魔神訪問 異世界で商売始めてみました
これはとある箱庭と、それに隣接した異なる世界、そして箱庭から一歩飛び出してしまった管理人の物語。
あまりにも強大な権能を全ての始まりでもある造物主から授けられた、一人の管理人の勝手気儘な商売談である。
第一話 強盗に襲われたほにゃららら
病的なまでに生気の抜けた青白い光を穂先に宿した槍が身体を貫いた。
肉をかき分けて異物が体内を通っていく微かな不快感と、身体が冷えるような肌寒さ。
ふむ、どうやら私は現在、槍による物理攻撃に加えて、幽霊や怨霊、精霊種などの非実体型モンスターを形作る幽星体に直接損傷を負わせる【霊光】による属性攻撃を受けたらしい。
もしこの一撃が私が有する生体能力が一つ、最高位防御系統常時発動型技能≪最上位ダメージ無効≫を越える程の一撃だったならば、本人だけに確認できる視界右上に青い横線で固定表示されている自らの可視化された生命値線――一般的にHPバーと呼ばれる――が減少するはずだ。
が、しかし現在はほんの数ミリたりとも減少する事は無かった。
それはつまり、相手にとっては非常に悲しい事ながら、ザックリと身体を完全に貫通して突き抜けている槍は、生物の魂と言うべき幽星体を損傷させるはずの【霊光】は、その見た目に反して一切私の生命を損なう事ができないという事実である。
単純な話、自己レベルより30レベル以下の者からの攻撃を完全無効化してしまう≪最上位ダメージ無効≫を突破するだけのレベルが相手には無いと言う事で、つまりはあまりにも理不尽と言うべきレベル格差が原因なのだ。
この世界を想像した造物主がそう定めたのだから、相手にとっては理不尽極まりないだろうが、納得してもらうしかあるまい。
そもそも、アチラもそのルールに則ってこれまで良い思いをしてきた節が在るのだし、文句は言わせる気は毛頭ないが。
「はっ、糞が。さっさと品を渡せば死なずにすんだかもしれねーのによ。無駄に槍の耐久値が減っちまったじゃねぇーか」
「別に一刺しで殺したんだから、耐久値はそこまで減らないんだからいいじゃない。それより、ホントにこんな奴なの? 例の商売人って。間違ってました、じゃすまないわよ?」
「情報屋の情報通りなら、その筈だな。つか、黒髪の長身で、防御力は殆ど無さそうなコートからズボンまでレザーシリーズ一式の軽装備姿。んで、みすぼらしい見た目に反して、高価で育成の難しい上に短命な白い鱗に紅い瞳の騎竜が引く帆馬車を持ち、何と言っても顔を覆い隠すガスマスクを装備した男ってなると、コイツで決まりだろ」
「……それもそうね。流石に、わざわざこんな目立つような服装にしたのか疑問が残るけど」
「変態なんじゃね?」
「ふふ、そうかもね」
などと現実と彼らの間に大きな齟齬があるとは知らず、強盗である十代後半か二十代前半だろう二人の男女は既に私を殺したつもりで談笑していた。
油断している間に指の一突きで首を斬り落として殺してもいいのだが、それではあまりにも面白くないと考えて、取りあえず情報を収集するかと思い、人差し指に嵌めた黄金に輝く指輪――マジックアイテム≪黄金の知識者≫を起動させる。
淡い金色の光が指輪に灯り、指で指示した強盗(男)の個人情報が高速で解析されていく。
死んだと思っていた私が動いた事が不可解だったのか、槍を刺してきた男が不可解そうな顔を浮かべた。
「あ? まだ死んでなかったのか?」
男の間の抜けた声が響くのと同時に、≪黄金の知識者≫の能力によって私の脳内では強盗(男)の個人情報が表示された。
※※※※※※※※※※
NAME:九条敦[クジョウアツシ]
種族:ヒューマン【異世界人】
称号:特殊≪異界からの来訪者≫
職業:≪槍術師≫
クラス:中級≪鋼鉄槍術師≫
