小説執筆ユニット「牛髑髏タウン」
チャララッチャッチャ~ン
坂野「始まりました! 新番組『何時だと思ってるんですか静かにして下さい』、司会の坂野美智子です!」
柴野「同じく司会の柴野文義です」
坂野「この番組はどんな番組なんですか柴野さん」
柴野「第七スタジオをニュース番組の合間に使わせてもらって三時間しか無いのに三十分番組を四本録りするという無茶な番組です。カットすると尺が足りなくなるんでうっかりNGは出せません」
坂野「早速のNG、ありがとうございます。できましたら制作側の事情ではなく視聴者の皆さんから見てどんな番組なのかをご紹介いただけませんか?」
柴野「これは失礼しました。そうですね。この番組では毎週、半端な知名度のゲストを低予算で呼んで無駄話を垂れ流します」
坂野「今のところはカットでお願いします。私からご紹介します。この番組は各分野で活躍が期待される、まさに今これから来る! という方達をお呼びして、肩の力を抜いたざっくばらんなトークをお届けする番組です」
柴野「流石です。ものは言いようですね」
坂野「早速ですがゲストをご紹介しましょう。栄えある第一回目のゲストは今話題急上昇中の四人組、牛髑髏タウンの皆さんです!」
牛「どうも~。牛髑髏タウン、リーダーの牛です」
髑髏「髑髏です」
タウ「タウです。タウリン2000ミリグラム配合って呼んでください」
ン「ン」
柴野「簡単にご紹介いたしましょう。牛髑髏タウンは結成一周年を迎える新進気鋭の小説執筆ユニットです。サングラスが嫌らしいのが牛さん、顔色の悪いもやしが髑髏さん、うざったいヒゲもじゃがタウさん、トロそうな小太りが」
坂野「うぉい!」
牛「帰ります」
坂野「ちょ、ちょっとお待ちください! あ、みなさん、帰らないで下さい! 本当にすみません、 …………」
(CM)
坂野「失礼いたしました。改めましてこんにちは、司会の坂野です」
牛「……どうも。よろしく」
髑髏「柴野さんは?」
坂野「あの人は何かの間違いです」
髑髏「……ああ、はい納得しました」
坂野「早速ですが、皆さんの担当パートをご紹介いただけますか?」
牛「はい、そうですね、僕はリーダーをやっています。四人でどっか行く時も、大抵計画を立てるのは僕です」
髑髏「そうですね。私はそういう時は大体運転手です。リーダーがナビをしてくれますから楽ちんです」
タウ「俺はムードメーカーだな。車中でも皆を笑わせてるのが仕事、みたいな」
ン「ン」
髑髏「彼は今、誰も笑ってねえよ、と言ってます」
坂野「どうもありがとうございます。あの、申し訳ないんですけれど旅行の時ではなくて小説を書くときの役割を教えていただけますか?」
牛「ああ、そういうことですか。えーと、まずどんな作品にするかっていうコンセプト、構想みたいなとこは僕が考えますね、次はこういう作品でいこうぜ、みたいな」
髑髏「そうですね。そこはリーダーに任せっきりですね」
坂野「リーダーである牛さんがやはり起点になる訳ですね」
牛「それからプロットを起こすとこまでもやはり僕がやりますかね」
タウ「今までの作品は全部そうだな」
坂野「なるほど、構想だけでなくプロットまで牛さんが担当される訳ですか」
牛「それから、初稿と言いますか、ひと通り原稿を書き上げるまでは僕がやりまして……」
ン「ン」
髑髏「彼は今、うん、そうだ、と言ってます」
坂野「えーと、つまりほとんど牛さんがやっていらっしゃる訳ですか?」
牛「え、あ、いや、そんなことは無いですよ。そっからの推敲は四人でやります」
髑髏「ええ。読んでいて、ここは俺たちのイメージに合わないなとか、展開のスピードを考えたらここは無駄だとか、これは使い古されたネタだとか、そういうことをリーダーが感じたらリーダーが直します」
タウ「あと、誤字脱字なんかを見つけるのもリーダーだな」
ン「ン」
髑髏「彼は今、タイトルを決めるのもリーダーだと言ってます」
