Re:Reinforced soldier――逃げた俺と追う彼女――
誤字脱字文法の誤りはきっとあるので注意。
これはノリで書いた作品なので設定の矛盾点とうあるかもしれない。
それに一話完結っぽいものである。
またこれはあくまでも造勇の合間に書いているモノなので、酷い仕上がりかもしれない。
そこら辺は留意して下さいな。
たった二日だけしかなかったけれど、俺にとっては土下座をしプライドも大安売りしたって構わないから永遠であって欲しいと願ってやまなかった時は過ぎ去った。
今また始まりを告げた悪夢のような日々が、俺の精神を汚染していくだろう。
ガッデム! 誰でもいいから俺をココから救い出してくれ、と天に願うが≪神≫は答えてくれる事は決して無い。
そもそも≪神≫なる存在など居ないのだから。
「カナタ先輩! いい加減このドア開けて下さいよォー。私カナタ先輩に会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて、本当にすッッッッッッッッッッッッごく会いたくて、昨日のコモランド平原であったUN殲滅戦の最前線でワイヤーブレードとか振り回して、バッサバッサと活躍してきたんですよ~? 私みたいな可愛い後輩がカナタ先輩に会いたい一心でシャワー浴びるのも我慢して、UNの返り血まみれだけど急いできたんですからー、どや顔で『シャワーでも浴びて行けよ、でたら……な?』とかゴム片手に言って欲しいんですけどォ。
というか本当に言って欲しいんですけどォー。
ねーねーカナタ先輩聞いてるんでしョー? 私としてもいい加減血がこびりつく前にシャワーで流してさっぱりしたいんで、この無駄に頑丈なドア開けて下さいってェーお願いしますよォー。と言うか、何で私の力で壊れないんですかこのドア? 結構本気で叩いてるのに、凹みもしませんよ? ちょっとプライド傷付いちゃうなァー。
あ、これで私先輩に心身共に傷モノにされちゃったァー。だから先輩私をお嫁さんにして下さいね。自慢できる良妻になりますから、後悔はさせませんよォ。それと毎日の手料理とか期待してて下さい。
……ねー、聞いてますかカナタ先輩ー。私これでもよく可愛いって言われて、告白だって一杯されてるんですよォー。
ま、先輩以外眼中に無いので断ってますけど。自分で言うのもなんですけど、結構な優良物件だと思うんですよねェー。私カナタ先輩なら、何されても快感ですしィ。こうやって突き離されてる状況にもちょっとドキドキ。
……でもいい加減何か反応くださいよォ。気持ちいいのと同時に寂しいじゃないですかァー。言っておきますけど、すでにカナタ先輩の匂いと気配で部屋に居るのは分かってるんですよ~? ねーねーねーったらァー。カナタ先輩何か反応下さいよォー。私そろそろ泣いちゃいますよォ」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴンッ! と俺の祖父ながら、身内さえも正確な年齢を知る者が居ない化物爺さんが、孫である俺がプライドを捨てて足にしがみ付きつつ涙を流しながら懇願し、それを三日ばかり繰り返してようやく特別に造ってくれた絶対に壊れない――らしい――特殊超合金製のドアが、激しくノックされている。
というか、まるでガトリング砲の連射でも受けているようなノック音と呼んでいいのか分からない騒音が閉鎖されている自室に響く。その鈍い音が止む事は無く、俺は頭痛に悩まされる。
しかしながら、実はこれが華奢で可憐でうら若き女性が行っているとは、相手を知らなければ想像もできないだろう。いや、知っていても本質を知らない者には想像し難いに違いない。
そもそも、これほど断続的に特殊超合金製のドアを本気で叩き続けるなんて生体強化された俺でも無理だ。推察だが、爺ちゃんに見せてもらったドアのカタログスペック通りだと、生まれた時から岩石のような頑強な肉体を持つスペルトータス星人が生体強化をしていても、拳が先に壊れてしまうに違いない。
それほどまでに、特殊超合金製の強度は凄まじかった。現在の科学力でもあれを壊す事はかなり難しいだろう。
