 ザッハは、買ってきた焼き菓子を美味しそうに食べている。


「よく二年もやってこれたわね」


「どうやら、他の国が二年の猶予を姫に下さったらしい」

 

「なるほど……でも、結構デリケートな問題よね。もし王子が更に不在となってしまったら、プティング国の責任はとても重くなると思うわ。」


「ああ、そうだな……」


「でも、その辺の情報規制はされてそうよね。街の人は内情しらないんじゃないかしら。誰か……王都の内情に詳しい人がいれば……。」


 私とアイスは少し考える。そして……。


「一人、心当たりがあるわ」

「王都の内情に詳しそうな人物に心当たりがある」


 お互い、同時に声を上げる。そして顔を見合わす。


「どうやら、考えた人物は一緒のようね」

「そうようだな」


 ……とはいえ、相手はアレでも王都の騎士様ではある。こちらが普通に聞いたところで、話をはぐらかされてしまう可能性が高い。


「……うん……そうだ……! ねぇ、アイス、私に考えがあるんだけど、乗らない?」


「んん? どんな考えだ……?」


「それをこれから説明するわ! ザッハにも手伝って貰うわよ」


 ザッハは焼き菓子を左手で摘みつつ、右手の親指を突き出し、やる気を示す。かくして、ここに私たちの王都の騎士様攻略作戦が開始されたのだった。



*****



「あの……これってどういう状況なのかしら……」


 例の生物を返しにきてくれたアンゼリカは、私たちに連れられて別の部屋に招かれていた。椅子に座りつつ困惑している。アンゼリカの膝の上には、例のにゃーとなく生物が丸くなって寝ていた。ザッハは、その生物に興味津々だったが、この作戦が無事終わったら好きなだけ遊ばせる約束をして、我慢してもらっている。


 ここは、私たちがいた宿とは別の宿屋の五階にある一室である。 私たちは、アンゼリカが逃げ出し難いように、小さな窓が1つある独房のような部屋を借りることにした。

 多少老朽化していたが、建物の作りもしっかししており、今回の私たちの作戦にはぴったりの場所だった。


 まずは部屋の奥に、アンゼリカを座らせる。対面に私とアイス、入り口側の横にザッハを配置する。これでアンゼリカは、窓からも逃げることもできず、部屋を出るには私たちの横を通って行くしかない。

 さらに、あの謎の生物が膝で寝ているのも、私たちにとっては好都合だった。


「うっ……うっ……」


 私は、顔を俯け泣いている。もちろん嘘泣きである。これでも、結構演技派なのだ。そして、横にいるアイスに合図を送ると、私たちは打ち合わせ通り芝居を打つことにした。


「アンゼリカ、ナンテコトヲ……」


 片言の棒読みで芝居を始めるアイス。この辺は、私の演技力でフォローをする。


「うわーん!」(嘘泣き)


 突如泣き出す私に対し、アンゼリカは慌てふためく。


「え!? え!? え!? ど、どうしちゃったのパンナちゃん!」

 

「オマエ、シンタイチョウサトイウメイモクデ、パンナヲハズカシメタヨウダナ」

 

「……ヒドイ……」


 ザッハも棒読みで芝居に参加する。しかし、アンゼリカはあまりにも突然の話だったようで、アイスの言葉に慌てふためいている。

 

「えええ!! いやいや、私、パンナちゃんを辱めていないよね? 説明してよパンナちゃん!」


 アイスがあまりにも真面目な表情で話しているので、アンゼリカはこれが演技とは感づいていないようだった。


「酷い! 私を無理やり裸にしたくせに!」

「うわーん!!」(嘘泣き)


「オマエ……キシトモアロウモノガ、ワタシノナカマニソンナヒドウナコトヲシタノカ!」


「……ヒドイ……キシサマ……」 


「えええ! いやいや身体調査だからさ、裸になってもらうのはしょうがないじゃん! それに女同士だったし……」


「女同士だからって、無理やり裸にするなんて、騎士のすることじゃないよ! うわーん!!」(嘘泣き)


「えええええ!!」


 私の騎士のすることじゃない! の一言が効いたのか、アンゼリカは涙目になっていた。


「そ、それに裸になって思うように動けない私の両足を掴んで、私の大事な所をずっと触ってましたよね! まだ大事な人にすら触らせたこともないのに! こんなことされたら、私、お嫁にもう行けないよ!」


「うわーん!!」(嘘泣き)


「えええええ!? いやいや、ちょっとしたスキンシップだったんだよ……。まさかパンナちゃんが、そんなに嫌がってたなんて……。そんな……」


「アンゼリカ……オマエ……パンナ二ソンナコトヲ……。コレハ、ヒメサマ二ホウコクシテ、キビシイバツヲアタエテモラワナイト」


 アイスの言葉を聞いた途端、アンゼリカの表情がみるみる青ざめていく。


「ちょ! ちょっとまって、姫様には、今こんなくだらないことでお手を煩わせたくないの!」


「くだらないことだなんて……! 酷い!」

「うわーん!!」(嘘泣き)


 今のはアドリブだ。


 アンゼリカは思考が追いついていないのか、謎の生物を起こさないよう上半身でおろおろと、私をなだめることに必死で手一杯のようだった。


「ワタシトトモニ、オウジョウニイクゾ。ソシテ、ヒメサマニ、オマエノアクギョウヲサバイテモラオウ!」

 椅子から立ち上がるアイス。それを見て、ついにアンゼリカは懇願する。


「ま、待ってよ、アイス! わ、わたし、何でもするから! 今の姫様に迷惑掛けたくないの! だ、だったら私もここで裸になるから! 好きなだけ触っていいから! だからどうか許して下さい!」


 アンゼリカは、テーブルに頭をこすりつけて、私たちに頭を下げる。。ちょっと、やりすぎたかもしれないが、これもアイスの為、私は非道になる。


「いま、何でもするっていいましたよね?」

「いったな」

「……いった……」


「え……ええ……?」

 

 困惑するアンゼリカ。私は一気に畳み掛ける。

 

「……騎士として誓えますか?」


「えっ……!」


 アンゼリカは沈黙する。騎士にとって、騎士として誓うことの意味は、私たちが思っているよりもずっと重いからだ。


「ち……誓うわ……。パンナちゃんの好きにしていいわ……」


 こうして私たちの、騎士様攻略作戦は大成功したのだった。


読んで頂きありがようございました。

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