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私、不倫を始めます。  作者: 月井
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どんな些細なことでも関わりたくて。

 西山さんへドキッとして以来、私は「簡単に好きになるわけない。」と自分に言い聞かせていた。


 だって、西山さんは見た目もイケメンってわけじゃないし、普通のおじさん。

 しかも既婚者。少し前に事務長と家族の話をしていたのが聞こえた。大学生の娘さんもいるみたいだし、

 何より毎日奥さんが作ったお弁当をお昼に食べているから。

 既婚者を好きになってもいいことなんてないし、自分が傷つくだけ。

 そんなの経験しなくてもわかるし、ドラマでも見たことあるからわかる。


 西山さんとは距離をとろう。距離をとるもなにも、近づいてもないんだけど・・・。


 でも毎日同じ事務所で仕事してたらわかる。西山さんは想像通りの仕事バリバリできる人。

 仕事中はかなりシビアで人にも自分にも厳しい人だ。

 同じケアマネジャーをしている後輩に対しては間違いや、曲がったことをすれば結構厳しく注意している。

 聞いてるこっちが気まずくなってしまうくらい。

 だけど、入居者さんにはすごく優しい。話し方も柔らかくて目尻がくしゃくしゃになるくらいニコニコしてる。他のケアマネジャーと違ってすごく親身に対応している。

 そのギャップを見るたびに私は西山さんへの思いが大きくなっていた。


 そして私はどうにかして西山さんと関わりたくなっていた。

 なんでもいい。西山さん宛に来たFAXを渡しだけでも・・・電話繋ぐだけでも・・・。

 FAXを渡す時も電話繋ぐ時も優しく「ありがとう。」って言ってもらえる。

 その優しい声を聞きたくて、電話が鳴れば誰よりも先に電話をとったし、

 FAXが届いた音がすれば一番に見に行った。

 優しい西山さんの声が聞きたくて・・・。

 でも頑張って誰よりも先に電話をとっても、FAXを受け取ってもなかなか西山さんに当たらなかった。

 私が何かしらで電話取れなくて他の職員がとった時に限って西山さんへの電話だったりしていた。

 私って本当タイミング悪い星に生まれたんだろうな。とか思っていた。

 他の職員が西山さんと関わっていると「羨ましい・・・私にもそうやって優しく話してくれるかな・・・」とか率直に思ってしまっていた。

 好きになるわけにはいかないのに・・・


 職場は土日関係なく勤務がある。一ヶ月に決められた数の公休を自分で好きにシフトを決めれる。

 西山さんは結構、土日出勤することが多かった。

 ほかのケアマネジャーは平日出勤の土日を必ず休みにするからだ。

 自分も家庭があるから土日は休みたいだろうけど、1人でもケアマネジャーが事務所にいないと何かあったときに入居者さんが困るだろう。というやっぱり西山さんの優しさだ。

 土日は他の職員も休みが多いし、施設長も土日は休みなので土日出勤の時は結構自由に仕事している。おやつ食べたりとかしながら。

 ある日、平日に用事があって仕事を休んだのでその振り替えで日曜日に出勤することになった。

「日曜日は電話も鳴らないし、仕事も今は落ち着いてるから暇だろうなぁ・・・。入居者さんの面会があるくらいかな。」とか思いながら朝車を走らせて職場に向かっていた。

 職場について車を駐車場に停めて、更衣室で着替えとか済ませて事務所に向かう。

 事務所に入ると誰もいなかった。始業時間ギリギリに着いたから「今日は事務所、私だけかぁ。仕事やることないしサボっててもバレんな。おやつ食べながら適当に一日過ごそう。」と思ったその時・・・


「おはようございます。」と今にも消えそうな声で誰かが入ってきた。振り向くと西山さんだった!

