三足の女
彼は逃げていた。
ここが現実なのか、または悪夢の中に囚われているのか、それすらも分からぬままに。
彼の後ろからはとても背の高い女が追いかけてくる。
女はまるで足に何かが絡み付いて邪魔だとでもいうように、複雑な足取りだった。
いや、良くみると足には確かに何かが絡み付いていた。
足だった。
彼女の股からは左右の足の他に第三の足がのびている。
眼球と口の代わりに穴が三つ空いた顔を左右にふりながら、彼女は一歩、また一歩と彼に歩みよる。
ひた、ひた、ひた
裸足のひとつ多い足音が響く。
ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた
追い詰められた彼は壁によりかかり力なく笑っている。
ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた、ひた
あぁ、なんたることか!!私はとうとう、この女を恐れた挙げ句、気が狂ったのだ!!
邪神と呪われた血筋によって壁の中に鼠共を見出だした彼の狂人……デラポーアのように……あぁなんたることか!!
神よ!!全てを救う全能の神よ!!我を救いたまえ!!