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第二話「邂逅」

片々に散りばった硝子を踏まないよう注意しながら近づく。踏んで怪我などしたくないから慎重を心がける。

流星が落ちて来たことによる興奮と恐怖により心臓の鼓動は弛緩する事がなく速度が増すばかりだ。

流星はどういう構造になっているのかチカチカと明暗は衰えず続く。眼前まで寄り球体を見下ろす形になる。その大きさはバスケットボールより一回り程巨大だ。追突されていれば確実に夭折していたに違いない。

自分でも理解に苦しむが、何故か無性に触れたい激情が沸き起こった。ゆっくりと恐々としながらも球体との距離を縮める。「ふぅふぅ」と呼吸が荒れているのが自分でもわかった。

そして寸前まで迫った瞬間――

反応した様に一層、光明が増長し、膨張した光は部屋中を優しく包み込む。

「うおっ!」

光を忌避した瞳は強く閉じられ瞼の裏側に広がるのは白一色だ。

「………」

5秒ぐらいだろうか白一色から反転、深淵が訪れる。

恐る恐る目を開け何度か瞬きすると光の残滓が眼界に張り付き離れないでいた。爆発して悲惨な末路へと導かれなかったことに心から安堵。

球体があった箇所へと視線を向ける…

「ぇあっ?!」

その光景に驚愕して一歩後退る。

「いてぇっ!!」

右足に疼痛が駆け抜け痛覚を蹂躙する。硝子片を踏んでしまったみたいだ。足の裏を見ると細かな欠片が突き刺さっていた。

引き抜くと痛みに顔が歪む。その痛みに感情が微量ながらも緩和された気分だった。

目の前の光景に現実味が見い出せないでいた。疑問符が脳内に大量生産していき停止する素振りを見せない。

肌色に飢えすぎて幻覚でも見ているのだろうか?

確かに彼女のいない歴=人生の俺にとって、扇情した心を鎮火させるのはエロ本なのは間違いない。

しかしだ女に飢餓しすぎて幻覚を見るなんて事があるのか。

球体のあった場所そこに発現したのは女の子だった。しかもかなり幼い。え~起伏の少ない体躯から目測するに12歳ぐらいかな。多分。

色素が抜け切った様な白髪は長く少女の顔を覆い隠している。そのため面相はよく見えない。

月光に照射された白髪が白銀へと塗り替えられている。俺の語彙では名状しがたい美しさだった。

その女の子(あくまで幼女とは表現しない。なんかアレだから)は微動だにしないが、小さく身体を上下に浮沈している事で生存を証明していた。

なんとなく光景を客観視してみる。青年と倒れていて動かない少女…かなり危険な絵面だ。おまわりさんにお世話になるのが容易に想像できる。この歳で人生の汚点に烙印を押されるのはご勘弁願いたい。

とりあえず漫画やアニメでよくある目を擦り幻覚を振り払おうと心みる…消えてないっと。どうしたらいいの?これ。

こんな状況に見舞われるとは一抹にも妄想した事のない俺にこの難題を打破する術がない。

…触れてみようと思った。なんでかって問われるとなんとなくとしか答えられない。あと言っとくけど決して俺は少女愛好家ではない。

緊張で微震に揺れる右人差し指を左手で支えながら頬に触れてみる。ツンツンと。柔らかく張りのある頬は小さく指を跳ね返す。

その時である。

「ひっ!」

17年間という生涯の中で上げたことのない頓狂な悲鳴が漏れた。少女が上体を起こしたのだ。そして俺を見る。長い前髪から除く双眸は妖しい光を放っていた。その目に総毛が逆撫でしたようにそそり立ち血流の速さは上昇していき眼球を濁らせる。

「dhruw#%t'&#"djfeq」

えっ?今なんか喋った?この子。聴覚がイカれたのか少女の発した言語は解せなかった。

プルプルと前髪が邪魔なのか白髪を振り乱す。それに伴い銀色の粒子が飛散した様な幻視が視界を彩る。

そして少女は何を思ったのか俺に向かい突進してきのだ。捕食される!と脳内が危険信号を発した。俺は咄嗟にベッドの方へ後退して回避を試みる。が、少女の奇行から逃れられず「ぐっ!」鳩尾への猛攻に合う。

強固な突進は男である俺の身体を吹き飛ばした。ゴッ!とベッド側面にある壁に後頭部を強打。

視界は段々と暗幕へと誘われ俺の意識は暗闇に沈んだ。


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