 私は心の中で「ひぇぇぇぇぇぇぇえぇ」って叫んだ。

 そして何の感情も生まれてないかのように「おはようございます。」と挨拶を返した。


「待って・・・待って・・・今日、西山さんと2人!?やばいって・・・どうしよう・・・。」と心がかなり乱れていた。

 仕事に対してかなり厳しい西山さん。今日は仕事やることないから適当に過ごそうって思ってたのに・・・

 適当に過ごして西山さんに「仕事全くて出来んやつとか、ダメなやつ。」とか絶対に思われたくなかった。

 始業時間になって西山さんはいつも通り忙しそうに仕事を始めた。

 私も仕事やることない。って思われないように一生懸命に仕事忙しい感を出し続けた。

 スマホなんて一秒も触らず、パソコンと睨めっこしていた。いかにも仕事してますよ。感を出すために。

 でも本当にやる仕事なんてなくって・・・。かなりしんどかった。笑

 こんなことになるくらいなら仕事進めずに今日のために仕事とっておくべきだった・・・と後悔した。

 仕事暇な時って時間経つのが本当に遅くて、昼休憩の時間まで本当に長かった。

 12時になって「ふぅ・・・」とため息をつくと事務所の奥から「お疲れさんだね。」と声が聞こえた。

 西山さんだった。心の中でまた「ひぇぇぇぇぇえぇぇ」ってなったけど、何の感情もないように「あ、ため息ついてすみません」って言うと

「いやいや、日曜日も出勤して偉いね」と言われた。

「ほめられたぁぁぁぁぁあぁ・・・・西山さんに褒められた・・・今日出勤してよかった・・・」と心の中で叫んだ。

「こないだの水曜日お休みもらったので今日振り替えなんです。西山さんもいつも日曜日出勤してるんですか?」と聞くと

「そうだねー、日曜日って人少ないし、施設長もいないし、電話もかかってこないから平日より仕事が捗るんだよね。だから土日に出勤することも多いよ。あとケアマネジャーが誰もいない日はあまりないほうがいいだろうからね。」

「ひえぇぇぇぇぇ・・・こんなちゃんとした会話初めて過ぎて緊張するぅぅぅ」とまたまた心の中で叫んでしまった。

「あっ、そうなんですね、西山さんもお疲れさまです。」と言い会話が終わって、西山さんは今日も奥さんが作ったであろうお弁当を食べ始めた。


 こんなにちゃんと会話したの初めてだし、やっぱりめちゃくちゃ優しい声で会話してくれるのが本当に萌える・・・。厳しい時とのギャップがありすぎてもうまじで心持っていかれる・・・。

 でも好きになるわけにはいかない・・・私もちゃんと好きになっていい人と恋して恋愛して幸せになりたい・・。

 西山さんとは関われば関わるほど、惹かれてその反動で傷つく・・・。わかっていたけれど、関わりたくなってしまう。


 私もお昼ご飯を済ませて、少し甘いものが食べたくなったので、通勤途中に寄ったコンビニで買ったチョコレートを食べることにした。

「チョコでも食べて落ち着こう・・・」と思いながら口似入れるとこっちを見ている西山さんに気づいた。

 食べてるところを見られるなんてすごく恥ずかしくて、自分でも顔が真っ赤になったのがわかるくらい顔が熱くなった。

 咄嗟に「あ、チョコ食べますか?」と聞くと

「えっ、いいの?俺、甘いもの好きなんだよね。」と言う。

 そんな見た目に見えないのに甘いものが好きなんてそこもまたギャップあり過ぎて萌える・・・。

「じゃぁ、2つどうぞ。」と言い、西山さんのデスクにチョコを置いた。

「ありがとう!」と嬉しそうにチョコを食べていた。それ見て私はまた胸が苦しくなった。


 甘いもの好きなんだ・・・西山さんいつもコーヒーとかブラックばっか飲んでるし、見た目的に甘いもの食べそうにないのに・・・。これから毎日甘いものを所持しておこう!と心に決めた。


 昼休憩が終わると、西山さんはまた仕事モードに入った。

 私もやることないけど、仕事をなんとか見つけ出しながら進まない時計を何度も見上げていた。

 昼休憩依頼、西山さんと関わることがなかった。

 でも今日は西山さんが甘いものが好きということが知れたし、今日もまた西山さんの優しい声が聞けた。

 それだけで私は十分だった。


 終業時間を過ぎても西山さんは仕事が忙しそうだったので私は先に帰る準備を始めた。

「お先に失礼します。」と言うと

「あ、お疲れさまでした。」と私の顔を見てニコッと笑った。


 もうその一瞬で私は完全に恋に落ちてしまった。

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