しかし、俺の後輩であると同時に――その理由は定かではないが――俺を執拗に追い回す、オープンに過ぎるストーカー、桐嶺葵は、ハッキリ言って普通じゃない。
アオイは俺と同じくアヴァロン社軍事部医療課による軍使用の生体強化を施された強化兵の一人だが、素体としての性能からして俺とは格が違う。所謂≪天才≫と言える部類の存在だ。
その才能を買われて通常の生体強化に加えて、さらに専門的で個人的な調整が施されたトップエリート中のトップエリート。華奢な身体に見せかけて、その実、身体能力はスーパーマン級である。
そのうえ俺の様に止むに止まれぬ理由があって未開拓惑星開拓機関の戦闘部隊に参加している訳ではない。
アオイは、自らの意思で志願して未開拓惑星で危険と判断された現地生物――現在俺達が開拓しているココ、惑星アスルベルの現地生物は通称UNと呼ばれている――を駆逐する戦闘狂だった。
普段はその子犬のような仕草と小さな体躯と、数少ない女という事から戦闘部隊のマスコット的な存在として男女共に大切にされているのだが、一度戦場にて敵の血を見たら止まらなくなる狂戦士と化す。
であるから、爆撃でもしているかのようなノック音は納得できてしまうのだが、それは置いといて。
(爺ちゃん……俺、爺ちゃんに壊れないドアを造ってくれって依頼して、本当に良かったよ……)
現在の爺ちゃん作のドアに代わる前は、襲撃してきたアオイのこのノックで自室のドアは粉砕されていたものだ。そして阻むものが無くなった後でゆっくりと小悪魔的な笑み――同僚曰く、天使のような笑みらしいが、とりあえず病院送りにしたので治療されて帰ってきたら正常な思考ができるだろう――を浮かべながら、俺と俺の部屋を蹂躙していく、と言うのが毎回のパターンなのであった。
ちなみに俺って所が重要だから。部屋とか別にどうでもよくはないが、些細な事だから。
が、しかし今回はご存じの通り爺ちゃん作のドアは壊れる事なく存在している。正確に言えばドアだけでなくそれを支える壁も変わっていたりするので壁が壊される心配もない。
その事に驚嘆と感謝の念を送りつつ、もっと早く頼むんだったと思わざるを得ないのだが、後悔先に立たずとはこの事か。
有るか無いかも分からんようなプライドなんてさっさと捨てればよかった、と激しく後悔する。
(……って、爺ちゃんって一体何もんだ?)
今までにない余裕ができたからか、俺は今では条件反射となってしまった自分のベッドの上で小さく縮こまり、その上からミノムシの如く布団を被って息を殺すのを緩め、ぼんやりと爺ちゃんの顔を思い出す。
白髪混じりながらもまだ黒い部分を多く残した髪はつんつんとやや尖った鋭さのある髪型で、やや垂れた瞳には若さと老獪さが複雑に混ざり合ったような不思議な輝きがあった。宇宙にその名を轟かせるアヴァロン社の総帥ながら、どこかやんちゃな暴れん坊のような気配を放つ爺さんの優しい微笑み。
いつも連れ添っている婆ちゃんに時折窘められながらも、やる時はやる所が俺は好きだったっけ……。
とまあ、そんな事は置いといて。
そもそも、爺ちゃんって昔から変な部分があったんだ。
歳もそうだが、一番分かりやすいのはドア――特殊超合金製のドアだ。何だよ、壊すのは現在の科学技術でも難しいって話は。どんな超科学で造ったって話なんですよ。
いや、そもそもアヴァロン社の現会長にして創始者って話からそもそも可笑しい。
アヴァロン社ができたのは今から百六十年前だ。昔よりも医療技術が発達して上に異星人と交わる事で種族全体の寿命が延びてはいるが、それでもあの見た目は異常である。
ぐぬぬ、としばし悩んでから、出た結論。
分からん。全く分からん。悩んで記憶を掘り返して曖昧ながらも思い出したが、大昔に聞いた時には微笑んで誤魔化されたような気がする。
疑問の解答が浮かばなくてイライラする。
しかし現状、そう何時までも悩んでいる事はできなかった。
「カナタ先輩ってばァー。聞いてますか、聞こえてますか、心に届いてますかァ? もしココ開けてくれないのなら私と先輩についての噂流しちゃいますよー。私とカナタ先輩が男女の仲だって事ー。
え? ああ、もしかして出てこないのは、自分の口からじゃなくて私の口から広めて欲しいって話なんですかァ?
