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カナブン

作者: めん坊
掲載日:2025/10/15


 右!!


 カナブンは脚を上げる


 左!!


 カナブンは翅を広げる


 右!!


 カナブンの兵士たち


 左!!


 カナブンの軍隊だ


 「俺は違う」


 「こいつらとは違う」


 「何もかも違う」


 右!!


 カナブンはみんな同じ顔


 左!!


 同じ仮面を被っている


 右!!


 右側は真っ黒


 左!!


 左側は真っ白


 右!!


 中央に赤黄色の∞


 左!!


 気味の悪い仮面だ


 「こんな演習、クソくらえだ」


 「俺は特別なんだ」


 「俺はお前らを見捨てる」


 バサバサ、バサバサ


 カナブンは飛び立った


 バサバサ、バサバサ


 カーキ色の空へ飛び立った


 バサバサ、バサバサ


 カナブンは羽ばたいている


 バサバサ、バサバサ


 真下にはカナブンの軍隊


 バサバサ、バサバサ


 カナブンは雲の上へ


 バサバサ、バサバサ


 雲の祭壇へ


 バサバサ、バサバサ


 ……


 雲の祭壇は石造りだ


 祭壇は雲の上に佇んでいる


 カナブンは階段を歩く


 雲の祭壇を歩く


 頂上は見晴らしがいい


 まるで神のような気分だ


 カナブンは祈り始めた


 「神龍様、」


 「お恵み下さい」


 ゴォォォォォ……


 突然の轟音


 鷹のような爪


 碧青色の鱗


 真っ白な眼


 「どうした?」


 「神龍様にお願いがあるんです」


 「何だ?」


 「私の仮面を取って欲しいのです」


 「なぜだ?」


 「皆と同じ仮面は、みっともないからです」


 「仮面をとるのはたやすい」


 「そうですか」


 「しかし、仮面をとれば、お前には罪を償ってもらうことになる」


 「罪?」


 「あぁ、仮面をとるということは、それだけの重罪なのだ」


 「かまいません」


 「覚悟はあるか?」


 「はい」


 「わかった、仮面をとろう」


 ゴォォォォォォォォォォ……


 突然の轟音


 ポトッ、ポトッ、ポトッ、


 落ちる雫


 ザァザァザァザァ……


 どしゃ降りだ


 カナブンは顔に手をやった


 すると、仮面は溶けていった


 雨によって溶けていった


 恵みの雨だ


 「ありがとうございます、神龍様」


 ブゥーーーーーーーーンッッッ


 無数の羽音


 地上からの襲来


 カナブンの軍隊だ


 カナブンの軍隊??


 そんなことはどうでもいい


 私は凍りついた


 軍隊の顔に凍りついた


 ブーーーーーーーーンッッッ


 仮面は溶けていた


 鬼の形相であった


 そして、笑っていた


 この時を待ちわびていたかのように


 ムシャムシャムシャムシャーーーーーーーー


 カナブンは互いの腹を引き裂いた


 脚を引きちぎった


 顔を食い散らす


 まさに、血祭り


 雲の上は血の海になった


 どしゃ降りの雨が赤い血を流した


 「悔いはないか?」


 「悔いはありません」


 「お前は、この世でたった一匹のカナブンだ」


 「はい」


 「本当に悔いはないか?」


 「無いです」


 「本当にそうか?お前の顔を見てみろ」


 私は自分の眼に手をやった


 なんと涙を流していた


 どしゃ降りの雨でも分かるくらいの


 大粒の涙だ


 「神龍様、私は泣いているのですか?」


 「あぁ、泣いているぞ」


 「でも、悔いはないんです」


 「そうか」


 「なぜでしょうか?」


 「お前は罪を償いたいからだ」


 「罪?」


 「あぁ、仲間殺しの罪だ」


 「そんな」


 「お前の魂が求めているぞ」


 「何をですか?」


 「天の使いをだ」


 バサバサ、バサバサ、、、、


 コンドルのような羽


 赤ちゃんのような皮膚


 ガラスのような眼


 ニュルニュル、ニュルニュル


 天の使いは掴んだ


 私の両手を掴んだ


 そして、天空に上がっていった


 「神龍様、私はどうなるのでしょうか?」


 「これがお前の望みだ」


 天の使いは私の顔に触れた


 優しく触れた


 そして、私のまぶたを閉じた


 カナブンは眠った


 安らかに眠った


 鬼の顔は笑っていた


 天の使いはラッパを手にとった


 祝福のラッパだ


 贖罪の祝福だ


 パッパラッパッパーーー、


 パッパパラッパーー、


 パッパラッパッパーーー、、、


 土砂降りはやんだ


 夜が明けた


 朝の太陽は美しい


 私は無数の光の粒になった


 そして、カーキ色の空に飛び散った


 まるで蛍火だ



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