体育終わり
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうご。
バタバタと窓を叩く音がする。
ベタなようだが、バケツをひっくり返したような雨が降り注いでいる。
今日は朝から降ったり止んだりを繰り返していて、今この時間の雨が一番激しい。
ついに梅雨入りでもしたんだろうか。今後の暑さも未知なこの時期に……今でさえムシムシして嫌な気分だ。
「……」
外の暗さが嘘のように明るい教室には、今現在男子しかいない。
私が今いるのは廊下で、教室内が見えない程度の距離。
何やら盛り上がっている男子の声が聞こえてくる。
「……」
つい先ほどまでは、私は女子更衣室に居たのだけど。
……今日は外の予定だったが、雨のため体育館での体育の授業が終わり、着替えをして次の授業の為に教室に戻ってきたわけだ。
時間の余裕はある。少し長めの休み時間だから。
「……」
着替えにさほど時間はかからない。
体育ズボンはスカートの下に履いたままだし、着替えるのは上だけだ。汗をかいたから制汗シートで汗を拭いたりもする時間はあるが、さすがに休み時間いっぱい使うことはない。
去年だったらもっと早く帰ってきていたが、今年は話し相手が居るので、その相手待ちで時間をつぶしつつ、来たのだけど。
「……」
しかしまだ終わっていないようで。
先程、お手洗いに行くついでに横目で見た限り、だが。
また終わっていないのかふざけて遊んでいるだけなのかは知らないが……さっさとしてほしいものだ。こちらも暇ではない。
「……」
小腹が空いたと言うか、甘いものが食べたいので。
持ってきたキャンディを食べたい。頭が糖分を欲している。何かの間違いで、塩飴の何かが入っていない限りは、鞄の中に、数種類の果物の味が入っているキャンディがある。
母が何かと気にして塩飴を持たそうとするが、アレは嫌いなのだ。普通に美味しくない。
「まだ終わってないのかな?」
「だぶん、」
「終わったらいいに来るよね」
「そうだよね」
それだと言うのに、未だに着替えの終わらない男子がいる……かもしれないせいで、教室に入ることもままならない。
生憎、まだクラスの中心的な、どこにでもいるような女子は戻ってきていないので、どうにもできない。さっさと終わらせてくれないだろうか。
「……」
ほら、もうぞろぞろと教室に戻り始めている。
あの廊下の奥から来た集団は、このクラスの女子だろう。
あぁでも、あれらが来れば教室に入れるか。
「あれ、何してるの?」
「――!」
視線をやっていた廊下の反対側、私の後ろの方から。
耳慣れた声が聞こえた。
昨日も一昨日も、その前の日も。
中学からずっと聞いている声が聞こえた。
「やほー」
「やほー」
ひらひらと手を振りながら、片手に何かを抱えて歩いてくる、あの子がいた。
さすがに暑いのか、長い髪を頭の高い位置で結び、ゆらゆらと揺れている。
さらさらと流れるその髪は、真黒で艶やかで、誰もが羨ましがるだろう。
「……移動だったの?」
「うん。数学だったから」
「あぁ、なるほど」
昨年から、数学は理解度ごとに教室が分かれたりしている。
出来のいい生徒と悪い生徒を分けているという事だ。
私は数学嫌いなので、もちろん悪い方。数時が嫌いなので。
「――はなに待ち?」
「男子の着替え待ち」
「あーねw」
にやにやと楽しそうに笑う。
悪い笑顔も可愛いと思うんだけど。
「ん、でももう終わったんじゃない?」
「そうかも」
話に……夢中になっていたら、いつの間にか戻ってきた他の女子たちが教室の中に入り始めていた。まだ数名終わっていないみたいな声が聞こえるが、まぁ気のせいだろう。
「飴食べる?」
「たべる~」
塩飴だったらあげようかな。
なんて。
お題:キャンディ・スカート・教室




