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たいへんな おくりもの    作者: のはら ぎん
2/2

~  クジムナー?~

 

 さっき、リュウからキジムナーの話を聞いたんです。キジムナー、というのは ガジマルの木のようせいです。とくちょうは、子どもぐらいの背の高さ。かみは赤っぽくバサバサ、ガジマルのひげのくずとかくっついている。青いキモノを、ひもでぐるぐるまいています。夜中に出歩いて、葉っぱや草を『キラキラのり』みたいなのでくっつける。本当は『のり』じゃなくて『火』なのだそうです。キジムナーの手はべんりで、水かきがあるのに、こぶしをかためると、こぶしから少し上のところに火がともるそうです。

 キジムナーの話を思い出しながら、公民館前のガジマルを通り過ぎたときのことです。

 「にーにー。学校からの帰りねー?」と、声をかけられて、ふりむきました。

 「あーっ!キジムナー!」おもわず指をさしてしまいました。

 まさしくそれは…、話に聞いたキジムナー!じゃないよ!まったく!まぎらわしいおじさんだ。

 ファッションざっしからでてきたようでした。ブカブカでやぶれてて、糸だらけのお洋服を着ていました。でも、もしかしたらボロボロのお洋服だったかもしれません。かみの毛は赤くて、バサバサで、葉っぱとかもついています。

 「ちがう、ちがう。おじさんだし。キジムナーは背の高さが子供ぐらいだし」ぼくは,手をくねくねふって、知らんふりしようとしました。

 「にーにー」また声をかけてきます。ふりむいて、きっぱり言いました。

 「オジー。『いかのおすし』知らないのかー?」少しすごんで見せました。

 「いかのおすしは、あたるのー?」

 「あたるよー!」おじさんが近づいて来ます。

公民館では、老人会がゆんたく市場をやっているはずです。ぼくは公民館に飛びこみながら「たすけてーっ!ゆうかいされるー!」でっかい声です。

 おじさんはびっくりして、両手で自分のほっぺたをおおいました。

 「行かない。乗らない。大きな声を出す。すぐに。にげて。知らせる。これが『いかのおすし』さあ」と、げんかんにいるはずなのに。老人会の人が、みんなでよってくるはずなのに!ガジマルのそばに立っている。

公民館に再挑戦!したはずなのに、またまたガジマルのそばに立っているう!いよいよぼくのほうが、ほっぺたを両手でおおう番です。

 「ぎ。ぎゃあーっ」おじさんは、ぼくににっこり笑って、両手をパチンとたたきました。

 「にーにー」

 「にーにーじゃないよ。まだ小学ニ年生だよ」泣きそうになりました。

 「そおねえ。にーにー。おじさんは、キジムナーじゃないよ。『クジムナー』さあ」

 「クジムナー?」

 「クジひいてごらん。あててあげるから」

むむむ、いみがわからないが、てきは ちょうせんしているみたいだ。うけてたとう!

 「よーしっ。アイスクリームでしょうぶだ」

 近くのお店で、ぼうつきチョコアイスをかいました。ぼくがアイスをなめているあいだ、クジムナーのおじさんは ちょっぴりうらやましそうな目で、ぼくのアイスを見ていました。アイスがだんだんへっていき、ぼうの先が見えてきます。

 『大当たり。もう一本もらえます』茶色の字がうきあがってきました。

 「ほんとうだ!やったあ」お店にまっしぐらです。もう一本の チョコアイスをにぎりしめ、だけど、おじさんが。うらやましそうに見ているのに、またこれを食べるのは、気になるなあ。クジムナーってわかったからもういいか。

 「おじさん。ありがとうねぇ。ぼく、おなかいっぱいだから、これ、おれいにおじさんにあげます」と言いました。おじさんはアイスの袋をやぶるときに、アイスをおっことしそうになりました。

 「じゃあね。ありがとうね。ぼく、もう帰るよ」家にむかって走りかけると

 「いいよー。バイバーイ」おじさんの声にふりむいた。クジムナーのおじさんは しんかしていた!

 耳たぶが かたまでたれさがって、金色のベレーぼうをかぶっていた。お洋服なんか、まっ白に光って、長い杖によりかかって。うあのにこにこがおは、たしかにクジムナーのおじさんなんだ。ぼくは立ちどまって おじさんをながめた。どこかで見たことあるぞ。大綱引きのスペシャルメンバーじゃなかったっけ?

 「みるくむなりを、みたわけ?こんど会うときは、たからくじ かえよ」と、お父さんが言ったので

 「じゃあ、これから おれにもたせるお金千円にしてくれる?」というと

 「おまえは、キジムナーじゃなくて、ユクシムナー。だよな」やっぱり、百五十円しかもらえない。とおもってたら、たす百五十円で三百円。たからくじ一枚ぶんなのだそうです。  おわり


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