継承流派:≪ガザンド流重槍術≫
総合レベル:【88】 生体レベル:【73】
職業補正レベル:【9】 信仰補正レベル:【6】
耐久:B+ 魔力:D 気力:B 属性:悪・鋼
破力:B 技量:C 速度:D- 運勢:E
生体能力:【鋼鉄血肉】【徹甲闘技】【槍術の心得】
:【外界の知恵】【中位ダメージ無効】
信仰神:戦場の亜神≪アヴェスタ・ヴァルニコフ≫
信仰度:戦場の亜神の【加護】
恩恵能力:【戦意高揚】【見切り】【高速思考】
:【戦技早熟】【気配察知】
流派能力:【重槍撃】【幻槍突】【鉄壁堅牢】
流派スキル:【一の型】取得済み【二の型】取得済み
:【三の型】取得済み【四の型】取得済み
:【五の型】取得済み【六の型】取得済み
:【七の型】取得済み【八の型】未取得
:【九の型】未取得【十の型】未取得
:【ガザンド流重槍術奥義】未取得
:【ガザンド流重槍術秘奥】未取得
装備
右手武器:白霊槍“白夜”【霊光属性/貫通・斬撃強化】
:製作者≪叶鴫誓[カナシギセイ]≫
左手武器:月神の小盾【炎熱・聖氷/属性対応】
:製作者≪叶鴫誓[カナシギセイ]≫
頭装備 :害悪の黒兜(解除中)
胴装備 :害悪の鱗鎧
腰装備 :害悪の腰鎧
足装備 :害悪の脛当て/迅速の靴
アクセサリー1:レギオン・ファクター
アクセサリー2:状態防御の腕輪/耐久強化の腕輪
アクセサリー3:破力強化の呪われた指輪/女王蟻の膂力の指輪
アクセサリー4:第三の目のイヤリング/援軍要請のイヤリング
etc.
【もっと深く情報を表示しますか?】
≪YES≫ ≪NO≫
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脳内でパッと表示されたそれを見て、私は静かに、ちょっとだけ感心した。
総合レベル88というのは、現段階の世界に置いてほぼ最高レベルだったからだ。こんな所で強盗の真似事をしていていいレベルでは決して無い。英雄、と呼ばれるだけの偉業を成し遂げられると言えば分かり易いだろうか。
それに全身を覆い隠す、各所に禍々しい棘を生やしている黒い全身鎧――【害悪の鎧】シリーズは、攻略推奨レベル80以上という、現在最も危険な地下洞窟型ダンジョンと言われている≪黒甲殻蟲の穴倉≫の最奥に出現する女王蟻【ブラックアント・クイーン】を倒さねば手に入らない希少なマジックアイテムだった、という事もあるだろう。
そして強盗(男)が持つこの身を貫いている槍が、どこぞのダンジョンから発掘・発見したマジックアイテムではなく、人間が造ったモノなのだと言うのだから驚きだ。
しかもランクは≪固有≫級の末席に入るだろう。
一般的に五段階で分けられるマジックアイテムランク――【粗悪】級、【通常】級、【希少】級、【固有】級、【神迷遺産】級と分けられる――の上から二番目に該当する品を製作するとは、なかなかどうして興味深い。
普通の職人でインフェリオリティーかノーマル、名匠と呼ばれる存在でもレアが製造できる限度だったと言うのに、ギリギリとはいえユニーク級の品を造るとは。
製作者もまた、強盗(男)と同じように歴史に名を残せられるだけの技術力があると言う表れである。言うまでも無く職業は【鍛冶師】だろうし、レアな霊光属性まで付加されているのでクラスは恐らく【属性付加冶師】。
そして恐らく、槍の性能から見て製作者にとっては鍛冶師という職業が天職だったと思う。
そこまで考え、だからこそ私はこの二人に襲われたのか、と一人納得する。
強盗(男・女)はほぼ間違いなく、法典国家<セルブブルグ>や傭兵国家<サブルィア>や英雄国家<ビンセント>など、どこぞの国に所属している人間だろう。
