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枯れた色ばかり置かれたパレット・メタファー

作者: 毛利

過去にpixivに掲載していたものです

https://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=6758352


以降その際の前書きです


ーーーー


ただの落書きです。今創作しているお話の、その後のお話しを書いてみました。

ヤナーチェックのシンフォニエッタ。彼の創作物に出てくるクラッシックの中で一番よく心に残った曲の名前です。それ以外にも、たくさん出てくるのに。

 僕はこう言った。

 「彼女はたくさんのものを失った。その代わりに、少しの大切なものを手に入れた。でもそれを掌の中で一生懸命守ろうとしたところで結局は何かを失ってしまう。僕たちはわがままを言いすぎたんだ。積んだ積木を崩して積みなおすことを、やりすぎたんだ。僕たちに彼女は守れない。」

 そうね、彼女は呟いた。


 僕は彼女がかすかに頷いたのを見た。静寂だけが二人の間に流れた。そこにはヤナーチェックのシンフォニエッタはかかっておらず、僕らの間には少しの感情も存在しなかった。流れる静寂によって小屋の外から響く雨音だけがそこに、ただひとつ、響いていた。

 「結局ただの夢だったのかしら。」彼女は椅子に腰かけて窓の外を見ながら言った。


 「夢のようなもの、だったんだ。」僕は言った。彼女はこう続けた。


 「彼女のかわりの場所を作ってあげたかった。悲しかったの、あの子を見ていると。全ての因果が彼女を、悪意を持って、巻き込んでるようにしか見えなかった。」窓の外から吹く風で彼女の長い黒髪が揺れた。窓からは雨に打たれる木々だけが見える。


 古城に浮かぶ夢ようね、と彼女が僕らの夢を例えたことがある。ふと思い浮かんだらしい。古城とそれをつつむ紫色の霧を、僕はなぜか想像した。僕のもたれる棚にはもう何も残っておらず僕らが包んだ荷物だけが僕らの足元にはあった。


 「君は、さらにこう続けたいのかもしれないね。失って得ることを繰り返して色々なことを学習するのは自然な行為であって、彼女のこれからは、彼女のものだと。悲観すべきものでもないんじゃないかって。僕もそう思う。でも…。」言いかけた言葉の先が出てこなかった。心理学が結局学問に過ぎないように、そんな例えを考えた。でも何を例えようとしたのか、思い出せない。


 少し間があった後、彼女の近くに歩み寄って丸い上の机の上にある彼女の手を握った。その手は華奢な女の子の手で、僕と彼女は少しの間見つめあっていた。 

 「もう行かなくちゃいけないね。」

 僕は言った。

 わかってはいたものの、やはり悲しい。簡単に受け入れられるようなものではない。狂ったように大声を出して、この場をめちゃくちゃにしてやりたいような気持ちが生まれた。でもそんなことをしたところで虚しさをさらに強くするだけだ。

 僕は考えることをやめた。

 僕らは荷物を肩に担ぐ。そして窓を閉める。



 彼女が戸を引いた。僕らは、家を出た。

ありがとうございました。

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