それならそうと言って下さいよー。じゃあさっそく明日の早朝、寮の食堂で大々的に発表しちゃいますからね、うわー楽しみですねェ。これで私はついにカナタ先輩のお嫁さんですかァ。
やったぁー。嬉しいなぁー。うん、ホント涙が出ちゃいますぅ」
(ちょっと待てェええええええええ!!)
内心で俺は絶叫した。
それはもう、実際に声に出していたならば喉が潰れるに違いないほどの絶叫だった。
目の前が真っ暗になった気分である。
ああ、何故俺はこんな目に会わねばならないのだろうか。
隠れて付いてくるストーカーというのも考えモノでかなり怖い存在ではあるが、しかし人目も憚らないオープンなストーカーという方が俺にとってよっぽど恐ろしい存在に見える。
しかも繰り返すが、アオイは部隊のマスコット的存在である。その為あまり適当に扱う事もできんうえ、下手にハッキリとコチラから手を出すと他の奴らに睨まれるという状況に俺は立たされる。
いや、今の様に完全な受け身であっても既にその他大勢から密かに睨まれているのだから、だったらいっそ手を出せよ、と他人なら言うかもしれない。
だが、それでも手を出した方が俺を恨む人数が飛躍的に増えてしまい、そうなったらと思う恐怖心からこのまま受け身で有り続けなければならないのだ。
本当に一体どういう事なんだよ、と思いながらも泣き寝入りするしか選択肢がそもそも無かった。
なにこの状況。
意味が分からん。誰か責任者を呼んでこい! と言ってはみるものの、しかしながら今、俺はこの幾度面と向かってキッパリ断わっても尚執拗に迫ってくるストーカーをどうにかする手段を思い付く方を優先しなければならない。
だが、幾ら思考を重ねた所でそんな手段があるはずもなく、俺は現状を維持するしかないのか。
そんな考えを抱いていた時だった。
ピリリリ! ピリリリ! と無機質な着信音が響いた。
反射的に音源を向くと、そこには机があり、その上には小型ながらも惑星間の交信が可能な高性能のカード型通信端末があった。端末は通信があった事を、ピカピカと青い光を点滅させることで主張している。
それを見て、誰かが俺に通信を入れたのだと分からない筈が無い。それはもしかしたら、何らかのトラブルが発生して緊急を伝える通信なのかもしれない。
即座に応答する必要がある。
だが、俺はすぐに取る事が出来なかった。
怖い。ただひたすらに怖いのだ、この状況で端末を手に取ると言う事が。
だが、俺も未開拓惑星アスルベル駐留軍中佐の身分にある。
もし取らずに放置して、これが重大な案件を伝える通信だった場合、リアルで俺の首が危ない。スパンと飛びかねない、現実的な意味で。
だから恐る恐る、俺は端末を手に取った。画面を見て見ると、非通知だった。これでちょっとだけ機密事項について、という可能性が低くなった。それに寒気を覚えたが、すぐに意識を切り替える。
震える指で、通信ボタンをクリック。音量は予め最小にしているので、どうかアオイに聞こえない事を祈る。
「もし……もし?」
『…………………………』
声が震えていた自覚がある。しかしそれでも、今の状況で声を出せただけで十分褒められるべき偉業だと思うのだ。
今でもアオイのノック音は響いているし、恐怖でガクガクになっているのだから、これ以上は勘弁して欲しい。
だが、通信先からの声が無い。
完全な沈黙。
その待ち時間の長さがまた精神的な圧迫感を抱かせ、切ってしまおうかと本気で思いだした、その時。
『……テメェ、明日命があると思うなよ』
それだけ言うと、通信はブツリと切れた。
サァー、と自分の血の気が引いていくのを自覚する。
思い返してみれば、俺が居る部屋は何処だ? 未開拓惑星アスルベル駐留軍兵士寮ではないのか? その事実に俺は寒気を感じた。
普段、俺の部屋のドアは問答無用でアオイに叩き壊され、最早ドアとして最低限度の機能も果たす事は無い。それでも俺が中佐という立場もあって、円柱状の寮の上の方に部屋があるから人が通る事はあまりなかったのでさして問題なかった。
