ヤンデレ魔法使いは異世界少女を絡め取る
【注意】当該キャラクターがヤンデレかどうかについて賛否があります。私としても、かなり病ませたつもりですので気分を害されそうな方はUターンして下さい!
勝ったぁぁぁぁぁ!
少女は倒れている…いや、少女によって倒されたドラゴンの上で雄叫びをあげる。
少女は、高揚している。ドラゴンに勝ったから?違う、大方「これで元の世界に帰れる」とでも思っているのだろう。浮かれていて馬鹿みたいだ。
少女・サエキユカは異世界からドラゴンを倒す為に召喚されし勇者である。召喚したのは僕、アルフ=エリーバだ。
しばらくは天に向かって万歳のポーズを続けていた彼女だったが…そのポーズを止めたかと思うと僕の方に走って……
「ねぇ、ねぇ、ねーーーぇ!何で?何で帰れないの?ドラゴンを倒したら帰れるんじゃないの?」
彼女は半泣きになりながら僕の襟首をつかんできた。
「あれ?……あぁ、そうだ。言って無かったっけ。
元の世界に帰るには、生きたドラゴンの背中に乗っていかなきゃならないんだ。ドラゴンに認められることが大事なんだよ。…………まぁ、でも君はもうあのドラゴンを殺しちゃったから帰れないね。」
少女の目から涙が止まる。
「う……うそ…」
「……それよりさぁ、いつまで僕の襟掴んでるの?皺になったらどうするの?」
「あ、ごめん」
素直に手を離すユカ。
「あーあ、アイロンかけなきゃいけないね。……勿論君がやってくれるんだよね?」
「え、……」
「何、君のせいで皺が出来たんだけど?そんな気分じゃ無いって言いたいの?」
「や、やらせて頂きます!」
「そ、良かった。じゃあ、帰るよ」
そう言って、手を差し出すと彼女は困った様な目をした。
「帰るって何処に?それにドラゴンは……」
「勿論、僕の家。君は僕の所有物なんだから、ちゃんと連れて帰るよ。不法投棄はいけないことだしね。ドラゴンは……まぁ、国の兵士に連絡すればなんかして処分してくれるでしょ。」
不満そうに「私はゴミですか…」と呟く彼女に「ここで置いてかれたいの?」というと黙った。ここは、ドラゴンがいたことからもわかる通り森の奥深くだ。ここで迷ったら僕はともかくユカはそのまま死ぬだろう。獰猛な獣もわんさかしてるし…
歩きながはユカは呟く
「ねぇ、私は本当にもう元の世界に帰れないの?お父さんとお母さんに会いたいよ……」
「…残念だけどね。確かに君を召喚したのは僕だけど、あれは僕だけじゃなくて国指定魔導師達の助力もあるから。……ドラゴンが倒された今その人達もあちこちに散らばっちゃっただろうしね。」
「そっか…」
ほら、素直…というより馬鹿正直に僕の言葉を信じるユカは可愛い。
まぁ、信じるしか無いだろうね。いきなり異世界から呼び出されたユカはこの世界のことを何にも知らない。この世界の言葉すら……。ユカを呼び出した主人である僕しか、ユカと会話をすることが出来ないのだ。正確にいえば、僕とユカ互いの言葉だけを翻訳する魔法が掛けた。はっきり言って、翻訳魔法は難しい。それも異世界の言葉の翻訳…いくら僕がこの世界の3大魔法使いだといっても主人で無ければ到底出来なかっただろう。だから、他に言葉を交える人のいないユカは僕の言葉をそのまま信じる。……今の様子を見る元の世界に帰ることは諦めて無いみたいだけど。
……あぁ、いっそのことここで置いていって死にかけた所で助けに来るのも良いかもしれない。そうすれば、ユカも主従関係について改めて認識するだろう。
その後の旅先で会った人達は誰一人として、その少女の行方を知らない。
「きっと元の世界に戻ったんだ」という人が大半のひとが思う中をアルフという人間を知っている極一部が苦笑いをする。
その極一部だけは知っていた。
アルフは、異世界から来た少女に一目惚れしたことを…目的の為には手段を選ばないアルフは、本来異世界から人が召喚された際にはかなり強力な翻訳魔法がかけられるにも関わらず、その魔法の効力を制限したのだ。彼以外には魔法が効かないように……
強力な魔法を制限するなんて、とても単なるの魔法使いには出来ることじゃない。流石は3大魔法使いと言うべきか。また、普通なら少女に対して罪悪感を持つべき所を彼の頭の中で大幅に事実を改変している。そして、それを堂々と公言する。だから誰もその言葉を疑わない。
だからこそ彼がした行為に誰も異を唱えることが出来ない。
こうして、ユカという異世界から来た女の子は魔法使いによって絡めとられた。