坂野「…………あの、差し支えなければお伺いしたいのですが、牛さん以外の皆さんは何をやってらっしゃるんですか?」
髑髏「私はお茶を買ってきたり、リーダーの肩をもんだりします」
タウ「俺は面白いことを言って皆を笑わせるのが仕事だな。ムードメーカーというか」
髑髏「彼の冗談で最も笑えたのは、カギのかかった自転車で坂を下ろうとして三回転半しながら落ちていった時でしたね」
タウ「それ冗談じゃねえよ」
ン「ン」
髑髏「彼は今、僕は寝てます、と言ってます」
坂野「…………わ、わかりました。それでは、視聴者の方からの質問のコーナーです。えーと、まず最初は千葉県の玉虫色のケチャップさん、牛髑髏タウンの皆さんは休日、どんなことをして過ごされていますか?」
牛「そうですね、僕は大体趣味のフットサルをやったりしています。もちろん小説のネタを考えながらね」
坂野「フットサルですか。いいですね。身体を動かすことが小説のネタを考えるのに効果的なんですか?」
牛「そういうことです。部屋に篭って本を読んでばかりではなかなかいい発想は出てきません」
坂野「なるほど。そうですよね。では髑髏さんは?」
髑髏「私は部屋に篭って本を読んでばかりいます」
坂野「…………」
髑髏「本が好きなんですよ、私」
坂野「で、ですよね! 小説家の方はやはり読む量も凄いんですよね。読書量に支えられた豊富な知識が小説に役立てられる訳ですね!」
髑髏「はは、役立ったかどうかはわかりませんけどね。三十冊くらい読みましたね」
坂野「三十冊! 月に三十冊ということですか? 凄いですね」
髑髏「まさか。これまでの人生で読んだ本が三十冊です」
坂野「え、むしろ少な…………。い、いえ、失礼しました。ええと、それではタウさんは」
タウ「俺は映像から来るインスピレーションを大事にするタイプだからな。世界中から集まってくるクリエイティブなイメージの海に身を委ねてる。もちろん受け取るだけじゃダメさ、発信も欠かさないぜ。最新のコミュニケーションツールを駆使して、世界中のソウルフレンド達と感動を共有しているんだ」
髑髏「つまり日がな一日中ニコニコ動画を見ながらツイッター三昧です」
坂野「……あ、なるほど……。い、いえ、そういったところから小説の材料が得られる、みたいなこともあるんですよね」
タウ「ある訳ないだろ。くだらない動画ばっかりだ」
坂野「え、今クリエイティブと……」
髑髏「彼の呟きが一番くだらないですけどね」
坂野「ええと、それでは、ンさんは……」
ン「ン」
髑髏「彼は今、僕は寝てます、と言っています」
坂野「どうもありがとうございました。では次の質問です。東京都の美空キウイさん。牛髑髏タウンの皆さんが尊敬する作家さんは誰ですか?」
牛「尊敬する作家ですか? 別にいませんね」
坂野「おお……いない、ですか。格好いいですね。我が道を行くという感じですか」
牛「いやそんな格好いいもんじゃありません。僕、あんまり本読まないんで」
髑髏「はは、その点私は違いますよ。私は竹久夢二が好きですね」
坂野「それ……画家ですよね」
髑髏「あと、久石譲も好きです」
坂野「あの、音楽家です、それ」
髑髏「最近は手塚治虫が……」
坂野「漫画家です。しかも最近ですか?」
牛「お前もろくに本読んでないじゃないか」
坂野「えーと、ではタウさんは」
タウ「俺はカズやジーコを尊敬している」
牛「だからそれも作家じゃねーよ」
タウ「……」
坂野「あ、もしかして、サッカーですか」
タウ「…………」
坂野「きゃっ。えっ。えっ」
牛「おいこら、何急に握手したりしてんだよ」
タウ「うちのユニットに入らないか。ツッコミの才能がある奴が欲しかったんだ」
坂野「い、いえ……せっかくですが遠慮しておきます……。それでは、ンさんは」
ン「ン」
髑髏「彼は今、寝てます」
坂野「どうも、ありがとうございました。あ、お時間ですね。それでは皆さん、ご機嫌よう」
チャララッチャッチャ~ン