壊されたドアの代用品として用意した板を出かける前に枠に嵌めこんでおけば取りあえず大丈夫だったのだ。一応室内には防犯装置も充実している。アオイ相手だと一瞬で壊されるかそもそも効かないものだったけどさ、それでも普通だったら十回は殺せるエグイ防犯装置ばかりなので侵入者は気にする必要はない。
だが、だがだ。
思い返してみればすぐに分かるのだが、アオイがこれほどの長時間大声を上げながらドアを叩き続けた事があっただろうか? いや、無い。絶対に無い。幾ら記憶を掘り返しても、ただの一撃で壊されていた光景しかなかった。
ノック一発ドア粉砕である。
そして繰り返すが寮は円柱状をしている。真中は吹き抜けで、緊急出動時の為に降下用のポールが等間隔で配置されている程度で、声は良く響く。反響してしまう。
その為全ての部屋はそれなりの防音性を確保できるように建設されているが、今のアオイ程の大声が完全に聞こえなくなる事は、無い。緊急事態を知らせる為に大声を出せば、室内にまで届くようにはなっているのだ。
そして先ほどの、謎の脅迫。
それらのピースを嵌めこみ導き出された、この状況はつまり……。
聞かれちゃってんよーーーーーーーーーーーーーー!!!!
死んだ。俺間違い無く殺される。俺はUN討伐時にバックショットされて殺されるんだうあああああああーーーーーー。
必ず訪れるだろう理不尽な未来に俺は深く絶望した。
そして再び鳴り響く端末。俺は反射的に電源を切った。これ以上犯罪予告染みた言葉なんて聞きたくない!
でも取りあえず、このままアオイが大声を夜通し出し続けた結果、睡眠不足になった女性兵士までも敵に回したくなかったので、俺は幽鬼のような足取りでドアに近づいていく。
まさか身を護る盾こそ俺の心臓を止める矛だったとは……。策士策に溺れるとはこの事か……。
数分前まで抱いていた爺ちゃんへの感謝も霧散し、ただただ深い闇だけが俺を待ち受ける。
プルプル恐怖で震える手がドアノブを掴み、やけに重たく感じるそれを捻り、ゆっくりと開けた。外の冷たい冷気が室内に侵入してくる。
そしてまるで子犬のような笑顔で飛び込んでくるアオイ。
ああ、なんてこった。俺の短い人生は終わった。
「やっと開けてくれましたねカナタ先輩ッ! アオイはアオイはとってもとっても嬉しいのですよォー」
トン、と軽い衝撃と共に胸に感じた豊満な二つの丘の感触。俺の胸に押し付けられた事でそれらが形を変えたのまで分かる。ノーブラとか女としてどうだろう。とか思わなくもないが、それ以上考える事はできなかった。
ああ、と俺は生気の抜けた亡霊のような表情でアオイの身体を受け止めて、どうせ明日殺されるなら最後に思い残しが無いくらい抱いてやろうと、初めて俺自身の意思で抱いてやろうと、ドアを閉めた後シャワーも浴びせる事無くアオイをベッドに引き込んだ。
UNの返り血など気にする事無く、アオイの匂いを嗅ぐ。
ああ、最後の最後で俺は踏み越えてはならない一線を越えてしまうのか。
なんて思いはあれど、種を残そうとする本能的な部分が剥き出しとなり、俺とアオイはその日一睡もする事無く交わり続けたのだった。
嫉妬による報復? そんなの知った事か。そんなもんは今の俺には通用せんわい。
終わり。
後輩+生物的上位者+SF+ストーカーが金斬の脳内で化学反応した結果こうなりました。
アオイさんマジストーカー。アオイさんマジ子犬。アオイさんマジバーサーカー。
カナタは生来の不幸体質。カナタある意味リア充。カナタ死亡フラグ乱立。
そんな妄想です。
今後主人公は(同僚の殺意と無邪気な狂犬から)逃げて幸せな人生を掴み取れるのか!?
星の海で繰り広げられたSF恋愛はやがて異世界に逃亡する事となり物語は加速する。
カナタの時空を飛び越える逃亡活劇にこうご期待!!
とかな感じでしょうか?
ちなみに金斬が空想する作品は全て■■■■■■■■■■■。