≪黄金の知識者≫によって解析されたデータをもっと見ていけばすぐに何処に所属しているのかまで分かるだろうが、面倒なので止めておく。
頭蓋を砕いて脳を取り出して食すか、殺した後に霊魂を取り込んで知識を搾取すればいいのだし。
「ね、ねぇ? どうしたのさ?」
「ん、ああ、なんかコイツまだ死んでねぇーみたいでさ」
「……え? アツシとその槍の一撃なら、50レベル以下なら即死、それ以上でも致命傷を負わせる、はずよね?」
「そのはずなんだけど……っち、しゃーねぇ。面倒だがトドメを入れるか」
直感か、もしくは生存本能か何かで危険を感じるのか、強盗(女)はジリジリと後退し始め、強盗(男)は私に突き刺したままの槍を引き抜こうと力を込める。
何ともまあ、分かり易い分岐点なのだろうか、と思いつつ、私は身体に刺さったままの槍に指を這わせて、指先だけで金属製の柄を摘まむ。
私の行動を悪足掻きとでも思ったのか、強盗(男)は舌打ちをしつつ槍を引き抜こうとその超人的な膂力を発揮する腕に力を込めて――しかし、槍は微動だにしなかった。
引き抜く為に後方に力を込めた強盗(男)の身体が、ガクン、とまさに引っ張られたかのようにして再び私に近づく。
何が起きたのか分かっていないのか、強盗(男)の表情はなんともまあ、気の抜けた間抜け面だった。
「は? なん、だ?」
「ね、ねぇ。なんか、ヤバいって」
しかしまあ、強盗(女)の危機察知能力には恐れ入る。
このやり取りなど始まってたったの三秒未満だと言うのに、既に六メートル程も離れてしまっていたのだから。目の前の鈍重で勘の鈍い強盗(男)にも見習えと言いたくなるほどの行動の速さだ。
その身のこなしと俊敏性、逃げ足の速さと直感の良さから彼女の職業は恐らく盗賊か、もしくは暗殺者系統のどれかだろう。しかもそれなりのクラスには達しているはずだ。
生憎強盗(女)の詳細なステータスは≪黄金の知識者≫を使用しなければ見る事はできないのだが、まあ、逃がすつもりは無いので追々こうなった経緯を教えてもらうとしよう。
行動の速さと勘の良さ、生死を分けるのはそんなモノの違いか。
「――ッ!! クソッ、何で抜けねェーんだよ!?」
「それは、私が摘まんでいるからだが?」
「――ッ!!」
ガスマスク越しであるが故に、低くくぐもった声が響く。
返答がある事が意外だったのか、強盗(男)の動きが一瞬だけ止まる。そして強盗(女)は脱兎の如く、一目散に走り去ろうと駆けだした。仲間を置き去りにして。
何という逃げ足の速さだろうか。その判断の速さには驚かされる。
が、逃がす予定は無い。
「下僕召喚:≪捕食する竜性の流動体≫」
地面を素早く踏みつけることで、踵をカツンと鳴らす。
それが能力発動のトリガーだ。
そして逃走する強盗(女)の足下から溢れ出た深紅の液体は、何本もの触手を用いて強盗(女)の四肢を幾重にも拘束し、死なない程度に締め付け、その動きを強制的に停止させた。
強盗(女)の絶叫が響き渡る。
しかしそれも、全身を包んでいく深紅の液体に全身が飲まれて聞こえなくなる。
≪捕食する竜性の流動体≫
多種多様な派生が存在するスライム系の中でも竜炎・悪喰・強酸と三つの生体属性を持つ珍しいモンスターであり、スライム種の標準的な生体能力≪物理攻撃完全無効≫、≪強酸捕食≫、≪形質変化≫などは無論の事、本来ならば移動速度が致命的に遅いスライム種であるにも拘らず、竜炎属性を持っているので≪速竜歩法≫、≪炎禍吐息≫など竜種の生体能力まで持つ強力なモンスターだ。
ちなみにプレデター・ドラゴン・スライムの最低レベルは100ジャストであり、現在の世界の攻略具合ではレベル制限的にまずコイツに勝てる存在は亜人種を含めたヒト種には居ない。目の前の強盗ですら総合レベル88なのだから。
