首を締めて。
病弱 人肌恋しい 砂糖投げる
消毒用のアルコール臭い部屋。白いカーテンに白い布団。白が部屋の中を埋め尽くしている。
正直、入院生活は退屈なものだった。毎日毎日この部屋の中で変わらない景色を眺めるだけ。
元々、私は病弱で入退院を繰り返していた。だからか、あまり学校に行けなかった。男性の知り合いは少なかったし、あまり話も出来なかった。
中二の4月頃、体調がかなりよくなり数週間だけ学校に行っていた。クラス替えをして、知った顔知らない顔が居た。またちょっとの間だけの関係だ。ふと隣の男子に眼を向けた。
その時、一目惚れをした。知的な目、色っぽい声、柔らかそうな唇、女性のように細い指。一瞬にして心奪われた。
好きだ。貴方に愛して欲しい。お願い。貴方なら良いから、貴方が良いから。
悶々としながら、春が過ぎ。また私は入院を余儀なくされた。また退屈な日々に戻る。
しかし、変わった。彼が毎日の様に来てくれるようになった。理由は知らない。けど、来てくれる。私の閉鎖された空間にわざわざだ。
今日も私の所に来てくれた。ベッドの隣に座り、何を話すわけではなく読書をする。貴方がいるから、私は幸せ。何も喋らない。何も語らない。けど私は暖かい。貴方がいるだけで暖かい。
彼が持ってきた薄い本を閉める。それが彼が帰る合図。
「じゃあね」
優しい笑顔を向けてくれる。その顔を見ただけで一瞬鼓動が上がる。
「また……来てね」
恐る恐る口に出す。いつも来てくれているが、惰性で来てるのではないか、その不安がいつもある。
「なるべく」
なるべく。来るか来ないか分からない言葉。けど、期待する。貴方がこの部屋の扉を叩くことを。少しはにかみながら入ってくるのを。
ベットから彼が離れて扉へと向かう。彼の広い肩をずっと見つめる。名残惜しさの欠片もなくさっと出る。そんな簡単に出ていかないで。
あぁ、私は貴方の事が好き。貴方がどう思ってるかは知らない。だけど、愛して欲しい。好きだから愛して欲しい。
もし、私の事を愛せないなら、無理なら貴方の手で私の首を絞めて。死ぬ間際に貴方の顔を見れたら満足するし。貴方も、私の顔と感触忘れられない。けど、それは最悪の場合。それは望まない。だからお願い、甘い甘い言葉をかけて。ねぇ、お願いだから。次こそは愛してるって言って。
扉がゆっくりゆっくりと閉まっていく。彼が来るまで、この部屋に来るまで、私は愛をつのらせていく。愛して欲しい。次こそは。