episode7
気がつけばよつんばいになってフリスビーの上にいる。
自分でもどうやってマッド・ブルを逃げさせたのか、よく覚えていない。ただ、フリスビーの上で怒りに燃えて仁王立ちしていたことは確かだ。
それ以上のことはわからない。
で、気がつけば、よろけてよつんばいになっている。サングラスは汗ですべって、ぽとっと落ちた。
それに差し出される手。
えっ、と思い顔を上げれば、笑うガイ。その横にキースとブルース。
てっきりやられたと思ったのに。
手を取って、助けを借りながら立ち上がり、肩を借りる。
「蹴られる前にトラックから飛び降りたのさ。そのまんまカミカゼするほど、オレら馬鹿じゃねえぜ」
「もう。驚かせないでよ」
危機を脱して安堵してから、笑が込み上げる。
4人で「HAHAHA!」と痛快に笑った。
「でもおめえ、すげえなあ」
ガイは町の危機をすくわれて、リレントレスの力に感心しきりだったが。そのことになると、リレントレスは無言になって「もういいわ。Thank you」とガイの肩から離れた。
「やっぱり私、旅に出るわ」
「なんだって」
町を救ったのだ。もう出て行く必要なんかないのに。
「私がいれば、やつらまた来るわ。狙いは私のようだし」
「だけどよ……」
ガイたちはなにも言えなかった。なんとかしてやりたいが、自分たちではアレキサンダーと戦うことは出来ない。
アレキサンダーと戦えるのは、リレントレス・クルーエルだけのようだ。
それがいっそうじれったさを増し。自分の無力さを悔いるのだ。
ガイはなんともいえぬ気持ちで、
「旅に出て、それで、どう生きるんだ」
と問えば。
リレントレスは問いかけにしばらく黙ったあと、マッド・ブルの消え去った青い空を見上げながら、ふっと、さとったように微笑み。
一言応えた。
「Born this way」(宿命に生きるわ)