しかも今回召喚したのは私の眷属であるが故に、プレデター・ドラゴン・スライムの始祖とも言える存在であり、神の【託宣】補正によって総合レベル145である。
本来ならば主要未踏破ダンジョン≪粘性の悲哀≫から出現するモンスターなのだが、まあ、下僕最低レベルがコイツなのだから仕方が無い。
「溶かして殺すのだけは気をつけなさい」
そう命令して置かねば、プレデター・ドラゴン・スライムは本能に従い既に体内に取り込んでしまった強盗(女)を酸で肉や骨をドロドロに溶かして捕食してしまう。
現に今も取り込まれた強盗(女)の装備はドロドロと溶かされている。
あと数秒もすれば生まれたままの姿になってしまうだろうが、まあ、後で身体を隠す外套程度は渡してやってもいいかと思う。
この世界を創造された造物主■■■様も、女には極力優しくするように、と言っておられたのだし。
――うん? そう言えば女でも敵対する者に慈悲は無用といっていたような……。
「アイカッ!! ――クソォ、何者なんだよテメェはよォ!!」
すぐそこで響き渡るのは男の怒声。
槍を私の身体から抜こうともがくが、微動だにしないのだから槍を捨てて下がればいいのにとも思いはするが、強盗(男)の瞳に映るのは怒りではなく畏怖の念。
ふむ、どうやら状態異常【恐慌】 か【竦み】でも発動して、動くに動けないのか、もしくは考えが上手く纏まらないので動けないのどちらかだろう。
自分を置いて逃げようとした強盗(女)の安否を真っ先に気遣うという、なかなかできる事では無い事ができているのがその証拠、か?
まあ、震えながらも吼える様を評価し無い事も無い。ので。
「何、とは、ただの管理人だよ。この世界の、だがね」
管理人。私はそれ以下でも、それ以上でも無い。
私は、私達はただ、任されただけである。
この世界≪ディストピア≫の管理を、造物主■■■の言葉に従って。
ああ、それにしても。造物主■■■が再びこの世界に降臨されるのは何時になるのだろうか。
と、白雲漂う青空を見上げながら物想いに耽っていると、無粋にも逃げようとする存在がわめき散らす騒音によって現実に引き戻されてしまった。
「な、なんだよ世界の管理人って! 神とでも言うつもりかッ!!」
「管理人は管理人でしか無いのだが、ふむ。……まあ、そう言えなくも無い、とだけは言っておこう。この世界を想像された偉大なる造物主■■■より、とある権能を有するが故に」
「な、なら、攻撃しちまったのは謝るからさ、俺を、俺達を、元居た世界に還してくれ!!」
「それは、できない」
「は?」
「異世界人を呼び寄せる【異界転移術式】を、つまり時空を司るのは、私と同じ管理人の一人、アイオーン・ライプニッツだけだ。生憎、私の権能はそれではない」
「ふ、ふざけ……」
「そしてなにより、私は私の敵を生かしはしない」
これ以上は言葉など不要。
手を伸ばせば届く距離に居る強盗(男)が怒りや悲しみといった感情を滲ませる表情を浮かべている間に、何気なく、自然体でその胸部へと腕を伸ばす。
そして漆黒の全身鎧に指先が触れ、そして、まるで月を映した湖面に手を伸ばした時の様に、ぞぶぞぶと全身鎧の防御力を完全に無視して指が、手が体内に侵入していく。
「ひゃが、ああ、あああ、ぎゃがあああががががっがああああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
私の手首までが強盗(男)の体内に沈み、今まさに感じている胸骨が砕け、肉が裂かれ、臓腑が抉られる激痛と不快感によってその口からは絶叫が轟く。
私は一応、窒息死などと下らない救いを避けるために肺に損傷を負わせぬように気を使い、しかし強盗(男)の心臓をゆっくりと、確実に掌握していく。
