バレンタインデー
2月に入って私は悩んでいた。
バレンタインデーが来るけど、チョコを西山さんに渡すかどうか・・・。
奥さんがいるのにバレンタインもらうのって迷惑だったりするのかな。
でもチョコもらって嫌な男の人っていなんじゃないか。とかずっと考えていた。
奥さんいる人を好きになってしまったから誰にも相談できない。
高校の時からの親友には今までなんでも話せてきたけど、不倫とか曲がったことが大嫌いな親友は今の私を知ってしまうとかなり怒るだろう。友達やめる!なんて言われるかもしれない。そう考えると親友にも相談できないでいた。
今年のバレンタインデーは土曜日。しかも土曜日は出勤だし、勤務表見ると西山さんも出勤だった。
土曜日は休みの人多いし、バレンタインあげるならいいタイミングだった。
でもちゃんとしたバレンタインあげるとお返しにも気を使わせちゃうしと思って私は近くのスーパーに行って
バレンタイン仕様ではないけど、少しお高めのチョコを西山さん用に買った。
西山さんだけにあげると変に思われそうだから、一応他の人用に同じチョコを3つ買った。
バレンタインデーの土曜日がすごく楽しみだった。けど受け取ってもらった時の反応を見るのが怖くて不安も多かった。そわそわした気持ちで土曜日の朝を迎えた。
いつもよりメイクも丁寧にして、いつも適当にしている髪も違和感ないくらい綺麗に整えた。
朝ごはん食べて、買ったチョコを大事にバッグに入れて車に乗り込んだ。
職場に着くまでの間、どうゆう感じでチョコを渡そうかな。と考えながら緊張していた。
いつもより早く職場についてそわそわしながら西山さんが出勤してくるのを待った。
西山さんと会うのですら緊張するのに、今日はチョコも渡すので緊張がかなり大きくなっていた。
「おはようございます。」と今日も消えそうな声で挨拶してきた。西山さんだった。
あー!やっぱりこの声も好きー!!!と心の中で叫んだ。
「あ、おはようございます。」と興奮が伝わらないように興奮を殺して私は落ち着いて挨拶を返した。
どうゆうタイミングでチョコを渡すか悩んだけど、挨拶の流れでチョコ渡すのがいいかなと思って西山さんがデスクについたタイミングでチョコを持って行った。
「あっ、あの。」
「ん」
「ハッピーバレンタイン!!」
うわぁぁぁぁあ・・・しくった・・・緊張し過ぎた結果、なんちゅうテンションで・・・しかもそんな仲良くないし、目上の人なのに私は空回ったテンションでチョコを差し出してしまった。恥ずかしすぎる・・・。
「えっ・・・」
いやいや、そうだよね・・・仲良くない人からそんなテンションでチョコもらっても困惑するよね・・・。
「あっ、今日バレンタインなので!でもそんな、そこら辺に売ってるチョコなのであまり気にしないでください!!」
気にしないでって何よ・・・私は一体何を言ってるんだ・・・馬鹿すぎる・・・。
「いや、ありがとう!お昼にいただきます。しかもこのチョコってめちゃくちゃ美味しいよね。高いのにもらっていいの?」
ひぇぇぇ!!!!めっちゃ喜んでくれてる!!!めっっちゃ嬉しい!!!
「あ、美味しいですよね、そのチョコ!ぜひ食べてください!!」
「本当ありがとう。ホワイトデー何がいいかな・・・」
ホワイトデー!!!!いいんです!!いらない!!欲しいけどいらない!!!気使わないで!!!
くれるわけないし、くれなくて全然いいんだけど、もしくれるならハンカチなら毎日、一生使うし!でもそんな図々しいこと絶対に言えない。
「お返しなんていいですよ!ただのおやつだと思ってください、大丈夫なので。」と答えた。
「まぁ、考えとくよ、ありがとう」と返答が来て、私は嬉しくてスキップして自分のデスクに戻りたかったけどグッと堪えてそそくさ歩いてデスクに戻った。マスクで隠れた口元はニヤニヤしていた。
怪しまれないように出勤していた事務員ではない介護士の男性2人にもチョコを渡した。
「今日バレンタインなのでチョコどうぞ〜」とわざと西山さんに聞こえるような声の大きさでチョコを渡した。
「え〜ありがとう、でも本命のチョコしか受け取らない主義なんだけどな〜」と冗談言いながらみんなでゲラゲラ笑った。チラッと西山さんの方を見ると西山さんはこっちのことを気にもしない感じで熱心にパソコンと向き合って仕事をしていた。
昼休憩になって西山さんがまた今日も愛妻弁当を食べ出した。何が素敵って、食べた後のお弁当を給湯室でちゃんと洗っているところも推しポイントなのだ。
愛妻弁当を食べ終わった後、私があげたチョコを食べているのがわかった。
「うわぁぁぁぁああぁぁあ、チョコ食べてくれてる・・・そりゃそうだよね、食べるよね普通に・・・」そう思いながら嬉しいような恥ずかしい気持ちになった。
今日はバレンタインのおかげでいつもより会話のやり取りが多かったし、チョコを喜んでくれたのが嬉しかったから一日仕事頑張れた。
終業時間間近に西山さんが私のデスクに向かって歩いてくるのがわかった。近づくたびに心臓の動きが早くなって今にも心臓発作起こして倒れてしまいそうだった。
「あのさ。」西山さんが私の隣に立って声をかけてきた。
「あ、はい。」私は冷静さを装って返事をした。
「チョコ、食べたよ。ありがとう。本当に美味しかった。」
そんな改まって言わなくてもいいのにぃぃぃ!!!嬉しすぎるぅぅぅ。
「あ、それは良かったです!もう今日は帰られるんですか?」
「うん、そうだね、今日はすぐに帰ろうかな。月井さんもすぐ帰る?」
「はい、今日はもう仕事きりよく終わってるのですぐに帰ります!」
「そっか、土曜日だしね。お疲れ様」
「お疲れ様でした」ちょうど会話が終わった瞬間に終業時間が来たので、私は真っ赤の顔をすぐにでも隠したくて急いで帰る準備をして事務所を出て帰った。
帰る車の中で今日あった西山さんとのやり取りを車の中で永遠と場面が繰り返されてずっと恥ずかしいような嬉しいような感じだった。
「やっぱり、西山さんめちゃくちゃ良いっ・・・最初は絶対にこんなに話すことなんてないと思っていたけど話してみると優しいし、本当に良い人だ。そりゃ奥さんいて当たり前だよね。」
寂しさも抱きながら家に帰り着いた。




