第十五話 王都到着!
「見えてきたわ! あれが王都のお城ね!」
馬車の荷台から、私は声を上げる。
「おい、舌を噛むぞ!」
アイスがやれやれといった表情で、私に声を掛ける。
「大丈ぶだっ――!?」
私が喋ってる途中で、馬車が大きく揺れた。馬車が通っている道は、まだ十分な整備がされておらず、所々に凹みがあった。馬車の荷台は、常時小規模の地震が起きているような状態だったが、これくらいなら大丈夫だと侮っていたようだ。
「――い―――た――――!」
声にならない声を出す私。
「……パンナはおっちょこちょい……。」
「そうだな……。」
アイスとザッハの視線が、とても痛い……。私は涙目のまま、荷台の隅に座るとその場にじっとしていることにした。
……四天王サカイとの戦いから、十数日が経った。私たちは様々な経路を駆使して、やっと王都【オードブル】の直前まで辿り着くことができた。
王都【オードブル】は、周辺の三国、【マカロン国】、【シフォン国】、【プティング国】からの代表者がそれぞれ王となり治めている、この世界【オッカシー】の中心ともいえる国なのだ。
魔王が復活しているのであれば、王都では既に何らかの情報を把握しているとは思う。まぁ、魔王と戦うかどうかは別にして、私たちは、やっぱり四天王についての情報を得るためにここまでやってきた。もし、王都でも情報を掴んでいないのであれば、魔族が水面下で動いている可能性もある。下手に騒ぎ立てるのは得策ではない……と私たちは考えていた。
ゆっくりと周りの背景の速度が落ちていき、馬車が止まる。ついに私たちは、王都の正門前に到着したのだ。
「ありがとう、お兄さん!」
私は荷物を持ち馬車から飛び降りると、御者のお兄さんにお礼と報酬の銅貨を渡す。お兄さんは愛想よく例を言うと、また元の道へ引き返していった。
改めて正門を見上げる。王都全体が、人の10倍以上はあるだろうか赤い煉瓦で組み立てられた城壁で囲まれている。城壁の上には、何人かの兵士たちが周りの様子を伺っている。
それに、あれは砲台なのかな……今まで見たこともない砲台のようなものも城壁上に設置されているのが伺えた。
流石、世界の中心だけのことはある。警備は他の村や街と比べると比較にならない厳重なものだった。私たちは正規の入国手続きで、自分たちの順番が来るのを待つことにした。私たちの前にはまだ多くの人が入国手続きの順番を待っているようで、かなり時間が掛かりそうだった。
私は、空を見上げる。空は、青く澄み切っていた。白い薄い雲がその青い空をゆっくり移動している。風も心地よく、緑の香りが一体に広がっていた。王都の周りには、大きな森がいくつも存在している。緑の香りもそのせいだろうか。
少なくとも、今のところ魔王との戦争のような気配は、微塵も感じさせなかった。
「おいパンナ、私たちの番だぞ」
アイスの声が聞こえる。やっと順番が回ってきたようだった。私たちは、王都の兵士たちに、ギルドの管理番号を伝えると、簡単な身体調査を受けることになった。身体調査といっても、魔法による透視による確認で、服などを脱ぐ必要はない。魔族が持つような悪しき力を持っていなければ、特に問題ないはずである。
「おい、そこの女!」
「は、はい?」
何故か、私の身体調査で確認が止まり、私を確認していた兵士が慌ただしく動き始めた。
「お前、何か怪しい道具や、魔法を契約していたりしないか?」
「……っあ……!」
私は、一つの心当たりを思いついた。【勇者ガチャ】の魔法が、どうやらこの身体調査に引っかかった……らしい。
私への警戒が、強まっていくのを肌で感じた。周りの視線が結構痛い。私は、アレをどう説明したら良いのか迷っていた。……できれば、あまり大っぴらにしたくはない魔法だったからだ。
「あら? 貴方、アイスじゃない?」
そんなことを考えていると一人の女騎士が私たち……、というかアイスに話しかけてきた。
「ああ、そうだが……、お前は?」
「はぁ……!? ……もう何年も経っているからしょうがないかな」
「私だよ、騎士見習いだった【アンゼリカ】だよ」
「……アンゼリカ……ああ、お前、大きくなったな……」
思い出したかのように呟くアイス。どうやら、昔の知り合いらしい。
彼女は装飾が随所に施された鎧を着ており、それだけでもそれなりに地位の高い騎士だと分かる。身長も私よりも高く、胸も大きい、腰はしなやかでスタイルは女性の私から見てもかなり羨ましい体型をしていた。……そういえば、最近お腹のお肉が付き始めたのよね……と私は少しため息をつく。
すると、アンゼリカと呼ばれた女騎士が、私の前に寄ってきた。
「あなた、お名前は?」
「え……。ええ、パンナ=コッタといいます……」
「そ、そうなんだ……。それで、アイスとの関係は……どこまで!?」
「ぼ……冒険の……パーティー……仲間です……」
「え!? そこの小さいのは貴方の子供!?」
「いっいえいえいえい! 違います。ザッハ……彼女は私と同い年ですよ!」
「そっかー、なら安心したよ」
何を安心したか良く分からなかったが、彼女はうんうんと納得したようだ。
「大丈夫よ、悪意のある魔力は全く感じられないから。私の知り合いの連れなので、後で私が確認するから、とりあえず通してあげて」
アンゼリカがそいいうと、身体検査を中断していた兵士は納得したような表情で、次の人の身体調査へと移っていった。
「まぁ、そういうこと。とりあえず王都へようこそ! でも、後で、私のところへ出頭してね。確認したいことがあるから」
とりあえず、頷くことにした。こうして、多少のトラブルはあったものの、私たちは王都の中に入ることが出来たのだった。