「ひゅご、ひうあ、あああ、ぎいぃい、やめ、やめて、」
五指が心臓の表面を這う様に握りを変えていく、その度に零れる悲痛なる叫び。ブチブチと血管が切れていく感触があるが、重要なモノは即座に修復させているので出血死する事は無い。
軽く指に力を込める。
少しでも力を込めればこの心臓は即座に握り潰せられる程の儚い存在でしか無く、しかし力強く手の中で拍動する心臓は生に溢れている。
しかしそれだからこそ、私は微笑む。
私が≪終焉と根源≫を司る管理人であるが故に。
万象の終わりは、全て私の権能と直結しているのだから。
「では、御機嫌よう」
「ま――」
強盗(男)が何かを言おうと口を開くのと同時に、私の手の中の心臓はグチャリと潰れた。
口からは夥しいまでの鮮血が吐き出され、何かを掴もうと動いた腕は途中で止まり、ビクンビクンと大きく身体を痙攣させた後、力が抜けた。
手首を振り、強盗(男)の死骸を振り払う。
ガシャンと音を立てながらその死骸は地面に転がり、最早生気の灯らぬ瞳はただただ虚空を見つめるばかり。
「ふう、では、脳を食させてもらいましょうか」
プレデター・ドラゴン・スライムに捕われ、全身の衣服を完全に溶かされた状態でコチラを見ていた強盗(女)はガチガチと顔を真っ青にしていたが、まあ、問題にする事でも無いと判断して足下に転がる死骸の頭部に手を伸ばした。
指が表面を撫でると、それだけで死骸の頭蓋は簡単に斬れていく。零さぬように脳を右手で掴み、それを口に運ぶ。
素顔を隠す為にガスマスクを装備しているので、左手でそれをズラしてやる。
「ひゃっ!! な、な、何なのよその顔はッ!! ば、化物じゃないッ!!」
首だけプレデター・ドラゴン・スライムの外に出ている強盗(女)が私の顔を見てそんな声を上げた。
それはあまりにも無礼極まりないものだが、しかし造物主■■■によって造られた私の身体的特徴については正確に把握しているので、軽く流す。
「私の顔について、何か、不満でもアルノデスカ?」
「ひぃうっ……」
……どうやら流せていないようですが、まあ、気を取り直して。
曝け出された顔、そこにある口に右手に乗せた脳の一部を持って行き、そして食べる、脳を掴む、食べる、脳を掴む、食べる。
数回に分けて繰り返し咀嚼した脳はすぐに無くなり、それと同時に強盗(男)の記憶や経験が全て私のモノとなった。人格などは私という存在の前に抵抗する事もできずに消滅し、ただただ情報だけが私の中に蓄積される。
そこで分かった事だが、どうやら今捉えている強盗(女)以外にも強盗(男)の仲間は居るらしく、もう少し時間が経てば強盗(男)が身に着けていた援軍要請のイヤリングを発信機代わりにしてコチラに向かって来る事が分かった。
まあ、ココも派生とはいえ立派な十二層からなる塔型ダンジョンの一つなのでそれなりに時間がかかるだろう。
プレデター・ドラゴン・スライムに捕獲させた強盗(女)の精神を一度破壊し、屈服させるだけの時間は、まあ、あるか。
「では、躾けでもして待っていようか」
「――え?」
どうやら先ほどの食事が衝撃的過ぎたようで茫然と死骸を虚ろな瞳で見ていた強盗(女)が、私の声に反応して顔を上げた。
既にガスマスクを装備し直しているので強化ガラス越しにだったが、しっかりとその顔が恐怖に歪む様をこの目で見る。
ああ、今回の躾けはどうしてあげようか。
くつくつと笑いながら、私はゆっくりと近づいてく。
終わり。
ゲームのような法則がある世界。
そこで管理人してる主人公が、気紛れで世界を股にかけて損得抜きな、ぬるい商売をする。
現代→異世界ではなく、異世界→現代に似た世界とかそんな感じ。
そんなお話。
ちなみにチートではない。公式設定なので。